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研究計画
 
背景

 地方分権が進む中、縦割り行政の弊害がまちづくり分野においても顕著に現れており、将来の市民生活に今以上の不安を残さないため、行政組織間の境界を横断する政策が求められている。市民生活行動(労働、居住、移動、子育て・介護、教育、買物、余暇や観光など)は短期や長期的な時間スケールにおいて意思決定され、個人や世帯のニーズを反映し、多様な文脈、限られた時間的・金銭的制約の影響を受け、ソーシャルネットワークとの関係のなかで、いろいろな場所で行われる。このため、市民生活行動間には密接な関連性があり、ある行動の変化が他の行動に影響し、個々の行動を切り分けて個別に政策を講じることは望ましくない。これは、市民生活を支援・誘導するのに、縦割りではなく、部門横断型政策の必要性を裏づける。例えば、低炭素型まちづくり、子育て・介護、都市観光促進、都心活性化などは部門横断型政策を必要としている。

 日本では、計画立案者が計画に用いる目的で人間の行動調査を行ったのは1963年に富山県射水地域が最初である。1967年に広島都市圏で本格的なパーソントリップ(PT)調査が実施されて以来、PT調査は全国各都市において実施するようになった。関連調査として、生活時間調査があり、1923年に大阪市が最初の調査を実施した。全国規模での生活時間調査として、NHKの国民生活時間調査(1960年〜、5年おきに実施)と総務省の社会生活基本調査(1976年〜、5年おきに実施)がある。1980年代に入ると、交通分野では交通行動調査と生活時間調査を融合した活動日誌調査は欧米を中心に研究され、交通が活動の派生需要であるという考え方に基づくアクティビティ・ベイスド・アプローチが提案された。この手法は欧米では今日においても研究・応用が盛んになされているが、日本では近年、研究が停滞ぎみであり、応用がほとんどなされていない。一方、都市計画法に定められている調査のひとつに都市計画基礎調査があり、職業分類別就業人口の規模、世帯数及び住宅戸数、住宅事情、都市施設の利用状況といった情報をマクロレベルで5年おきに調べているが、市民生活の本当の実態を捉えているとは言えない。

 このような背景の中で、研究代表者は1990年代から個人を対象とする交通行動の分析、2000年に入ってから、集団意思決定を取り入れた世帯交通行動分析、家族の視点からみた持続可能な都市生活の理論的研究及び政策分析、個人間相互作用メカニズムを取り入れた都市生活行動の調査・解析方法の研究、女性の社会進出を支援する都市政策、中山間地域での高齢者対策、子育て支援策などを対象に、交通に力点を置いた市民生活行動の調査・解析に関する方法や政策に関する研究を重ねてきている。研究活動の一部は、基盤研究(C)、若手研究(B)、日本学術振興会・二国間共同研究事業などの小規模な研究助成を受け、交通行動を中心に国内外の学会や雑誌において研究成果を多数公表してきた。しかし、今まで、部門横断型まちづくり政策の重要性が認識されているにも関わらず、交通行動学、生活科学、家政学、環境行動学、健康行動学、人間生活環境学、観光行動学など、市民生活を断片的に捉える学問はあるが、それを一体的に捉える学問がない。こうした背景の下、「市民生活行動学」を構築し、部門横断型まちづくり政策のための意思決定方法論の開発という着想に至った。市民生活行動学は、人々が都市生活を営む上で必要な活動のすべてを扱おうとするのではなく、その主な部分を体系的に扱おうとする学際性の高い学問である。つまり、この学問は縦割り行政のみで取り扱うべき市民生活の側面があることを認める。

研究目的

 市民生活に密接に関係するまちづくりについて、部門横断型政策の必要性が叫ばれているが、市民生活行動を一体的に捉える学問はない。本研究では、「市民生活行動学」を構築し、部門横断型まちづくり政策のための意思決定方法論を開発することを研究目的とする。限られた予算を効率的に使うため、部門横断型予算で市民生活行動調査の実施が望ましい。まず、市民生活行動の種々な側面をパッケージ化した調査手法を提案し、パッケージ化した調査の標準化を図る。次に、政策の連続性・一貫性を保ちつつ、政策の効果・不効果のキャンセルアウトが分かるように、まちづくり政策が市民生活に与える影響を総合的に評価するシステムを開発する。最後に、「市民生活行動学」の知見を活かした部門横断型まちづくり政策を実現するための提言を試みる。

学術的な特色と研究の意義

 「市民生活行動学」の構築は本研究の学術的な特色であり、独創的な点でもある。実際、既存の市民生活行動関連領域の知見を活かしつつ、社会心理学、行動経済学と実験経済学、複雑系科学、高度な計量経済学やデータフュージョン法などを駆使し、多面性を有する市民生活行動の調査・解析・評価手法を新たに開発する。予想される結果としては、市民生活行動の主な側面を網羅する調査パッケージの標準化、パッケージ化調査の実施方法、新たな市民生活影響評価システムの開発などが挙げられる。「市民生活行動学」の確立により、市民生活を支援・誘導するまちづくり政策の連続性や一貫性が保証され、政策の効果・不効果のキャンセルアウト(例:ETC割引政策に経済活性化効果があるが、環境の悪化と交通事故の増加という不効果も招く)がより明確になり、結果的に、予算の無駄遣いがなくなると考えられる。必要に応じて複数年度の予算化の正当性を裏付ける根拠を提供することも期待される。これは本研究を実施する意義である。

研究内容
  1. 生活行動間の関連度合い
  2. 市民生活行動の主な側面をカバーする比較的に規模の大きいアンケート調査を人口規模の異なる都市において実施し、生活行動間の関連度合いを時間、空間、文脈や意思決定者などに応じて明らかにし、以下の調査手法の提案に合理的な根拠を提供する。

  3. 市民生活行動調査手法の開発
  4. 都市計画の制度や作成方法といった歴史的な経緯に配慮し、既存調査データの活用を前提に、市民の自主的参加意識を生かした新たな調査手法を開発する。
    自主参加型調査手法の提案
    まちづくりに必要な市民の情報を、市民が自分の都合に合わせて自発的に継続して申告する「自主参加型調査手法」を提案する。新調査手法の実用化を図るため、調査の全プロセスを通じて、自主的参加メカニズムを解明する。
    調査のパッケージ化と標準化
    限られた予算を効率的に使うため、部門横断型予算で市民生活行動調査の実施が望ましい。そのため、市民生活の各場面をパッケージ化し、パッケージごとに実施する調査方法を提案し、パッケージの標準化方法を明らかにする。
    パッケージ化調査と既存調査の融合
    データフュージョン法などに基づき、パッケージ化調査と既存調査の両方を用いて市民生活の全容(母集団特性)を把握する調査結果の結合方法を提案する。

  5. 統合型生活行動モデルの開発
  6. 生活行動間の(時間的(短期・中期・長期)、空間的、文脈依存的、意思決定者間の)関連性を許容できる統合型生活行動モデルを開発する。

  7. 市民生活影響評価システムの開発
  8. まちづくりの具体的な内容と関連づけ、生活者・利用者の視点を徹底的に追求する市民生活影響評価システムを開発する。

  9. 部門横断型まちづくり政策を実現するための提言
  10. 低炭素型まちづくり、交通弱者モビリティ支援、都市観光促進、都心活性化、都市ガバナンスなどを対象に、市民の意識と行動を反映し、その政策に対する合意形成を図り、市民生活からみた政策の優先順位づけ、部門間の連携方法や複数年度の予算化などを検討し、部門横断型政策を実現するための提言を行う。

研究フレームワークとスケジュール

 自主申告型調査と既存調査との融合を軸として、市民生活行動調査のパッケージ化・標準化、統合型生活行動モデルの開発、市民生活影響総合評価システムの開発を具体的なアウトプットとして、4年間をかけ、「市民生活行動学」を構築し、横断型まちづくりのための新たな政策意思決定方法論の基盤づくりを行う。
H22年度には、市民生活行動調査の実態を全国調査により明らかにすると同時に、自主申告型調査システムの開発を行う。H23年度以降、市民生活行動研究会を発足し、幅広い分野の研究者・実務者と情報交換するプラットフォームを整備する。生活行動実態、政策立案や評価など様々な視点から市民生活行動の調査内容を特定し、本格的な調査を実施する。まちづくりの具体的な事例を取り入れながら、「市民生活行動学」の知見を活かした横断型まちづくりの方法を提示すると同時に、提案した政策意思決定方法論の公共的受容性を明らかにする。

 本研究は以下の研究フローに沿って、共同研究提案者の張(交通行動学)を研究代表者として、生活行動関連分野の研究者(平田(生活経営学)、小林(保健学)、藤原(都市・交通計画)、谷口(交通社会心理学)、久保田(建築学)、大森(都市工学)、塚井(土木計画学)、金子(環境経済学)、桑野(交通計画学))と共同研究を実施する。本研究を遂行する上で、国際的にも通用する方法論を開発するため、2000年から研究代表者と共同研究を実施しているオランダのHarry Timmermans教授が率いるEindhoven University of Technologyの学際的な研究グループ(都市計画学、交通行動学、建築学、マーケッティングサイエンス、家政学、心理学、コンピューターサイエンスなど多数の研究者が在籍中)を海外共同研究者として参加する。
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