光は物質と相互作用をすることで様々な変化を引き起こします。最もよく知られている変化は光の位相変化であり、屈折率nの物質中では真空中に比べて位相速度がn分の1倍になります[図1]。しかし、物質による光の変化は位相変化のみではありません。例えば、物質から出てくる光が物質に入射する光の周波数と異なる周波数を含むような変化もあります。このように単純な位相変化以外の変化を非線形変化といいます[図2]。
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光が精巧なレーザー光であれば、物質による位相変化や非線形変化を量子力学的に考えることができます。量子力学的に光を扱うときは、特に、光の非線形変化によって性質が大きく変化します。この一例として、Parametric down conversion(PDC)があります[図3]。PDCは周波数ωで物質に入射した光子が周波数ω1の光子と周波数ω2の光子に分かれる現象です。このとき、ω=ω1+ω2が必ず成り立っているので、量子力学的な相関のある光子対を作成することができます。これ以外にも様々な非線形変化があり、非線形変化を利用して、量子ゲート(量子コンピュータの素子)を作る方法も考えられています。しかしながら、光と物質の相互作用を考えるとき、物質は多数の原子から構成されているので、物質中でどのように光が変化しているかはブラックボックスになっていて分かりません。そこで、この研究ではブラックボックスで何が起こっているかを解き明かすため、光と単一原子の相互作用を考えて、単一原子によってどのように非線形変化が起こっているかを解析しています。