THz光エレクトロニクス
図1:各周波数領域における応用例
テラヘルツ帯(おおよそ0.1 THz〜100 THz)の電磁波は電波と光波の境界領域,即ちエレクトロニクスとフォトニクスの境界にあります(図1).
このため比較的最近まで技術・応用ともに進んでいませんでしたが,近年THz電磁波の発生・検出技術が急速に進展してきました.THz波の特徴としては,可視・赤外光が散乱されて不透明な紙,発砲樹脂,衣類なども透過すると同時にmm程度までは容易に集光できることなどが挙げられます.またTHz帯に特有の応答を示す物質や物理現象があり,これらを活かした応用の検討が進められていす.例えば物質・材料の分析・評価があげられます.特に,分子の立体異性を区別できることから製薬・創薬における分析手法として,さらに透過性も活かして,空港等における非合法薬物類(麻薬など)検査への適用が期待されています.一方,透過性と同時にmm程度の空間分解能が得られる特性を活かし,銃刀類等の所持検査,食品中の異物検査や,火災等の視界不良現場用カメラなどへの応用が期待されています.また,THz波は超高周波電波でもあり,超ブロードバンド無線通信キャリアとしても期待されています.
図2:観測される信号とその振幅スペクトル
本研究室では,フェムト秒パルスレーザを用いたTHz波の発生・検出をベースにした研究を行なっています.フェムト秒パルス光を光伝導アンテナ素子や非線形結晶に照射することでパルス状THz波が発生でき,アンテナ素子や非線形結晶を用いてサンプリング的に時間波形が取得できます(図2左).また時間波形をフーリエ変換すると図2右のようなスペクトルが得られます.
この様に広い周波数範囲の電磁波が得られること,冷却を一切必要としない室温動作などが,この方法の特長です.本研究室では光伝導アンテナの開発を行っています.