金属を用いる光技術はプラズモニクスと呼ばれ,主として金属に特有の性質である負の誘電率に起因する表面プラズモンを用いる技術です.プラズモンは微視的に言えば,光の電磁場(主に電場)と金属中の電子の運動が一体となった振動状態です.
表面プラズモンの応用例は多種多様ですが,応用が進んでいるのは屈折率等を測定するセンサーで,物質(特に液体)のわずかな屈折率変化を検出することができます.表面プラズモン状態では金属表面の極近傍にのみ光が存在するため,波長以下の極薄試料でも測定ができます.表面プラズモン状態は界面に閉じ込められた状態であるため,外部との結合には工夫が必要です.例えば金属に周期性(グレーティングやホールアレイ)を導入することで,回折効果によって結合させることが可能であると同時に,金属表面近傍での光増強を用いた光デバイスへの応用も可能となります.
金属が微粒子になった場合,局在表面プラズモン共鳴と呼ばれる現象が生じ,@特定の波長の光を強く散乱する,Aその際,金属の近傍に一旦電界が蓄積されるため,強い電界増強が生じる,といった現象を伴います.@はヨーロッパの教会などで中世から用いられているステンドグラスの色の原因であり,プラズモニックカラーとも呼ばれます.Aでは蓄積される領域の大きさが波長に制限されないことから,波長限界(回折限界)を超える光の閉じ込めが可能となり,超解像顕微鏡などにも利用されています.
一方,上記のような金属構造を含む,波長以下のサイズの人工構造体を用いることで,自然界の物質が持たないような性質をもつ人工物質(メタマテリアル)を実現することができます.特に構造体を誘電体表面に配置した「メタ表面」は作製も格段に容易なことから,様々な新規光部品・デバイスへの応用が期待されています.
当研究室では,これらの現象を用いた光デバイスを開発するとともに,その物理を明確にするための様々な研究を行っています.