1.教材「仙巌園(せんがんえん)」 |
3.教材の活用例 |
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・歴史の授業で幕末の薩摩藩について扱う際の資料に使うことができる。 ・仙巌園内の建造物・植物などから、当時の薩摩藩の繁栄の様子や、薩摩藩と外国(琉球や中国)との交易について知ることができる。 |
2.仙巌園ってどんなところ? |
4.私の見たこと,感じたこと |
島津家の別邸である非常に大きな庭園。集成館事業で作られたものや鹿児島の名物・特産物などを見ることができる。また、薩摩藩が海洋国家(藩)として中国や琉球と交易した証(例:中国から輸入した竹《江南竹林》や琉球国王から贈られた建物など)も見ることができる。簡単に言えば、鹿児島の「いいもの」がコンパクトに集められているところ。 |
鹿児島の「いいもの」がコンパクトに集められているように感じた。鹿児島についてあまり知らない人でも、鹿児島の大まかな特色を知ることができるのが仙巌園なのではないだろうか、と個人的に思った。地理歴史的に「鹿児島」を知るにも、観光するにもなかなか楽しい場所であった。 |
1.教材「克灰袋(こくはいぶくろ)」 |
3.教材の活用例 |
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・鹿児島にしかないゴミ袋「克灰袋」から、鹿児島県の地理的特色(灰が降ること)について考察し、灰が市民生活に及ぼす影響について考える。 (灰が市民生活に及ぼす影響の例:灰が降る時には洗濯物が干せない、灰が降っている時に窓を開けると部屋の中に灰が入ってしまう……etc) ・袋の名前を「降灰袋」から「克灰袋」に変更した理由を考えることで、灰に対する住民の気持ちを想像し、灰と戦う住民の姿勢を共感的に理解する。 |
2.克灰袋ってなに? |
4.私の見たこと,感じたこと |
ゴミ袋の一種。鹿児島だけにある。降り積もった灰を集め、収拾するための袋。昔は「降灰袋」と称されていたが、その受け身的なイメージを払拭し、積極的に灰に対処する姿勢を示すべく、「克灰袋」と改名された。役所などが市民に無料配布している。一般ゴミとは別の、克灰袋専用の収集場所がある。 |
これぞ鹿児島の地理的特色を端的に表す教材だと思う。道の隅にたくさん積み上げられた克灰袋を見て、「こんなに灰が降るのか!」と驚いた。ゴミから市民生活やその土地の地域的特色が伺えるのは興味深いと感じた。 |
1.教材「集成館事業」 |
3.教材の活用例 |
(複製品) |
・歴史の授業で幕末の薩摩藩について取り上げる時の資料として使うことができる。(薩摩藩の強さの秘密を集成館事業という視点から考えることができる。) ・写真のような大砲を作るだけの技術力が幕末の薩摩藩にあったことを理解することで、当時の薩摩藩の技術力が他の藩より高かったことを理解できる。 ・薩摩藩は集成館事業によって西洋の技術を取り入れ、全国に先駆けて「殖産興業」ともいうべき事業を行った。これを明治時代に政府が行った「殖産興業」政策やビスマルク時代のドイツの国力増強政策である「鉄血政策」と比較することで、国力増強のための一般的法則・戦術について考えることができる。 |
2.集成館事業ってなに? |
4.私の見たこと,感じたこと |
薩摩藩主:島津斉彬が幕末に始めた近代工業化事業。西洋の技術を取り入れることで発展していこうという試み。 いわば、明治時代の殖産興業の先取りバージョンと考えることができる。色々な分野(製鉄・大砲・造船・紡績・ガラス・焼き物・写真・電信・ガス灯・発電など)のモノづくりの工場がたくさん作られた。この集成館事業の遺跡を含む、九州・山口の近代化産業遺産群が世界遺産候補に挙げられているらしい。 |
写真は仙巌園入口に程近い場所に置かれていた大砲の複製品である。こんなに立派な大砲を作る技術を、幕末の薩摩藩が持っていたことに驚いた。この大砲は、戦いにおいて工業力・技術力がいかに大切かを教えてくれるよい資料だと思う。 |
1.教材「薩摩切子」 |
3.教材の活用例 |
↑制作現場 |
伝統工業の伝承 〜1度は消えた薩摩切子〜 ・近年の学習指導要領改訂で重視されている分野である、「日本の伝統」について学ぶ際の教材となりうる。 ・明治時代に一度は伝統が途絶えてしまった薩摩切子。それを復活させるために尽力した地元の人々たちの動きについて学ぶことで、伝統工芸を次世代に引き継いでいこうとする人々の想いを知り、伝統工芸の尊い価値を知ることができる。伝統工芸について共感的に学ぶことで、伝統を受け継いでいこうとする態度を形成する助けになると考えられる。 |
2.薩摩切子ってなに? |
4.私の見たこと,感じたこと |
江戸時代末期に鹿児島で作られ始めたカットグラスのこと。薩摩藩主・島津斉彬の集成館事業のひとつとして始まった。当時、国内外で高い評価を受けた薩摩切子は、篤姫が江戸に嫁ぐ際の嫁入り道具にも選ばれた。しかし、薩英戦争の際に工場が焼けてしまったことで衰退し、明治時代には作られなくなってしまった。その後、1985年に島津家と鹿児島県により復元事業が始まり、現在に至る。薩摩切子は鹿児島県伝統工芸品の指定を受けている。 |
薩摩切子はとても綺麗なグラスだった。江戸時代末期には既に作られていたことが驚きである。明治時代に一度途切れた伝統が昭和になって復活したということは、この薩摩切子が愛されていたことをよく表していると思う。価値ある伝統は一度途切れても、また蘇る、ということに感銘を覚えた。 |
1.教材「異人館」 |
3.教材の活用例 |
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プラスの部分にばかり目を向けられがちである「世界遺産」の負の部分に目を向けることで、批判的思考力を養い、物事を多面的な視点から捉える力を伸ばす授業を展開できると考えられる。 〜主な発問例〜 ・世界遺産登録にはどんなイメージを持っている? (生徒からはプラスのイメージが多く出ると予想できる。) ・自分の町にある自然遺産や文化遺産が世界遺産の候補に挙がったら、どんな気持ちになるだろう? (生徒からは「嬉しい」「応援したい」など、肯定的な意見が多く出ると予想できる。) ・左の写真を見てみよう。この異人館が世界遺産に登録されることを、周辺に住む住民は反対している。それはなぜだろう? (「世界遺産登録は地元住民皆が応援するもの」という生徒の常識を覆し、多面的に事象を捉えさせる。) ・世界遺産登録のためには様々な下準備が必要である。それはどのようなことだろう? (例えば富士山の場合では、ゴミを減らすことなどの環境整備が求められた。この異人館の場合は、周辺に駐車場を整備することなどが求められている。) ・世界遺産登録のために自分が住み慣れた場所から引っ越さなければならないとしたら、どう思うだろう? (生徒からは「悲しい」「引っ越したくない」「世界遺産登録のためなら仕方がない」など、様々な意見が出ると予想できる。) ・世界遺産登録は、地元の人たちにとってどんな意味があるだろう? (多くの人にとって世界遺産登録は賞賛すべきことだと考えられている。しかし、世界遺産登録は一部の地元住民にとっては不利益となる場合もあることを生徒は理解できる。このように、様々な人の立場から「世界遺産登録」というテーマを考えることで、多面的に物事を考える力を生徒は身に付けることができると考えられる。) |
2.異人館ってどんなところ? |
4.私の見たこと,感じたこと |
昔、イギリス人技師が住んでいた宿舎。但し、建物は日本の技術者が作った西洋風のものだと考えられている(建物の設計がメートルでなく、寸尺で測られているため)。この異人館を含めた九州・山口の近代化産業遺産群を世界遺産に登録する動きがあるが、異人館周辺地域に住む住民はそれに反対している。なぜなら、この異人館を世界遺産に登録するためには色々な課題があるからだ。まず、登録のためには異人館周辺を整備する必要がある。例えば、観光客などのために駐車場を作ることなどが挙げられる。そのためには周辺住民は立ち退きを求められる。この立ち退きや補償金に関する交渉が、住民と自治体の間で難航しており、それが住民の「異人館 世界遺産登録反対!!」に繋がっていると考えられる。 |
「世界遺産登録反対!!」という、インパクトの強い横断幕にまず驚いた。なぜなら、「世界遺産登録は賞賛すべきこと」という概念が私の頭の中に刷り込まれていたからだ。近年、富士山が世界遺産に登録されたが、それはとても喜ばしいものとして報道された。また、日本の色々な場所で、人々は自分たちの地域の誇りである自然遺産や文化遺産を世界遺産にしようと努力している。そのようにプラスの部分にばかりスポットライトが当てられがちである世界遺産登録だが、それに疑問を投げかけるのがこの横断幕であると思う。 |
1.教材「九州電力 大霧地熱発電所」 |
3.教材の活用例 |
↑上の写真の赤丸部分拡大 |
・エネルギー問題について考える際の資料として使える。 地熱発電は、近年注目される自然の力を利用した再生可能エネルギーの1つである。また、地熱発電では、高温の地下水から取り出した蒸気を利用するため、燃料を必要としない。即ち、温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーである。また、高温の地下水とその蒸気は、直接発電所の地下から取り出せるものである。これは、海外からの輸入に頼ることなく、純国産の電力を生み出すことができることを意味している。更に、地熱発電は半永久的に安定して利用でき、天候や昼夜を問わず発電できるというメリットを持つ。一方、火力発電などに比べて大容量の発電所ができにくいデメリットも持つ。 ・発電所の安全のための工夫を知ることができる。 |
2.九州電力 大霧地熱発電所ってどんなところ? |
4.私の見たこと,感じたこと |
九州電力の持つ、5つの地熱発電所のうちの1つ。鹿児島県霧島市と湧水町の境界上に存在する。3万キロワットの発電能力を持つ。地熱発電は、現在注目される再生可能な自然エネルギーを使った発電方法である。利用される自然エネルギーは、地下に眠る高温の地下水、いわば温泉である。この高温の地下水から取り出した蒸気でタービン(発電機)を回すことで発電を行う。蒸気は1時間当たり約290トン使用される。発電に使った後(蒸気を取り出した後)の地下水は再び地下に戻されるため、循環型で持続可能なエネルギーであるといえるだろう。 写真は蒸気タービンを備えた発電機。1分間に3600回転し、電気を作っている。 安全対策もしっかりしており、発電機の周りには様々な計器があった。下の写真の鏡は、死角となっているバルブの開閉を中央制御室からも見ることができるようにするためのものらしい。 |
今までにも「地熱発電」という言葉はよく耳にしていたが、その具体的な発電方法は全く知らなかった。地熱発電は高温の地下水から出る蒸気を利用することなど、様々なことを今回の見学で初めて知った。個人的にはこの地熱発電は、温泉大国日本において将来に希望が持てそうなエネルギーなのではないかと感じた。また、地熱発電は輸入に頼ることのない、純国産のエネルギーを生み出すことができるということも心に響いた。発電所の中は少し硫黄の臭いがした。これは、地下から取り出した蒸気に混じっていたものだろう。まさに温泉を感じた。高温の地下水、即ち温泉は、人や動物をくつろがせるだけでなく、発電までできてしまうなんて凄いと感銘を受けた。 |
1.教材「町の境界線」 |
3.教材の活用例 |
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1つ上の項目には書いていないデメリットが、地熱発電所にはもう1つ存在する。 それは、景観保護の問題である。地熱発電所の候補地になる場所は、自然の景観に恵まれた場所が多い。そのため、地熱発電所は周囲の景観を損ねることなく、周囲の景観に溶け込むような外装・配色などに気を遣っている。 ・公民分野の学習の教材に使うことができる。自然に溶け込むような色合いのパイプは、新しい人権と考えられている環境権や景観の保護といった概念について考える際の素材となりうる。 ・パイプ(蒸気輸送管)が2色で塗り分けられている理由を考えることで、地熱発電所と地域住民(自治体)との関わりについて考察することができる。 ・発電所が建設されるに際して、発電所側と地域住民(自治体)側はいくつかの約束を定めている(安全への配慮や景観保護など)。このパイプの色合いは、それらの約束を視覚的に理解できる教材となる。 |
2.町の境界線ってなに? |
4.私の見たこと,感じたこと |
写真は、九州電力 大霧地熱発電所の気水分離機(セパレーター)と蒸気タービン・発電機を結ぶパイプ(蒸気輸送管)。このパイプは霧島市と湧水町の境界をまたがって伸びている。そしてこのパイプはそれが面する住所(町)ごとに違う色で塗られている。すなわち、霧島市に属するパイプと湧水町に属するパイプで色が変えられているのである。その色は霧島市と湧水町それぞれが「景観に配慮した色」として定めたものである。霧島市と湧水町が指定した色が別の色であったため、パイプはそれが位置する住所によって違う色で塗られることとなった。結果的に、パイプの色の境界から町の境界線を知ることができる。 |
パイプの色が2色あることは、案内してくれた九州電力の職員さんに教わるまで気付かなかった。大霧地熱発電所は霧島市と湧水町という2つの自治体にまたがって建てられているため、2つの自治体と個別に様々な取り決めとしているであろうことが、この2色のパイプから伺える。素人目にはパイプの色は単色の方がコスト削減できそうに思えるが、コストよりもそれぞれの市町の地域住民(自治体)の意向を尊重し、2色にしたのだろうか? このパイプの塗り分けは、発電所側の地域住民への気遣いをよく表していると思う。 |
1.教材「川、退避壕」(桜島) |
3.教材の活用例 |
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近年、日本全体で防災教育に対する関心が高まっていると考えられる。写真の教材では、活火山である桜島の噴火活動に対する防災・減災の備えについて学ぶことができる。上の写真の川は、土石流の流れをコントロールすることで減災の働きをする。また、下の写真の退避壕は島内のあらゆる場所で確認することができた。また、小学生は噴火に備え、登下校時にヘルメットを着用していた。それらからは、桜島島民の防災意識の高さをうかがい知ることができる。こうした防災の備えについて知ることは、生徒は自分の住む町の防災について考える上でのヒントになると考えられる。 〜主な発問例〜 ・左の2つの写真は防災のための設備を写したものである。これらの設備は災害時、どのように役立つのだろう? ・私達の町で起こりうる災害はどんな災害だろう? 私達の町はどんな災害対策をしているだろう? 私達はどのように災害に備えるべきだろう? |
2.川、退避豪ってなに? |
4.私の見たこと,感じたこと |
上の写真の何も流れていない川は、桜島が噴火した際に土石流を流し、その流れをある程度コントロールするためのものである。この川を土石流が流れていくことで、民家などの被害を軽減することができる。上流には砂防ダムもある。下の写真は、噴火の際の火山噴出物から身を守るための退避壕である。この退避壕は桜島島内に32基あり、ほかにも退避舎、避難港などの避難施設がある。工事現場のほとりにも簡易的な退避壕が設置されているなど、防災のための備えが徹底されている。また、桜島島内の小学生は噴火への備えとして登下校時にはヘルメットを着用している。 |
設備を作ることで土石流の流れをある程度コントロールできるということに、まず驚いた。桜島には防災・減災のための工夫がたくさんあり、防災教育の上でも参考になりそうな点が多くあると感じた。ちょうど、ヘルメットを着用して下校している小学生も目撃した。恐らく、小学校時代からしっかりと防災教育が行われているのだろうなと思った。 |
1.教材「黒神埋没鳥居、屋根のあるお墓」(桜島) |
3.教材の活用例 |
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どちらの写真も、桜島の火山活動に関連するものである。上の写真では、大正噴火の際の大噴火の威力を知ることができ、火山の大噴火がいかに巨大なエネルギーを持った恐ろしいものであるのかを実感できる。下の写真では、降灰に対する人々の生活の工夫を感じ取ることができる。鹿児島市出身者(南)によると、お墓に灰が積もると掃除が非常に大変だという。 ・火山(桜島)が大噴火した際の威力について知ることは、防災教育の一端となる。 ・身近な生活上の工夫(屋根のあるお墓)から、桜島の地理的特徴(降灰)について知ることができる。 |
2.黒神埋没鳥居、屋根のあるお墓ってなに? |
4.私の見たこと,感じたこと |
上の写真は、桜島の大正噴火の際に埋没した鳥居。大正噴火によって、この鳥居は約2メートル埋まってしまった。大正噴火の凄まじさを視覚的に体感できる場所である。下の写真は、黒神鳥居付近にあった普通のお墓である。ご先祖様が灰を被ることがないよう、多くのお墓に屋根が備え付けられている。 |
黒神埋没鳥居は近くで見るととてもインパクトがあった。地上に出ている部分は小学生の身長くらいの高さしかなかったため、鳥居の天辺を見下ろす貴重な体験ができた。屋根のあるお墓は、桜島の地理的特徴が人々の日常生活の工夫として表れている、非常に興味深い例だと感じた。 |
1.教材「桜島の植生」 |
3.教材の活用例 |
↑赤丸と青丸の部分で生えている植物が大きく違う |
自然地理分野の学習で使用することができる。写真で植生の違いを提示し、その原因を土壌に求めることで、土壌の形成と植生の関係について視覚的に理解できると考えられる。 〜主な発問例〜 ・この写真の青丸部分には松が生えている。この土壌はいつ形成されたものだろうか? |
2.桜島の植生ってどんなもの? |
4.私の見たこと,感じたこと |
桜島は昔から大規模な噴火を何度か繰り返している。土地は、噴火の際に流れ出た溶岩から形成されている部分も多い。溶岩の上に植物が生えるためには、非常に長い期間がかかる。土壌がいつの噴火の時に流れ出た溶岩であるかによって、その上に生えている植物の種類が大きく変わってくる。よって植物を見れば、その土壌がいつの時代の噴火によって形成されたものかを知ることができる。自然地理学的に非常に興味深い現象である。 |
植物から土壌の形成時期が分かるのは面白いと感じた。大正噴火の際に溶岩が流れ出た場所は、溶岩がむき出しになっている場所も多かったが、噴火が昔へ遡れば遡るほど、緑は豊かになっていくように感じられた。狭い範囲の中に色々な植生があって、とても興味深いと感じた。 |
おまけ
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