デジタルペンを用いたトリアージタグシステム・災害診療記録システム

災害時には限られたリソースを有効に投入しないとならないため被災地や被災者情報の共有が重要な要素の一つとなる。ドクターヘリやドクターカーで行う病院前救護活動や災害地におけるDMAT活動などを経験するとわかることであるが、活動中に自分たちの活動内容を即座に情報送信することは困難である。情報は鮮度や共有範囲の大きさが異なるため、過不足なく必要な情報を共有する必要がある。

情報を共有する手段は多岐に渡るが、有効に使えるシステムを構築する上で重要な点として、「少しのレクチャーで使用できる」「電力供給がなくなっても使用できる」「素早く入力できる」「だれでも使うことができる」などがあげられる。これらの課題を解決するのに、現状ではデジタルペンを利用することが有効であると考えられた。

デジタルペンは、特殊印刷された専用用紙に専用のボールペンで記載することで、書いた内容がそのままデジタルデータとして保存可能なデバイスである。ただ絵として保存するだけではなく、指定した領域内に記載された文字に対する文字認識、ペンが持っている時間を付与、接続されたアプリケーションを起動、データにGPS情報を付与するなど、現行運用のままかなりの情報が共有可能となる。


デジタルペンの仕組み

デジタルペンを利用する研究を始める基となった課題がある。福島県立医科大学が東日本大震災後、福島県内の避難所住民に対して巡回診療を行い受診者の記録を神で管理していたが、紙管理であるがゆえ、過去の診療結果の共有や検索・確認について時間を要し同じ内容を受診者に確認するなど、巡回診療での情報共有の課題に直面していた。そこで過去および日々の巡回診療の紙記録を電子化し、受診者の名前や生年月日等の情報で紐付けしたうえで、クラウドサーバーに格納しタブレットで検索表示を行うシステムを構築した。このシステムでは巡回診療で記載された記録を別にスキャンする手間が課題となり、デジタルペンを利用する研究につながっていった。


巡回診療時の様子(左)、タブレット端末での参照画面(右)

参考資料:経団連 復興と成長に向けたICTの利活用のあり方(復旧ICTを活用した被災地支援:医療分野)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/075/sanko.pdf

トリアージタグは、患者の重症度に基づいて治療の優先度を決定し選別を行うための識別票である。被災地圏内の患者情報は被災地外でも共有されるべき情報であるが、トリアージタグは患者とともに移動するため、域外患者搬送の効率化などを考えると、全体を俯瞰した情報の共有が必須である。デジタルペンを用いることで、通常の運用のまま患者数、重症度の割合、位置情報、搬送状況などの情報を確認することが可能となる。

産業医科大学公衆衛生学教室と共同で、標準化された災害診療記録のデジタルペン対応システムを構築した。このシステムでは日本版大規模災害時サーベイランスシステム(J-SPEED)の集計用に作成したレポートフォームに結果を出力可能なシステムに対応している。


J-SPEEDレポーティングフォーム

また、災害で通信が遮断された際にはインターネットを利用した情報の共有が困難になるため、2013年、広島大学病院ではこのような状況に対応するために衛星通信ユニットを搭載した車両を全国の病院に先駆けて導入した。


衛星通信ユニットを搭載した通信車

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