WebMOを用いた量子化学計算のホームページ

 広島大学 理学部化学科 文責 阿部 穣里

 

高校生むけに大学説明会で実施している、WebMOを用いた無料でできる量子化学計算の参考資料です。

本格的な研究ではなく、初めて試してみようといった内容です。

 

〇オンライン大学説明会での動画

コンピューターで化学する 基礎編

コンピューターで化学する 応用編

上記 WebMOの簡単な使い方 (PDF)

動画解説を見ながら、インターネットに接続して自分でもやってもらえるとよいです。

 

さらに色々な分子について無料で量子化学計算する場合 

(化学基礎講義資料からの抜粋)

量子化学計算をする場合、どんな分子を計算するか(分子モデリング)が決まったら、次に基底関数と計算方法(理論)を指定する必要がありますので、それについて述べます。

 

①基底関数

H2+分子の講義では、LCAO近似のもと、2つの水素の原子軌道(1s軌道)の足し合わせ(重ね合わせ)で、分子の波動関数を記述しました。

例えばO2分子の場合、1sだけではなく、2s2p軌道も足し合わせの材料に必要になります。このように足し合わせの材料に使う関数を一般に基底関数と言います。たくさんの基底関数を用意すれば、より任意性のある分子軌道が記述可能ですが、計算時間がかかりますので、用途に応じて基底関数はいろいろなものが開発されています。今回は実験の時間が限られているため、小さな基底関数で計算することをお勧めします。小さな基底関数の例として、STO-3G,3-21G基底などが挙げられます。重元素(周期表の下の方の元素)には、LANL2DやSDDといった有効殻ポテンシャルを含む基底関数を使うとよいです。

 

②計算方法

講義では3粒子以上が入る相互作用は近似的にしか解けないことも述べました。『近似的に解く』のレベルにもいろいろあり、かなりよい精度のものから、粗い近似のものがあります。よい精度のものは極めて計算時間がかかるので、今回の実験では、粗い近似のものを選ぶのがよいと思います。おすすめの方法はハートリー・フォック(HF)法や密度汎関数(DFT)法が挙げられます。DFT法は研究でもよく用いられます。DFT法にもいろいろな流派があり、それを指定する必要がありますが、よく使われる方法としてB3LYP汎関数をお勧めしておきます。大きな分子の計算をしたいときは、さらに精度が低いが計算時間が短い、拡張ヒュッケル法やPM6などの半経験的手法(semi-empirical法)を使う必要があります。 

③計算プログラム

WebMOのデモ版では、GaussianGAMESSといった代表的な計算プログラムが無料で利用可能です。ただし計算時間が1分までなので大きな分子の計算はできません。ユーザー登録などをすればもう少し自由度の高い計算ができます。

https://www.webmo.net/demoserver/cgi-bin/webmo/login.cgi

WebMO公式の説明動画のリンク (英語)

 

ChemComputeではフリーソフトGAMESSの計算がウェブから行えます。計算時間も4時間20分まで無料で使えます。

https://chemcompute.org/gamess/submit.html

詳しい説明は、

http://pc-chem-basics.blog.jp/archives/2730186.html

を参照してください。pc-chem-basicsブログでは、他にも面白い理論化学計算に関する説明があるので、ぜひ試してみてください。

 

〇混成軌道と分子軌道について

高校の教科書では混成軌道が紹介されていることが多いかと思いますが、

上記の方法で求められる分子軌道は、混成軌道とは異なる考え方で成立したものです。

それぞれの長所短所はあるのですが、全電子の波動関数や電子密度を記述する上では

両者に優劣がないということを、以下の山崎勝義先生のご著書(モノグラフ)で確認できます。

31. 原子軌道・分子軌道・混成軌道の関係

山崎先生のモノグラフのホームページ (ほかにも様々な解説が読めます!)