●第五講 現代のモラル
モラルについて考えてみましょう。今日の、少なくとも先進国のモラルは、
功利主義(もっとも世俗化されて歪められてはいますが)的な性格をしている
ように見えます。
その典型は「人に迷惑をかけなければ、何をしてもいい」といった形を取ります。
ただこの命題には弱点があります。さあそれは何でしょう。
モラルの定義はかなりやっかい
ですが、ここでは別のモラルの考え方を紹介します。「黄金律」golden ruleです。
「自分にしてほしくないことを、他人にするな」 東洋バージョン
(「自分にしてほしいことを、他人にせよ」 西洋バージョン)
要するに、落ち度のない人に対して、その人が嫌がるようなことをするな、
という意味です。
この黄金律で、すべて事足りるような気がします。
こんなモラルなら幼稚園ですでに習ってきましたね。
ただし、私がして欲しくないことと、あたながして欲しくないことと
は異なっているかもしれません。モラルがやっかいになってくるのは、こうした
点と無縁ではありません。
◆もう一つ大事なことに触れておきます。ネットワーク環境は、自然環境とは異なり、
目に見えない人為的な努力によって支えられているという点です。
「インフラストラクチャー」
この意味で、ネットワーク環境は「ある」のではなく「維持されている」
のです。
この「維持する」機能には、ネットワークのモラルを守ることが含まれます。