* 過去の主な研究

現在までに行ってきた研究の最も重要なキーワードとして特異摂動 システムが挙げられます. 特異摂動システムとは, モデル化されない 寄生要素が存在する動的システムの総称を指します. 例えば, 現在盛んに 研究されているフレキシブルマニピュレータ等は, 特異摂動システムの範疇に 入ります. 一般的に, 特異摂動システムには2つのシステムモードが存在します. フレキシブルマニピュレータを例にとれば, 剛体部分を表すシステムと柔軟部分 を表すシステムの2つのシステムから構成されます. このような性質を有する 特異摂動システムは, 通常のシステムと比較して, システムの次元が増加する等の 欠点が指摘されています. 従来, 特異摂動システムに対して, 典型的(古典的)な解析 手法に, システムを時間的に2つに分割して解析を行う特異摂動法が使用されていま した. しかし, 特異摂動法によって得られたコントローラは近似コントローラである ので, その特性は, 場合によって所望の特性を満足しないことが指摘されています. さらに, システムを2つのモードに分割して解析を行うので, 設計手順が増加するなど の問題が生じます. そこで, 特異摂動法に基づいて, システムを2つのモードに分割 せず, 近年の計算機性能を最大限に利用した直接的なフルオーダコントローラの 設計を提唱してきました. 過去に指導した学生による修士論文 (Power Point)

* 現在, 気になる研究


* ロバスト分散制御理論による大規模通信ネットワーク遅延補償 近年の情報通信技術の発展に伴い, メカトロニクス技術と通信技術の融合とも いえる双方向遠隔操作システムやマスタースレーブシステムの実用的研究が 精力的に進められています. 特に, 教育, 医療, 福祉, 防災など多くの分野での 活用を目的として, 力覚や触覚情報を視覚・聴覚情報と併用することにより 高臨場感通信システムを構築する試みがなされています. 一般に, 通信システムである ネットワークには, 電気的・物理的要因や通信の品質に依存した遅延が発生する ことが良く知られています. 非常に最近では, 双方向特性をもつ力覚や触覚情報通信に 対し, 伝達遅延が通信性能の劣化をもたらすことだけではなく, システム全体の安定性を破壊してしまう恐れがあること等が報告されています. さらに, バーチャルユニバーシティ計画にみられるような 大規模情報通信システムでは, システムの規模に比例して伝達遅延が 巨大化・複雑化しており, 非常に深刻な問題として取り上げられています. これまで, 単一システムである双方向遠隔操作システムに対して, 通信系の 伝達遅延にロバストな制御系設計の研究報告はなされていますが, 大規模な 双方向遠隔操作システムにおいて, 伝達遅延にロバストな制御系設計の研究は 実用上大変重要であるにも関わらず殆んどなされていません. 力覚・触覚情報等が 導入されるこれからのマルチメディアに対応するために, 大規模双方向遠隔操作 システムの伝達遅延補償は必須の課題です. そこで, 大規模通信 ネットワークの遅延に関し, ロバスト分散制御理論による遅延補償問題を考えられます. 現在のマルチメディアのコンテンツは文字, 音, 画像ですが, これに力覚・触覚が 加わる日は近いと考えられます. 高度な臨場感を遠隔地間で実現する力覚情報通信は, 国内外を問わずあらゆる分野で切望されている技術です. 大規模かつ遠隔地間 での力覚情報通信の遅延問題が克服され実用化されれば, 教育現場のみならず, 製造業, 土木建設業などの工業分野, および福祉, 医療, 防災など幅広い応用が 期待されることでしょう.
* ディスクリプタシステム 通常, 工学・経済システムはその特徴が微分方程式で記述されます. しかし, 実際には 代数方程式を拘束条件としてもつ場合が存在することが良く知られています. この ようなシステムは一般にディスクリプタシステムと呼ばれています. ディスクリプタ システムの特徴は, より広範な動的特性を表現できることです. ディスクリプタ システムに対して制御問題を考えるとき, 問題となるのが, コントローラを 得るために解く必要のあるリカッチ方程式の解の存在条件です. リカッチ方程式は 非線形行列方程式の一種であり, 解析的に解を求めることは特殊な場合を除いて 不可能です. 通常の動的システムに対して解の存在条件については, 現在の ところ部分的に得られています. しかし, ディスクリプタシステムに対する リカッチ方程式の解の存在条件についての研究は現在までにほとんどなされて いません. ディスクリプタシステムに対するリカッチ方程式の解の存在条件に ついて, 具体的に導出できれば, リカッチ方程式を解く場合に, 必要な解を 得るための情報, 及びアルゴリズムを与えてくれることが期待されます.

* 現在の主な研究テーマ


* ロバスト制御
* H2/H∞制御
* 適応ロバスト制御
* 特異摂動システムのロバスト安定性・安定化
* マルチモデルシステムのロバスト安定性・安定化
* 動的ゲーム理論
* インクルーディングシステムの安定性・安定化
* スケジューリング問題
* 計算機ネットワークの応用(特にTCP/IPを用いた大規模分散ネットワーク通信)
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