尿路結石症
1. 疫学的事項
年間有病率は、第二次世界大戦後に増加し続け、現在は1年間に10万人当たり約100人。生涯罹患率は100人当たり4人、男:女は3:1、などの特徴がある。 

2. 結石形成の原因
Ca、尿酸、シスチンなどの結石形成物質の排泄増加、Caイオンと結合して結石形成するマトリックス成分の存在、酸性ムコ多糖などの結晶凝集阻害物質の関与が基本的な事項としてあげられている。
これに、結石を形成しやすい状態が加わって、尿路結石ができる。
 
結石形成物質(オステオポンチン、カルプロテクチン)産生の機序
遠位尿細管で蓚酸・燐酸Ca濃度上昇ママクロファージ遊走・貪食マ 結石形成物質産生マ 蓚酸・燐酸Caと結合マ 結石の核形成

結石形成を生じやすい状態
 1. 尿流停滞
 2. 尿路感染
 3. 代謝異常
  a. 過Ca尿
   1) 副甲状腺機能亢進症
   2) 腎尿細管性アチドーシス
   3) 長期臥床
   4) 腫瘍の化学療法、放射線療法
  b. 過燐酸尿
   1) 食事
   2) 副甲状腺機能亢進症
  c. 過尿酸尿
   1) プリン代謝最終産物
    過度の摂取
    尿中溶解度が酸性で低い。
  d. シスチン尿症
   300 mg/day以上で結石形成(正常人:40-80mg/day)
3. 診断
臨床症状は、軽度から高度まで種々の程度の患側の側腹部痛および肉眼的または顕微鏡的血尿(注1)が特徴である。結石の確定診断は排石された結石を確認することである。

(注1)尿路結石患者の約90 %に血尿あり(肉眼的あるいは顕微鏡的血尿)
 診断の具体的な手順は、 ^既往歴・家族歴の聴取、_ 尿検査、`X線学的検査、a腹部超音波断層検査、b血液生化学的検査、を行って、結石がどこに存在し、腎臓にどの様な影響を与えているかを求め、さらになぜ起こってきたかを可能な限り確認する。
 ^ 既往歴・家族歴
  a. 先天的(遺伝的)要因の有無
  b. 尿流停滞
  c. 高Ca血症
 _ 尿検査
  a. 血尿の有無
  b. 細菌尿の有無
  c. pH:5.5以下は尿酸結石?、7.0以上はMg-ammonium phosphate?
  d. シスチン尿症:ニトロプルシッド反応(>75mg/Lで陽性)
 ` X線学的検査(KUB/IVU/RP)
  a. X線透過性結石:尿酸、シスチン
  b. 尿路結石と見誤られやすい結石様陰影: 静脈結石、腸骨血管の石灰化、腸間膜リンパ節石灰化、胆石、肋軟骨の石灰化   
  c. 水腎症・無造影腎
 a 腹部超音波断層検査:腎盂腎杯系の拡張
 b 血液生化学的検査:血清中Ca、尿酸値の測定
4. 治療
尿路結石の約半数(尿管結石は80%、腎結石は20%)は自然排石されるが、治療経過中に結石による尿路の閉塞で種々の程度の尿流停滞が生じて、腎機能に影響を与えうる。尿路結石の治療において、常に腎機能を温存することに留意する。治療方法は、^対症療法、_砕石術、があり、具体的には、@自然排石の可能性が極めて低い、A進行性の水腎症、B尿路感染症、のいずれかがあれば、結石砕石術を選択する。

 尿路結石治療法
 ^ 対症療法
  a. 疼痛発作時には鎮痛剤
  b. 利尿
  c. 尿路感染の制御
 _ 結石砕石術
  a. 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
  b. 経尿道的尿管結石破砕術(TUL)
  c. 経皮的腎結石破砕術(PNL)
  d. 観血的治療(切石術)
5. 再発予防
尿路結石患者の約半数は、残りの人生の間に結石を再発する。再発を予防する方策として、^結石成分の分析、_バランスのよい食事と水分摂取、がある。
 ^ 結石成分分析
  a. 尿酸結石;尿のアルカリ化、蛋白摂取量の制限
  b. シスチン結石;尿のアルカリ化
  c. 感染結石;尿の酸性化、尿路感染の制御
 _ 食事指導
  a. Ca;ミルク、チーズなどの乳製品
  b. 蓚酸;ほうれん草、パセリ、ココア、チョコレート