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茎頂の細胞表層でキシログルカンと相互作用している分子を見つける方法? -

Xyloglucan endotransglucosylase/hydrolases (XTHs) are inactivated by binding to glass and cellulosic surfaces, and released in active form by a heat-stable polymer from cauliflower florets.   Sharples SC, Nguyen-Phan TC, Fry SC.   J Plant Physiol. 2017 Aug 5;218:135-143. doi: 10.1016/j.jplph.2017.07.022.    PMID: 28822306

シロイヌナズナに近い植物で、体がもっと大きくなる植物を育成する。 茎頂の部分を切り取る。どれくらいを切り取ってよいのかは、実体顕微鏡で見ながら考えないといけない。 試料はほんのわずかしか用意できないと思われる。しかし技術が進歩しているのでなんとかなるかもしれない。またはだめかもしれない。

カリフラワー花塊を使うと良いことが、岡田清孝先生のグループによって示されている。

対照として葉や茎や根も用意する。 タンパク質を抽出する。とくに細胞外空間に存在するタンパク質を重点的に取り出す方法を用いる。減圧浸透と遠心力を使う方法などが既に実績がある。しかし使用できるサンプル量が少ないので、丸ごとすりつぶした方がよいという可能性もある。どのような方法が最適かは、やってみないとわからない。 キシログルカンと結合するタンパク質をアフィニティー単離する。既にそういう論文がずいぶん前に出ている。 XTH が単離されることが報告されている。それ以外のタンパク質も検出されることがその論文では示されていた。しかし著者らはXTH 以外の物については分析していなかった。電気泳動し、茎頂と葉、根、茎で比較する。電気泳動は「二次元電気泳動」「SDS-PAGEだけ」「Blue-native PAGE」などがある。

「Blue-native PAGE」は、ミトコンドリア電子伝達複合体などの分析に用いられる方法である。高次構造、複合体構造を維持したままで分子の大きさに基づいたタンパク質分離が行えるそうである。 わたしはついこの間まで知らなかった。膜タンパク質(可溶性の物に比べて研究が難しい)、複合体の分析に適している。経験的に native-PAGE はとても分離が悪いが、この方法はどうだろうか。 インビトロジェンという会社でキットを売っている。

茎頂特異的に存在するスポット、バンドを質量分析する。シロイヌナズナのデータベースを用いて検索する。 XTH 以外にどのような物が単離できるか、またそれらがどのような物なのかはやってみないとわからない。 細胞壁の構造維持、機能発現に関わる因子である可能性が高い。

ありがちな結果は、「本来は関係ないが量が多いタンパク質が偶然弱く結合して主要スポットとして検出され、本当に重要な物は量が少ないために見ることが出来ない」というものである。 
しかしそれが茎頂でのみ発現するのなら、茎頂の機能にとって重要である可能性もないわけではない。

既に、土田博士、渡辺博士ら(岡田清孝先生のグループ)が、「カリフラワー花塊の低分子細胞外タンパク質」に関する優れた成果を上げている。
http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/sh_heisei13/syokubutsu/okada.pdf

カリフラワー花塊は、茎頂を研究するために役に立つのだろう。土田博士らは、新鮮な材料を用意するために自らカリフラワーを栽培されたそうである。いい材料を見つけ、用意することは研究の成功に大きく寄与する。特に植物の研究はそれが顕著である(私の経験でも)。