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茎頂分裂組織、カルスからの葉の分化を研究するにはどうすればよいか -

目次

最近のすばらしい研究論文

''Mathematical model studies of the comprehensive generation of major and minor phyllotactic patterns in plants with a predominant focus on orixate phyllotaxis ''   PLoS Comput Biol. 2019 Jun 6;15(6):e1007044. doi: 10.1371/journal.pcbi.1007044.    Takaaki Yonekura, Akitoshi Iwamoto, Hironori Fujita, Munetaka Sugiyama   PMID: 31170142  PMCID: PMC6553687

植物の葉の付き方の規則性については、Douady and Couder (DC) モデルという一般化モデルが確立している。しかしこのモデルに合わない珍しい規則性を持った植物も存在する。Orixa japonica コクサギという植物は、「2個ずつ左右交互に互生する。」と、Wikipedia で紹介されている。この規則性(orixate phyllotaxis)についても説明できるモデルが確立された。


(以下は古い考え)


葉序と群

葉序と群について考察した論文が出ている。
Sequences of symmetry-breaking in phyllotactic transitions.   Yamada H, Tanaka R, Nakagaki T. Bull Math Biol. 2004 Jul;66(4):779-89. doi: 10.1016/j.bulm.2003.10.006. PMID: 15210318    山田博士の研究論文   http://ci.nii.ac.jp/naid/110002165832   この論文に関する講演の要旨

「群」とか、「対称性の破れ」という、生物学者が使わない言葉が出てくる。「対称性の破れ」と聞くと素人としては何か大変高度なことのような気もするが、要するに対称の度合いが低下するということらしい。

一個体の植物には、複数の葉がつく。葉の付き方を葉序と呼び、対称性の観点から分類することが出来る。一カ所の節から十字型に葉がつく植物があり四輪性と呼ばれる。左右に一対の葉を出す植物もあり互生と呼ばれる。一カ所から一つずつの葉を出す植物は対生と呼ばれる。対生の場合、ある葉と、次に形成される葉が形成する角度は植物によって決まっている。その角度とフィボナッチ数列、黄金角に関係があることがよく知られている。四輪性の葉は対称性が高い。互生、対生と遷移するに従って対称性の度合いが低下してくる。

植物の中には生育の途中で葉序が異なる状態に遷移するものがある。一つの植物体で、互生の部分と対生の部分が共存することができる。 山田博士の論文にも写真で例が掲載されている。ゴーヤの葉について、観察して写真を掲載してくださっているホームページがある。    http://17.pro.tok2.com/~kmimura/contents30-2010061  第1、第2の葉は対性で、3番目からは互生に変わっている。 

変換に対応する群は何種類かの部分群に分類できる。それらの部分群を当てはめることで、この現象をうまく説明することができる。

植物の形の対称性を研究しても何の役にも立たないように一見思える。しかし葉の形の対称性を調べることは、貴重な野生植物の状態診断を非破壊的に行う手法に適用されて実用にも役立っている。   http://www.ffpri-hkd.affrc.go.jp/koho/rp/rp77/report77.htm   森林総合研究所北海道支所 永光 輝義 博士の研究

動物でも、野生生物の生存力を評価するための指標として、対称性が注目されている。   http://www.nies.go.jp/kanko/news/15/15-2/15-2-08.html

茎についた葉や花の付き方では「ネジバナ」のような興味深いものがある。   http://ci.nii.ac.jp/naid/110004715138   本田博士による研究

ネジバナの付き方は Corkscrew に相当する。検索するとネジバナの写真がたくさん公開されている。花の付き方を研究した人もいる。ネジバナには右巻きと左巻きがあって、だいたい1:1になっているそうである。ここにも左右の巻き方の対称性があるのかもしれない。さらに一定の割合で花がねじれずにつく(回転角が0)ものが出現する。同一の個体でも、途中から回転の向きが逆に変わることも観察される。花がねじれずにつくと、茎の一方向に花の質量が偏るのでバランスがとれない。茎が倒れやすくなる可能性があり生育に不利なように思える。なにかストレスを受けていることを示しているのかもしれない。

遷移に部分的にでも方向性があるとすれば、それはどういう仕組みによるのだろうか。群論自体には、変化、状態遷移に方向をつける要因はあるか。ある群を分類して部分群に分けることができる。その逆はできないので方向性がある。それ以外にも物事に方向性をつける非常に強力な仕組みに熱力学の第二法則がある。四輪性、対性、互生といった葉序を、単に棒(茎)の周りに点が分布しているように考えてみる。点の配置にエントロピーを対応させてみる。そのために葉がついている場所の角度(0〜360)を値としてヒストグラムを書いてみると、葉序ごとに分布の均一さが違っている。オオカナダモは四輪生だが一段ごとに角度がずれている。角度を値にしてヒストグラムを書いてみると、奇数段の葉では0,90,180,270 の4種類の値、偶数段の葉では45,135,225,315 の4種類の値に集中した分布を示す。

 0, 90, 180, 270, 45, 135, 225, 315,  0

ほかの角度だとどうなるか。例えば130度だとどうか。

0, 130, 260, 30, 160, 290, 60, 190, 320, 90, 220, 350, 120, 250, 20, 150, 280, 50, 180, 310, 80, 210, 340, 110, 240, 10, 140, 270, 40, 170, 300, 70, 200, 330, 100, 230, 0

上の数列を並び替えると 0, 10, 20, ・・・, 350 と10度おきに一回ずつ出てくる。

黄金角をとる葉では、葉同士が重なりにくいとよく言われる。そのときの葉の角度をヒストグラムにすると、0〜360の間で一様な分布に近くなる。130度では 0 と 10 の間の角度は生じないが、黄金角ではそういう隙間はなくなる。

ネジバナで、花がきれいならせんを描いているものは、角度をヒストグラムにすると0〜360の間で分布する。しかし角度に間隔がある。角度の分布という観点から見ると、「ネジバナの花の集団」よりも「黄金角でついている葉の集団」のほうが、葉の枚数が十分に多ければ一様分布に近くなりうる。たまに出現する、花がねじれずにつく(回転角が0)ものは、角度をヒストグラムにすると0にのみ分布する。

角度の分布を一様にする方法としては「回転角を0でない値で、できるだけ小さくする」のが一つの手段である。しかし「回転角を0でない値で、できるだけ小さくする」では十分ではない。ある程度少ない枚数で実現しないといけない。回転角が1度なら、一周するのに 360枚の葉が必要になる。ネジバナでねじれが小さい場合では花がせいぜい50個ぐらいしかつかないので一周できない。

「ある程度少ない枚数の葉を用い、角度の分布をできるだけ一様にする。回転角は常に同じにする」ということを拘束条件にしている?

「角度の分布をできるだけ一様にする」という条件は、重量のバランス(重心位置)をとることにもつながる。この「重心」は、重要ではないか。複数の葉が形成する重心が偏っていたら、植物はひっくり返ってしまう。植物の生活に物理的な力、力学が重要であることは以前から知られているし、最近すばらしい研究成果が出てきている。しかし、「葉が40枚」と「葉が41枚」では、41枚目の葉がどこについても重心はあまり変わらないだろう。もし重心が大切なら葉が増えると、葉の付き方は規則性がなくなることになる。シロイヌナズナを見ていると、どうもそうではないように見える。単純にすべての葉の平均の重心が大切なのではなく、最近できた複数の葉が形成する重心と、それらの葉の元になった部分への力のかかり方が大切なのかもしれない。

黄金角で葉が付く場合は、葉が増えれば増えるほど分布が一様になる。回転角は約137度で大きい。 また葉の枚数が少なくてもある程度分布を一様にできる。 3枚の時でも 0, 137.5, 275 で、もっとも一様である120度との違いは比較的小さい。 植物によって条件が違っていれば、決定される葉序も違ってくるだろう。

「1,2 枚の葉で、分布の一様さを最大にする。回転角は常に同じ。重心はできるだけ中央」 これは180度しかない。    「1, 2, 3 枚の葉で、分布の一様さを最大にする。回転角は常に同じ。重心はできるだけ中央」 これは120度しかない。    「1, 2, 3, 4 枚の葉で、分布の一様さを最大にする。回転角は常に同じ。重心はできるだけ中央」 回転角 90度では、2、3枚目の時に分布が大きく偏ってしまう。    「1, 2, 3, 4, 5 枚の葉で、分布の一様さを最大にする。回転角は常に同じ。重心はできるだけ中央」 最終的には 72 度につくだろうが、付き方に順番が生じる。144度で一定にできる。   

シロイヌナズナを育成するとわかるが、生育初期の葉の数が少ない段階では回転角は全然規則正しくないように見える(育成条件が悪いのかもしれないが)。短日で育成してロゼット葉がたくさんついたものはいかにも規則的に見える。そういうことがうまく説明できないといけないのではないか。

ネジバナの隣り合った花と花が形成する角度が個体ごとにどう分布しているかは興味深い。こんな具合ではないか。

         /\     /\
       /   \  /   \
     /     \/      \
   /                \
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 左巻き        0         右巻き

回転角は0〜360に収まっている。この場合、回転角が一様に分布することでエントロピーが最大になる。

参考書: 「情報エントロピー論」堀部 安一教授 森北出版

角度の分布をヒストグラムにしてみる。各区画の値を全部足したものを合計とする。各区画の値/合計 を計算する。 0≦ それらの値 ≦1 となるので、各区画に滞在する確率と考えてみる。それ以外に特に制限、制約はない (制約条件があると、エントロピーが最大になる分布の形は変化する)。情報エントロピーの式から、

   -1 * (各区画の値/合計) * log2(各区画の値/合計) をすべての区画について足し合わせたもの

がエントロピーになる。分布が一様から遠いとエントロピーは低い。ある区画だけが1で、後の区画が全部0なら、 エントロピーは0になる(0 * log2(0) = 0 とする)。


ある分布について、それをより一様な状態にする操作を考えてみる。それによってエントロピーはどう変化するか。 二つの区画について考える。区画の値/合計がそれぞれ A, B とする。より一様にするために (A+B)/2 にそろえる。 元のエントロピーは H(A), H(B) で、足し合わせた値は H(A) + H(B) になる。H(A) と H(B) の差をΔH とすると、 (H(A) と H(B) の小さい方の値)* 2 + ΔH と表せる。

一様にそろえた場合、H((A+B)/2)を 2つ足し合わせることになる。ここで、「エントロピー関数 -1 * x * log2(x) が 上に凸な関数である」ということを利用する。もしH(A) と H(B) の間が直線でつなげるなら、H((A+B)/2)の2倍は、 (H(A) と H(B) の小さい方の値+ΔH/2 )* 2 と表せる。これは元の状態(H(A) とH(B)の和)と同じである。 しかし上に凸な関数なので、H((A+B)/2) の値は直線でつながれる場合よりも必ず上にくる。すなわち一様化した場合 ( H((A+B)/2)二つの和)のほうが、元の状態(H(A) とH(B)の和)よりも必ずエントロピーが高くなる。


群のエントロピー

群を部分群に分けるとエントロピーは変化するのか。元の群が様々な操作、演算を元として含むなら、その群は多様性が高い。部分群が、元の群から似たものを取り出して作られるものならば、多様性が低くなる。生態学ではエントロピーを計算することが多様度指数の一つとして使われている。横軸に生物種、縦軸にそれぞれの種の生息数を取ったヒストグラムを作る。生物多様性が高いとヒストグラムは広くばらけるのでエントロピーは高くなる。多様性が低いと一つの種に集中するのでエントロピーは低くなる。

こう考えると、部分群が、元の群から似たものだけを取り出して作られるものならば、多様性が低くなるので、元の群よりもエントロピーが低くなる。

と思ったが、これでよいのか。違うような気もする。

(考え中)

黄金比とエントロピー

黄金比とエントロピーの関係について書かれた文書があるそうである。   「黄金比とエントロピー」堀部 安一   数理科学  1987年 12月号  

「パターン形成の熱力学的指標による評価」という文書が公開されている。数理解析研究所講究録第1680 巻2010 年80-90 (独) 産業技術総合研究所真原仁(Hitoshi Mahara)、山口智彦(Tomohiko Yamaguchi)   http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=24&ved=0CEAQFjADOBQ&url=http%3A%2F%2Fwww.kurims.kyoto-u.ac.jp%2F~kyodo%2Fkokyuroku%2Fcontents%2Fpdf%2F1680-09.pdf&ei=4nXPUpPjGci9kQX8kIGQCw&usg=AFQjCNF7F9jAD0SB8eR1LuqEPwxXy01aqA&sig2=eeJIoMaqmYV3jJJW2CK38A&bvm=bv.59026428,d.dGI&cad=rja

生物学において、葉序のように器官やオルガネラの配置が規則正しく決まる機構は興味深い。葉序以外にも規則的な配置パターンが形成される例はたくさんある。   http://plant.biology.kyushu-u.ac.jp/shinryoiki/newsletter/PDF/NL06L.pdf   寺島先生が「葉緑体が細胞間隙に沿って、あたかもCO2を吸収しやすいように配置される」ことを紹介されている。配置のパターンが CO2 濃度によって決定される。

「生物に熱力学の第二法則を適用して(生物がある状態をとっている原因をエントロピーの増大と結びつける)、それが意味を持つのか」ということが問題になる。もちろん外部から与えられるエネルギー、刺激、シグナル、攪乱、自発的なノイズが大きいとそれらにマスクされてしまう。しかしもっと生物の様々な局面に適用してもよいような気もする。山田博士の論文を、そういう方向に発展させる(温度やエントロピーを取り入れる)ことも何かの役に立つかもしれない。

Turning a plant tissue into a living cell froth through isotropic growth.   Corson F, Hamant O, Bohn S, Traas J, Boudaoud A, Couder Y.   Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 May 7.   という論文では、植物細胞の拡大生長の様子を説明するために熱力学と関連した考え方を用いている。   Corson らの論文を解読しようとした文章   この論文には温度は出てこない。

「茎頂で葉が発生する場所が決まる仕組みには、熱力学の第二法則がはっきりと効いてくる性質がある」というようにも考えられる。化学の世界では、結晶構造の分類(対称性に注目した)で、群論が使われるそうである。葉序については、四輪生のような高い対称性のものは結晶に相当?:互生で黄金角を取るものは 準結晶に相当? その中間に、1/2(180度)、1/3(120度)、2/5(144度)、3/8(135度) 、・・という系列が存在する? すべてが整数の組み合わせで表される。こういうことは分子、電子、原子核と共通していて、物理、化学の分野とつながりがある。朝永振一郎先生が書かれた本では「整数性が露頭している」と書かれていた。

結晶は原子の繰り返し紋様と考えることができる。対称性によって分類される。 原子が空間に一定の規則を持って並ぶ。準結晶は周期性がなく準周期性を持つ。 「周期性がない」ということは、「並進対称性がない」と言うことに相当する。 しかし準結晶は回転対称性を持つ。黄金角を形成する葉は、強い秩序を持つが、周期性が現れにくくお互いが重なりにくい。13/34の葉序なら、「13回転する間に34枚の葉が現れる。そこで初めて元の状態に重なる」ことになる。その状態を上から見ると、「葉がお互いに重なる領域をできるだけ小さくしながら、隙間なく空間を埋めている」ように見える。

茎頂における葉序の決定のしくみは、群論が適応できるという点において結晶が形成されるしくみと同じものと考えることができる? 葉が発生するポイント一つ一つが、結晶における原子に相当するのかもしれない? 結晶を構成する原子を見ようと思うと大変だが、茎頂だとそれが見えている? 葉がたくさんつく方が規則正しくなるように見えるのは、原子が多い方が結晶を構成しやすくなるから?

上のほうに書いた「金属でできた茎頂のような構造物に生じるパターン」は、''Thomson's problem'' 球の誘電体上に荷電粒子がエネルギー最小状態で分布する時のパターン形成と似たところがあるとすでに論文中で指摘されている。Thomson's problem については、英語の Wikipedia に詳しく書いてある。粒子数が少ない状態の最小エネルギー状態から、粒子数が多い状態の最小エネルギー状態まで表が書かれている。 この表に相当するものが、茎頂でも作れればよい? 粒子数が指定されると、いくつかの性質が指定される。

: 各粒子の位置をベクトルで表現したものをすべて足し合わせて絶対値を取った値(これはたいてい0=電気的に極性(dipole moment)がない)

v3 ~ v8: 各頂点を結んで立体の多角形を書いた場合に、頂点につながっている辺の数を数える:3つの辺がつながっているなら v3 とする。v3 ~ v8 がいくつあるか、それぞれ数える。点が4つなら四面体 tetrahedron になる。すべての頂点が3つの辺とつながっている。点が5つなら4面体を2つつなげたもの triangular dipyramid になる。v3 が2つ、v4 が3つになる。

e: 各頂点を結んで立体の多角形を書いた場合の辺の数

f3, f4: 各頂点を結んで立体の多角形を書いた場合の面を見てみる。面は3角形か4角形になっている。それぞれの数を数える。

θ1: 各頂点が作る角度で、一番小さい値

Equivalent polyhedron: 各頂点を結んで立体の多角形を書いた場合、どういう立体になるか

この表には温度は全く入っていない。誘電体も荷電粒子も全然運動しないことになっているので、温度は0に固定ということなのだろう。茎頂がこれに相当するなら、温度の影響を受けにくいだろう。しかし''Thomson's problem''と結晶はある程度似ているということはある。

http://www.mathpages.com/home/kmath005/kmath005.htm  に、トムソンの問題の答えについて解説されている(解き方は書いていない)。N = 0 の場合から説明がある。N = 7 のところで、(1 + √5) / 2 という値が出てきている。これは黄金比と一致する。このことに何か意味があるのか、わからない。

トムソンの問題を拡張すると Tammes problem という問題になる。これも英語版の Wikipedia に説明がある。これも生物学と関わりがあることが指摘されている。花粉の表面は、一面にくぼみが生じていることがある。その模様を説明することから Tammes problem が提案された。

トムソンの問題はとっくの昔に完全に解決しているのかと思ったが、どうもそうでもないらしい。粒子が多いと組み合わせが多くなり解きにくくなるらしい。

茎頂の場合、土台となる部分(誘電体に相当)は球ではない。円錐や球の上半分の方が似ている。そういう場合にどうやって解けばいいのか、論文または説明を見つけないといけない(もし土台の形は何でもよいのなら、そういうことを言及する人もいなくて見つからないかもしれない)。

How to Cut a Cake: And other mathematical conundrums 著者: Ian Stewart http://books.google.co.jp/books?id=theofRmeg0oC&lpg=PT46&ots=8YI0Zuzb21&dq=Tammes%20problem%20hemisphere&hl=ja&pg=PT46#v=onepage&q=Tammes%20problem%20hemisphere&f=false

"equilibrium configurations of n equal charges on a sphere" という語句で検索すると、球の場合の解き方を書いてある文書が見つかる。

http://lss.fnal.gov/archive/preprint/fermilab-pub-91-222-t.shtml   粒子数と、その場合の最小エネルギーを計算した表が付いているので、自分で計算した場合の答え合わせができる。

繰り返し計算を行うことで最適な(エネルギー最小)配置を決める。まず初期状態として粒子をランダム(またはなんらかの規則に沿って)に配置する。全体のエネルギーやそれぞれの粒子の場所ベクトル、それぞれの粒子にかかる力ベクトルを、簡単な規則に基づいて更新する。そのときにγという温度のようなパラメーターがある。γが大きい値なら粒子に大きな力がかかるので大きく動く。動くことで全体のエネルギーが下がれば、それを繰り返す。全体のエネルギーが低下しなければγを少し小さくする(動きを小さくする)。手順を繰り返してエネルギーが全く下がらなくなるまで繰り返す。粒子が少なければ R言語でも簡単に計算できる。資料に付いている答えと少しずつずれているが、だいたい同じくらいの値が答えとして出てくる。乱数を使うので、答えは毎回少しずつ違っている。精密な値を計算する場合は、もっと繰り返し回数が増えて時間がかかるのだろう。

土台がどんな形でもできるように思えるが、球の場合は対称性が高く境界になる部分がない。その分簡単になる。球の上半分のような形だと境界、端がある。境界をどのように計算において処理するかは考えないといけない。境界条件をつける場合、反対側の境界とつなげる場合がある。

「既にできあがった球の表面に点を配置する」問題は、上のように計算されている。茎頂や、ゆっくりと成長する構造物の場合は、一番最初に小さな領域(結晶で言えば核)がありそこにいくつかの点が配置される。それはランダムでもよいだろう。その「核となる領域」に、新しい領域が付け加わって面積が増える。増えた新しい領域に、いくつかの点が配置される。その配置は、「領域全体のエネルギーが最低」になるように決定される。計算法は、球の場合と同じ感じでよいかもしれない。こんな具合に考えた方が生物で起きていることに近い場合があるだろう。ロゼット葉を作っている茎頂では特にそうだろう。茎に付く葉の場合でも、葉の原型ができるときは大きさが小さいので一組の葉と次の組の葉の間隔は小さい。その後成長して茎が伸びると、それぞれの葉は大きく間隔が開く。

大阪大学の近藤先生が細胞工学に連載されていた「生命科学の明日はどっちだ」という連載に「育てよ亀,でもどうやって!?」という記事がある。 http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/skondo/saibokogaku/sodateyokame.html   「らせん構造と付加成長」ということが紹介されている。円錐が基本的な形になっていて、下部に新しい円盤が付け加わることで、相似な形を保持しながら成長を続けることができる。 「付加成長」は起きるが、その逆に葉の原基や円盤型の組織が取り除かれると言うことはない。ここにおいて、方向性が出てくる。山田博士の論文で「対称性が破れる方向に遷移が起きる」ということ(状態の遷移に方向がある)が書かれていたが、関係を持たせることができる?

問題点はたくさんあるだろう。 葉のできる場所同士が電子同士のように(1/距離)の強さで反発するのだろうか。もしそうなら生物学的にはそれはどのように実現されるのか。「粒子に力がかかって動く」というのは、うまく合いにくいような気がする。

「表面座屈現象、しわ形成」のほうが、茎頂にうまく合うような気がする。オーキシンとオーキシン輸送体(PIN)のしくみと似ているかもしれない。これらの現象はバイオミメティクスの研究でも紹介されていた。これらについて調べる必要がある。

「飛翔生物を規範とした伸縮可能な微小シワ付きフィルム翼」千葉大学 田中先生   「生物多様性を規範とする革新的材料技術」のホームページ   http://biomimetics.es.hokudai.ac.jp/ のニュースレター 2-1

http://www.nature.com/nature/journal/v393/n6681/abs/393146a0.html

オーキシンとオーキシン輸送体(PIN)で、一定の間隔を持った濃度ピークの分布を作ることができることが以前から示されている。オーキシンの合成、分解、輸送が細胞にかかる力で変化すると考えても同じようなことができるかもしれない。濃度ピークの場所を電子・粒子・葉の原基のように考える。それぞれのピーク間にどのような相互作用がありうるのか。考えることができるだろう。もう成果が出ている? よく調べていない。

葉が四輪性でついている場合: 一番最初の段では土台(誘電体)を球でなく、円と考えると90度ずつ離れる? その上の段は45度ずれている。これは上と下で反発するとすればそうなる? なぜ四輪性の植物は4つの葉がつくのか。土台(茎頂、誘電体)の形が重要なのではないか。

対性でついている場合: 

結晶学は原子が1個では成り立たないだろう。それでは2個ではどうか。3個ではどうか。10個くらいでは、原子がたくさんある場合と比べてどうなのか。全然勉強していないのでわからない。

結晶を作るときには核、種となる小さな粒子を入れることがある。台風の数値モデルの研究に関する講演を聞く機会があったが、その時も台風がモデル内でうまく生成するように小さな渦を種として作っておくということだった。 最初につく数枚の葉の付き方はランダムに近く、それが核になるということも考えられる。葉の枚数が増えるのは結晶が大きくなるようなもので、大きい結晶がさらに大きくなることは規則に則って進行する。

安定な結晶構造というのは温度や圧力によって変わる。熱力学によって、どのような構造がどんな条件でもっとも安定かを説明することができる。葉序の決定も、温度や圧力によって変わりうるのかもしれない。

これは文献を調べたり、育成温度を変えて反応を見ないといけない。葉序の規則がとても安定していて、葉の角度やつく位置を正確に簡単に短時間で測定できる植物種を見つけないといけない。そのほうがむずかしいかもしれない。

いろいろな植物を調べて、葉序が温度の影響を受けやすいもの(構成している要素がぐらぐらと動きやすい? よく動く=高い温度?)、受けにくいもの(トムソンの問題のように、全然動かない?)を見つけてどこがどう違うのか比べるということも考えられる。これも難しい。葉序がそういう二つの型に分けられるという証拠は全然ない。

Google books で「Phyllotaxis: A Systemic Study in Plant Morphogenesis 著者: Roger V. Jean」「Symmetry in Plants  著者: Roger V. Jean」 という本が見つかる。だいたい私が考えたようなことはこれらの本にすでに書かれているらしい。結晶と葉序の関係も指摘されている。温度と葉序の決定についても、少し書かれているのが読める。一応研究例はあるが、そんなに詳しくは調べられていない? いくつかの植物種で温度に対する葉序の感受性があるらしい。

「Phyllotaxis: A Systemic Study in Plant Morphogenesis」   http://books.google.co.jp/books?id=9pCn3W0gfFAC&lpg=PA100&ots=ITqT2T7Ujf&dq=phyllotaxis%20temperature&hl=ja&pg=PA100#v=onepage&q=phyllotaxis%20temperature&f=false

分厚い本で、目一杯文章と図面、写真が詰め込まれている。

「Symmetry in Plants」    http://books.google.co.jp/books?id=XpVG1UwncogC&lpg=PA228&ots=uLQlUk8Mtu&dq=phyllotaxis%20temperature&hl=ja&pg=PA231#v=onepage&q&f=false

 Contents: に 「結晶学者から見た茎頂」というのがある。

    Prologue by a Crystallographer: Phyllotaxis (A L Mackay)

    Systems of Phyllotaxis in the Genus Eucalyptus in Relation to Shoot Architecture (D J Carr)

    Pendulum Symmetry (W A Charlton)

    The Physiological Basis of Pattern Generation in the Sunflower (J H Palmer)

    The Selection of Phyllotactic Patterns (S Douady)

    Phyllotaxis as a Geometrical and Dynamical System (A-J Koch et al.)
    The Role and Importance of Vertical Spacing at the Plant Apex in Determining Phyllotactic Pattern (W W Schwabe)

    Elementary Rules of Growth in Phyllotaxis (R V Jean)

    Uniform Spacing Models for the Morphogenesis of High Symmetry Biological Structures: Icosahedral Capsids, Coaxial Helices, and Helical Phyllotaxis (C J Marzec)

    Light Harvesting “Fitness Landscapes” for Vertical Shoots with Different Phyllotactic Patterns (K J Niklas)

    On the Origin of Symmetry, Branching and Phyllotaxis in Land Plants (R Sattler)
    and other chapters

まず、普通の塩や金属の結晶構造がどのように温度/圧力の影響を受け決定されるのかをよく知っておかないと、「葉序は結晶かどうか」を考えることはできない。結晶について勉強していないので、そこから始めないといけない。

言い換えると、「茎頂で葉が生じる際はきわめて複雑なことが起きているが、それらを分解していくと、結晶が形成される仕組みと似たことが起きている部分が見つかる? もしそうなら、結晶学、熱力学のすばらしい成果を勉強して、それに乗っかってなにかできるのではないか」ということになる。

複数の粒子がお互いに相互作用しながら構成する系全体のエネルギーを考える。ある規則で整列するとエネルギーが最低になるなら、その規則に沿った整列が自然に実現される。

これを茎頂に適用するために、ある葉序(複数の葉または葉の原基または花の並び)があれば、それら全体の配置エネルギーを計算する・測定する・計算のため、測定のための理論(理屈)を作る必要がある。 葉の数が増えることは粒子の数が増えることになぞらえられる。だから化学ポテンシャルも関係するかもしれない。粒子が乗っかっている面の立体的な幾何学的形状も関係するだろう。茎頂は平面ではなく曲がっている。その上に葉原基が点として配置される。「曲がった平面における幾何学」というのは、数学、物理で良く研究されているそうである。

まず遺伝子によって茎頂平面の曲がり方が決まる。あとはその平面に配置エネルギーが最低になるように自然に葉原基が配置されるのではないか。これによって生物学と物理学を関連づけることができる。 平面の曲がり方が変わると、それに従って配置も変化する。植物には様々な葉の付き方をするものがあり、同一の植物個体でも途中で葉の付き方が変化するものがある。それは茎頂の幾何学的形状が異なる・途中で変化して、配置エネルギーが最低になる配置が別のものになるからである。というのは単なるアイデアである。

化学では原子の配置を点群(数学の)で表す。葉序が群に当てはめられ分類できることはすでに山田博士の論文で示されている。点群というのは化学でよく使われるもので、数学ではあまり研究されていないと書いた文章があった。

生物学と対称性

「対称性の破れ」という言葉は、生物学者は全く使わないと思っていたが、 生物学でも「対称性の破れ」という言葉を使うこともある。

植物では、葉の形の対称性が破れる変異体 asymmetric leaves1 (as1) と asymmetric leaves 2 (as2) が見いだされており、その原因遺伝子も単離されている。   http://www.kazusa.or.jp/ja/plant/pas/data/matida.htm   日本のグループによりすばらしい研究が進められている。それらの遺伝子と対称性がどう結びつくのか、非常に興味深い。

葉の形の対称性を研究して何の役に立つのかと思う人も多いだろう。しかし葉の形の対称性は、植物がストレス、ダメージを受けると低下する性質がある。それを利用して貴重な野生植物の生育状態を非破壊で検査することが可能になっている。

http://www.ffpri-hkd.affrc.go.jp/koho/rp/rp77/report77.htm   森林総合研究所北海道支所 永光 輝義 博士の研究

植物の細胞は、細胞質分裂の時に細胞の中央から隔壁が形成されてきて新しい二つの細胞が形成される。隔壁によって新しい二つの細胞ができるが、その二つが左右対称になる位置に形成されることが多い。対称性を保持するように隔壁の場所を決める仕組みは、ずっと以前から注目されている。Preprophase Band という構造体が形成されることが知られている。   http://www.sci.u-hyogo.ac.jp/life/biosynth/ppb.htm   峰雪先生の解説

力学的なことが関係するかもしれない。分裂前の細胞にかかっている力を、もっともよく支えられるように、補強するように新しい壁の位置が決められるという仕組みはありそうかもしれない。その仕組みは間期にしか働くことができないので、Preprophase Band として細胞表層に記憶させておくのかもしれない(それは当たり前だろう)。最近、細胞に対する物理的な力の影響が、様々な分野で注目されている。特に細胞壁を持つ植物、微生物細胞の場合、力学的な性質に細胞壁が強く関連してくる。

双子葉植物では、胚形成の時に子葉が二つ形成される。子葉の大きさ、形は左右対称になっている。このことには重要な植物ホルモンであるオーキシンが関わっているらしい。   MACCHI-BOU 2 is required for early embryo patterning and cotyledon organogenesis in Arabidopsis.   Ito J, Sono T, Tasaka M, Furutani M.   Plant Cell Physiol. 2011 Mar;52(3):539-52. Epub 2011 Jan 20.   PMID: 21257604

オーキシンの作用には数学的なモデルと関連が深いことがいくつかある。維管束の形成では、「オーキシンの反応拡散方程式を用いたモデル」と「オーキシン運河モデル」というのがある。こういう見地から見ると、オーキシンは「数学ホルモン」と考えることができる。どうしてそうなるのか?それはたぶん、上の方に書いたように、 オーキシンの作用、量、局在性が細胞に与えられる物理的な力によって制御される割合が大きいからだろう。力学というものは規則性、理論を明確に観測、説明、予測することができる。生物で起きる物事でも、力学による制御を強く受けている物事なら規則性が高くなるだろう。

生物で起きる物事で「どうしてこの物事はこんなに規則性をもって起きるんだろう」と不思議に思うようなことがあったとしたら、その物事には細胞に加わる力、力学が何らかの形で関係していることが多いのかもしれない。根拠はないが、そんな気がする。

生物学のデータ解析には相関係数がよく使われる。データマイニングにも使われ、様々な応用が成されている。二つの変数間に相関、関連があると、散布図を書いた場合に、点の配置に規則性が生じる(全く相関がないなら点の配置に規則性がない)。 点の配置の規則性は、群論と関連づけできる。分子(原子を点と見なす)の分類の場合もそうだし、点の配置の数学でも出てくる。そういう観点から相関係数を拡張したという論文があった。 http://ide-research.net/pub_top.html 井出博士の研究紹介    生物学的な物事、観測結果、規則が何らかの群に対応していることを見抜けたなら、その群における他の要素に対応する規則が同時に成り立っている、またはその規則の状態に遷移できることが予測できたりするのかもしれない。そういう「見抜く力」が大切なのかもしれない。これは難しい。

対称性、群に基づいて、美しいパターンを形成するプログラムを作成したすばらしい研究がされている。

http://gion.kpu.ac.jp/2003m_abstract/yhongmei.pdf 顔紅梅氏の研究の要旨

生物の模様でも、基本となる簡単なパターンがあり、それが対称性や平行移動による変換によって複雑な模様になっているということもあり得なくはないかもしれない。「基本となる簡単なパターン」を設定する遺伝情報と、「パターンの変換」を設定する遺伝情報をもつことで、少ない情報から複雑な、多様な模様を作れる。模様を変化させることが容易になるだろう。

葉序が群論によって分類できるそうなのだから、生物が器官形成や模様の形成に群論、対称性と関係する仕組みを使っているという可能性も全くないわけではないのではないか。

昆虫や植物の花では「擬態」をするものがある。擬態が成功するには、まず多様な形をした多くの生き物が出現しなければならない。多様な形を実現するために、「基本となる簡単なパターンと、対称性や平行移動による変換」という仕組みが使われているかもしれない。そのなかで、偶然、動物の顔(左右対称性がある)などにかたちが似ているものが生き残って、それが固定されたのかもしれない。

単純な模様に対して、鏡映、平行移動などの変換を繰り返すと動物の顔のように見える模様ができてくるという可能性はかなり高いのかもしれない。ある個体が模様Aをもっているとする。その子孫は、Aに対して鏡映などの変換を行った模様を持つように変化するとする。変換は、模様がなんかの弾みで消失しない限り何回でも繰り返すことが出来るので、世代交代を繰り返しているうちに偶然動物の顔のように見える個体が出現してもおかしくないかもしれない。

数学的に「模様と動物の顔が似ている」ということを数値化できないといけない。 すでに数学者はそういう成果を上げている。谷 聖一博士 によって、「似ていることの数学的定式化とその応用」 という講演が行われていた。   http://lab.twcu.ac.jp/ohyama/topsem07.html   「データ間の類似性の自動判定も,データマイニングにおける重要な課題の1つである」と書かれている。「Kolmogorov 記述量に基づく類似度」というものが紹介されている。

非常に類縁の種だが、形や模様が大きく異なる生物種のグループがあったとする。それらの形態をよく調べると、共通した基本となるパターンがあって、それが対称性や平行移動によって異なるものになっていることが見分けられるかもしれない。しかしそんなことはないかもしれない。

葉序と幾何学、数学

須志田 隆道博士によって、「葉序的な螺旋タイリングの幾何学(Geometry of Phyllotactic Spiral Tilings)」というすばらしい数学研究が行われている。   

「日詰 明男 (龍谷大), 須志田 隆道 (明治大), 山岸 義和(龍谷大) 放物螺旋上での葉序ボロノイ分割」    ボロノイ分割では、平面に点が複数存在している状態で、それらの点(母点)の間に直線を引いて平面を分割することを行う。もちろん数学だから、そこにはいろいろな条件がある(適当に引けばよいのでは数学にならない)。 2次元の普通の(曲がっていない)平面のボロノイ分割の場合、母点が2つあれば、まずその2つをつなぐ線を考える。その線を2等分する点から垂直に線を引く。 その垂直線上の点は、どの点も2つの母点からの距離が等しい。この線がボロノイ境界になる。

これを数学の言葉に書き直すと、2つの点 P1, P2 の間の距離を表す関数を  として、 垂直線上の点を P とすると

 Pi と Pj は異なる母点

母点が2つあれば、その間にボロノイ境界が一つできる。母点が2つだけならそれで終わりだが、3つあるとどうなるか。 母点の組み合わせは3通りになる。だからボロノイ境界も3本引くことができる。それらの境界はお互いに交わるので、交点が生じる。それらの交点をボロネイ点と呼ぶ。 ボロネイ点より向こう側には線を引かないようにする。

そうすると空間は、それぞれ一つの母点を含む3つの領域に分割される。それぞれの領域をボロネイ領域という。

もっと点が増えると、ボロネイ点やボロネイ領域も増える。平面または空間を隙間なく分割する手続きの一つとしてよく用いられる。 隙間なく分割するということから、「タイル張り」との関連が出てくる。また葉序の場合、葉が発生する場所を母点として、ボロネイ分割やタイル張りとつなげることができる。

http://goodds.jp/ibk_scf/htdocs/index.php?key=jooknvu0g-13    茨城県立日立第一高等学校生物部「ヒマワリの種子の配置と繁殖戦略」    種子の配置からボロネイ領域の面積を計算し、黄金角による配置では面積が大きくなり種子を大きくしやすく繁殖に有利であることを示している。茨城県高等学校自然科学部 2012研究発表会で特別賞を受賞している、とても優れた研究である。

ボロノイ図と葉の葉脈を結びつけることも試みられているらしい。

「ボロノイ図を用いた画像の位相解析は土壌や合金強度評価に適用され, 農学や工学で良好な結果が報告されている」と書かれている文書があった。   http://coop-math.ism.ac.jp/report/show/2012W02

細胞表層を拡散する分子の拡散速度を求める

CLV3 などの因子が組織中を拡散する速度を求めることが出来るのだろうか。そしてその速度は植物ホルモンや細胞壁の組成などの影響を受けて変化したりするのだろうか。

転写因子であれば、すでに 
 http://www.cosmobio.co.jp/STKE/archive/tr_20060221.asp 原形質連絡を介する植物細胞における高分子の動き Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 323, pp. tr2, 21 February 2006
のような成果が上がっている。

「蛍光相関分光(Fluorescence Correlation Spectroscopy(フルオレセンス コリレーション スペクトロスコピー): FCS)装置」という装置は、蛍光分子の拡散係数を求めるのに用いられているそうである。しかし生物組織に適応するのは難しいのかもしれない。でもチューリングのモデルは非常に重要で注目されているのだから、拡散係数の測定法を開発することも非常に重要であるはずである。

Baskin TI 博士のグループが、シロイヌナズナの生きた根の細胞壁で蛍光分子の拡散係数を求めることに成功している。

Kramer EM, Frazer NL, Baskin TI.  Measurement of diffusion within the cell wall in living roots of Arabidopsis thaliana.    J Exp Bot. 2007;58(11):3005-15. Epub 2007 Aug 28.

低分子蛍光物質 carboxyfluorescein (CF) の diffusion coefficient (Dcw) をもとめている。

方法としては、「fluorescent recovery after photobleaching」 と、「fluorescence loss following perfusion with dye-free solution」の二通りを用いている。生物学的な細胞に関する知見と、物理的な理論式を組み合わせて値を求めている。

成長が停止した表皮では、拡散係数が一桁低くなっている。スベリンによるバリアが形成されているためではないかと推定されている。 単なる水中を拡散するのに比べ、細胞外を拡散するのはかなりゆっくりとしていると言う結果が得られている。 carboxyfluorescein の拡散係数は、低分子の有機酸であるインドール酢酸やジベレリンの拡散係数と同じくらいであろうと期待される。(と思ったが、ホルモンなどの重要な因子は CF とは異なり細胞を構成する物質と相互作用して拡散が遅くなる可能性がある。)

茎頂にも、同様な方法が使えるかもしれない。また有機酸でなくても蛍光ラベルした生理活性物質なら使えるかもしれない。しかし根(透明に近い)と異なり、クロロフィルがあったりするのでもっと難しくなるだろう。しかしたぶんそれくらいの問題は解決されるだろう。オオカナダモやタマネギは細胞が大きいのでこういう実験に適しているかもしれない。

茎頂とフィボナッチ数列、物理学

植物の形作りを説明するモデルとしては、「Lシステム」というものもある。 わかりやすく説明されたホームページが公開されている。
http://www.gifu-nct.ac.jp/archi/mutoh/K0807tokuken/aboutLSYSTEM.html   http://ja.wikipedia.org/wiki/L-system

非常に簡単なルールから、植物全体の形態に近いものが生成する。Lシステムから Fibonacci 数列が出てくることが、Wikipedia で紹介されている。

茎頂分裂組織の周囲に器官原基が形成される。原基を形成する部位が決められる仕組みは興味深い。その場所でさらに活発な細胞分裂が起きて器官が成長していく。

茎頂での葉の発生は、一定の角度ごとに位置をずらしながら起きていく。角度は植物の種ごとに決まっている。
http://www.aa.alpha-net.ne.jp/unosan/hakubuts23.htm  で紹介されているように、その角度は、分数で表される。

分子は、1で始まる フィボナッチ数列の何個目かの値で、分母は同じ数列の右隣の値になっている。

1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, .....

γ1=1, γ2=1/2, γ3=2/3, γ4=3/5, γ5=5/8, ・・・・・ γ は逆黄金比と呼ばれ 約0.618になる。

または、分母は分子の値から見て2つ後の値とする人もいる。その場合、値が (1-γ) になる。

シロイヌナズナでは葉と葉が形成する角度は、137.5度だそうである。逆黄金比 γ に360をかけた値は、222.48 になる。360-222.48=137.52 黄金角

茎頂分裂組織の周縁部の特定の位置の細胞が葉原基を形成する。「特定の位置」を決める仕組みに、 黄金比、フィボナッチ数列が出てくるような何かが含まれていると想像できる。

フィボナッチ 数列の説明で、よくウサギの数の増加が出てくる。親ウサギ、子ウサギの二種類がある。 子ウサギ A は親ウサギ B になる。親ウサギ B は子ウサギ A を産む。自分自身 B も そのまま生きている。次のステップでは、AはBになり、Bは自分自身はそのままでAを産む。

A細胞、B細胞があると考える。
A細胞はB細胞に変化(分化?)する。
B細胞はA細胞一つ、B細胞一つに分裂する。
細胞が直線的に並んでいるのなら、細胞の数を数えると、それはFibonacci 数列になる。 こんな単純な考えでは実際の茎頂とは似ても似つかないものになる。

「正方形が二つつながったダイマーによるタイル張り」で、フィボナッチ配列が出てくる ことが紹介されている。   http://www.math.h.kyoto-u.ac.jp/~takasaki/res/kok0608.pdf    ダイマー模型とその周辺  高崎金久博士

茎頂は、細胞による三次元のタイル張りのようなものと考えることができる。 茎頂では常に細胞が隙間なく並んでいる。タイルを隙間なく並べる「タイル張り」については、 様々な数学に関わる興味深いホームページが多数見つかる。タイル張りとフィボナッチ配列に関連が あることが紹介されている。タイルが隙間なく並ぶことで、数学的な 規則性が表れるらしい。タイルとタイルの間に隙間があっても良いのなら、 形、パターンに対する拘束条件がなくなってしまう。

平面、立体のタイル張り、球面のタイル張りに関するすばらしい講演資料   http://www.math.sci.hiroshima-u.ac.jp/KOUKAI/text-h18/hiroshimadai06.pdf   タイル張りとトポロジー   松本 幸夫先生   正4角形で正6面体が形成できる。正六角形では正多面体を作ることはできない。

タイル張りは、準結晶(周期的ではない結晶)と関係がある。準結晶を研究すると、黄金比との関連が 出てくるらしい。葉序と結晶、近似結晶、準結晶の間には、タイル張りのようなことを介した結びつき、共通した 部分があるかもしれない。

準結晶に関して、シェル・コア構造が重要であることを示すすばらしい成果が発表された。

http://www.kindai.ac.jp/topics/2014/02/-3.html  「ネイチャーに掲載!理工学部理学科物理学コース教授 堂寺 知成らによる研究成果−結晶でも非晶質でもない第3の状態、「準結晶」ができる仕組みを発見」  近畿大学の研究グループによるすばらしい成果

「ビリヤード玉のような固い玉を芯(コア)としてその周りに柔らかいスポンジの皮(シェル)をつけたような物質を並べる」と、一定の条件下で準結晶の性質を持った配置が形成されるということらしい。この場合は、玉は二次元に配置されているらしい。茎頂のように3次元だと、計算するのが難しいのかもしれない。

茎頂と物理学

物理学の研究者も、葉序に関して考察している。

物理的に(エネルギーを最小にするパターンの形成として)フィナボッチ・スパイラル パターンの形成を説明する理論、実験系がすでに発表されている。

http://www.einstein1905.info/whatsnew/2007/04/0704-fibonacci.html   【数理科学】フィボナッチ数列はエネルギー極小を実現か   shinkai 博士   ここで紹介されている論文に出てくる円錐と、茎頂は外衣・内体構造に共通性がある。物理の論文なのに数式はほんの少ししかなく、花の写真が掲載されている。金属で出来た円錐にはホルモンは働かないが、それでもフィボナッチ配列が出てくる。熱力学的な考え方が通用するだろう。

Science August 5, 2005, Vol.309 に論文がある。   http://www.ricoh.co.jp/abs_club/Science/Science-2005-0805.html   ストレスの痕跡パターン(Patterns of Stress)     Triangular and Fibonacci Number Patterns Driven by Stress on Core/Shell Microstructures Liら p. 909-911.  外衣・内体構造と、その二者間に働く応力がフィボナッチ数列を作り出す原動力になっていると想像できる。

PRL という有名な雑誌にも、Phyllotaxis やフィボナッチ数列に関する論文がいくつも出ている。

Phyllotactic patterns on plants.   Shipman PD, Newell AC.   Phys Rev Lett. 2004 Apr 23;92(16):168102. Epub 2004 Apr 23.

茎頂の構造(外衣・内体構造)を考慮して、エネルギーを最小にするパターンの形成がフィボナッチ数列とつながることが示されているらしい。 この論文は植物生理学の論文からも引用されている。

Braybrook SA, Kuhlemeier C How a Plant Builds Leaves PLANT CELL 22 4 1006-1018 APR 2010

茎頂はL1,L2,L3と細胞が集合している。外殻構造/コアと考えることが出来る。植物形態学では外衣・内体構造と呼ばれる。内部(コア)で細胞が分裂すると、それだけ体積が増加する。しかし表層(外殻構造、シェル)の細胞はそれに同期して拡大するわけではないので、茎頂内部では細胞の密度がさらに高くなる。それによってストレス(応力)が発生する。それを極小にする状態をとることが、葉序の規則性を作り上げる原動力になるということらしい。

物理学では熱による体積の膨張率が異なる二種類の金属が外衣・内体構造を作る円錐を作って、適当な速度で温度を下げることで二つの層の間にストレスをかける。''Thomson's problem'' 誘電体上に荷電粒子がエネルギー最小状態で分布する時のパターン形成 と似たところがあるそうである。Thomson's problem については、英語の Wikipedia に詳しく書いてあった。粒子数、エネルギー、対称性、最小角度などの性質がある。誘電体が茎頂、荷電粒子が局在する場所が葉の発生する場所に相当する。

外衣内体構造の円錐では温度を下げていくのでエネルギー、エントロピーと関係しそうなのは納得しやすい。そのとき外殻と内部に膨張率の差によるストレスが生じる。 茎頂では別に温度が変わるわけではない。しかしやはり外衣と内体にストレスが生じるのではないか。しかしそれは測定できていないのではないか。細胞の形のような比較的測定しやすい情報から、「外衣と内体の間のストレス」というような測定しにくい量を導き出す方法が必要になる。昆虫の羽の細胞の研究で、そういう例があった。細胞の形から、それぞれの細胞の圧力を推定している。

生物学と物理学

ここで問題になるのは、生物学者が示している「オーキシンなどの拡散性物質が重要である」という知見と、物理学者の「エネルギー最小状態を取ろうとすることで葉序を説明できる」という知見が、どのように噛み合うのかということである。How a plant builds leaves.   Braybrook SA, Kuhlemeier C.   Plant Cell. 2010 Apr;22(4):1006-18. という Review の1012ページにも、そういうことが書いてある。

一つの考え方は、オーキシンなどの量や局在が、細胞にかかる物理的な力で制御されると言うものである。実際にそういう論文、報告が多数ある。 

Alignment between PIN1 polarity and microtubule orientation in the shoot apical meristem reveals a tight coupling between morphogenesis and auxin transport.   Heisler MG, Hamant O, Krupinski P, Uyttewaal M, Ohno C, Jonsson H, Traas J, Meyerowitz EM.   PLoS Biol. 2010 Oct 19;8(10):e1000516.   PMID: 20976043

セルロース合成阻害剤 イソキサベン を用いた実験を行っている。植物体全体をセルロース合成阻害剤を含む溶液に20時間浸し、洗浄した後に茎頂を毎日観察する。セルロース合成阻害剤によって細胞壁が弱体化する。それをメカニカルストレス(面積当たりにかかる力)の増加と解釈することができる。PIN1タンパク質の局在が変化する。

「生物の細胞が、物理的な力をどのように感知して、どのように応答、反応するのか。それがどのような重要な生物学的な物事につながるのか」 ということを研究したらいいのかもしれない。このことは以前から非常に重要視され、たくさんの研究成果がある問題である。

植物細胞では、細胞骨格だけでなく細胞壁も、細胞の力学的性質を決定する因子である。細胞壁が、オーキシンの efflux carrier である PIN2 の極性に影響を与えるという論文が発表された。

PIN2 の機能が失われると重力屈性がおきなくなる。PIN1 とは、細胞内での局在性が異なるので、PIN2変異体でPIN1を働かせても回復しない。その状態の植物に変異処理をして、重力屈性が回復した変異体を見いだした。 その原因遺伝子は、CesA3 だった。この遺伝子の変異はイソキサベンに耐性を持つことが知られている。今回見つけた変異体もそうだった。セルロース合成阻害剤を与えても、PIN1によるPIN2の回復が起きるようになった。セルロース合成が阻害されるとPIN1,2タンパク質の極性を持った配置が影響を受け、一様に分布するらしい。プロトプラスト化や原形質分離にも、同様な効果があった。セルロースと細胞の極性に深いつながりがある。

PIN Polarity Maintenance by the Cell Wall in Arabidopsis.   Feraru E, Feraru MI, Kleine-Vehn J, Martiniere A, Mouille G, Vanneste S, Vernhettes S, Runions J, Friml J.   Curr Biol. 2011 Feb 9. [Epub ahead of print]   PMID: 21315597


2011年6月9日の日経産業新聞に、東京理科大の遠藤博士らが、「表面座屈現象」を用い、微細な、規則的な構造を持った表面を思い通りに作ることに成功したという記事があった。   http://www.sut.ac.jp/news/news.php?20110609085542   遠藤博士らによる、わかりやすい解説が公開されている。   http://www.adcom-media.co.jp/pic/2011/08/25/2121/   引っ張るのではなく、ピンで押して三次元的に変形させ、その状態でプラズマ処理して、その後元に戻すそうである。すばらしい着想である。

「ゴム状素材を特定の方向に伸ばし、酸素プラズマで処理してからすこしずつゆっくりともとの形に戻すと、硬さの差によって縮んだときに模様ができます。」と書いてある。ゴムの板を用意し固定する。ピンを下面から押し込んで山頂、茎頂のように盛り上げる。プラズマで表面処理する。表面層だけがプラズマによって分子構造が変化し硬くなる。処理した後、伸ばしていたのをゆっくりと戻す。内部は変化していないので可逆的に元の状態に戻ろうとする。しかし表面層は伸びた状態から、完全に元に戻ることができない。表面層は内部よりも長さが長いままになる。その分、盛り上がって立体的な構造を取ろうとする。その構造に規則性が出てくる。

http://www.spsj.or.jp/koho/60N/60N_10.pdf   でも解説がされている。

「熱による体積の膨張率が異なる二種類の金属が外衣・内体構造を作る円錐を作って、適当な速度で温度を下げることで二つの層の間にストレスをかけると規則正しいパターン形成が起きる」という報告があったが、その場合も二つの性質が異なる層が密着して界面を形成している。温度変化によって両者の間にストレスがかかる。これも「表面座屈現象」と考えていいのかもしれない。円錐のような立体的な構造でなくても、二種類の性質が異なる平面が密着して、両者の温度感受性等が異なっていると両者間にストレスがかかる。「バイメタル」というものがあるが、熱膨張率が異なる2枚の金属板が貼り合わせてある。このばあいは単に曲がるだけである。曲がるのではなくて模様を作るようにするためには、立体的だったり層が極めて薄かったりしないといけないのだろう。

「表面座屈現象」は、生物の表層でも起きていて、表層によく出現するパターン形成に関与しているということも大いにあり得る。植物の組織は、水を十分に吸うと細胞が拡大し引き延ばされる。乾燥してくると縮む。ゴムを引き伸ばして縮めるのと似たことが起きているかもしれない。最外層と内部では、伸び方、縮み方が異なるだろう。そういうことによって、茎頂のL1層の細胞の大きさが、L2,L3の細胞の大きさと同期しなくなることがおきるだろう。そういうことが茎頂で起きるパターン形成に必要なのかもしれない。

遠藤博士らも、生物の組織に見られるパターン形成からヒントを得たらしい。   http://www.tus.ac.jp/news/news.php?20110523141810   「柔らかい物体と硬い物体とが密着している界面」が重要らしい。エクスパンシンを茎頂に与えると影響があるという報告があったが、こういうことで効くのかもしれない。

「表面座屈現象」が茎頂(ドーム、円錐状)の表面で起きることで、葉の形成にパターンができるという可能性が考えられる。 「表面座屈現象」の研究は、今後いろいろな分野で発展するかもしれない。

http://www.roisum.com/documents/T96Wrink.pdf   The Mechanics of Wrinkling

堅めのゴムで茎頂のような形をした shell 外郭構造をつくり、それにピンポン球のようなボールを入れていく。一杯になったら、更にもう一個中央に押し込む(細胞分裂による細胞の増加に相当する変化)。そうした模型を作ったときに、shell の形はどのように変化するのか。うまくやると、形の変化に規則性が出たりするのだろうか。あまりうまくそうなるようには思えない。 「表面座屈現象」を起こすようなモデルにしないといけないので、「ピンポン球を入れる」のではダメだろう。「温度感受性樹脂で茎頂のような形を作る」「その表面に何かを薄くコートする・または遠藤博士らのように、表面をプラズマで処理する」「温度を変えて、体積をわずかに小さく・大きくする」「そのときにうまく表面に、葉、花の付き方のような模様ができれば成功」ということになる。


葉序を表現する分数として2/5,3/8,5/13、・・・ と出てくる。 これらの分数を図形に対応させるものとして「星型多角形、分数多角形」というものが知られている。 植物形態との関連について解説されたページが見つかる。「整数の組み合わせで表される」ということは、整数でないと何らかの必要な条件(安定になるとか)を満たせないということを示唆する。電子の軌道、エネルギーでも整数が出てくる。電子の場合、整数の組み合わせで軌道とエネルギーが指定される。

多角形の外角の和は必ず360度になる。三角形なら120x3、四角形なら90x4、・・・ 2/5は、「2分の5角形」に対応する。これは外角が360÷(5/2) = 144度の図形として、頂点が5つある星形になる。 5回対称性に対応する。次は8回、その次は13回、・・・ということになる。


フィボナッチ数列、黄金比は物理学でもよく取り上げられる課題らしい。

Nature 464, 362-363 (18 March 2010) | doi:10.1038/464362a; Published online 17 March 2010   固体物理学: 磁石中の黄金比. (Title in English; ). Ian Affleck 黄金比が、磁性化合物中でも見つかった。

四面体を規則正しく最も高い密度で充填するという問題で、準結晶が出てくるという報告がなされた。    Nature 462, 7274 (Dec 2009)   Highlights: 材料:予想外の充填構造  準結晶は黄金比と関係がある。

準結晶に関して、シェル・コア構造が重要であることを示すすばらしい成果が発表された。

http://www.kindai.ac.jp/topics/2014/02/-3.html  「ネイチャーに掲載!理工学部理学科物理学コース教授 堂寺 知成らによる研究成果−結晶でも非晶質でもない第3の状態、「準結晶」ができる仕組みを発見」  近畿大学の研究グループによるすばらしい成果

「ビリヤード玉のような固い玉を芯(コア)としてその周りに柔らかいスポンジの皮(シェル)をつけたような物質を並べる」と、一定の条件下で準結晶の性質を持った配置が形成されるということらしい。この場合は、玉は二次元に配置されているらしい。茎頂のように3次元だと、計算するのが難しいのかもしれない。

茎頂の細胞群は高密度に配置されている。外層は、茎頂の立体的な形状を決定する。ドーム状になっていることが多い。その内部の層で細胞が分裂し拡大する。それによって、外層の内部に細胞が隙間なく高密度に充填された状態になる。

「タイル張り」の問題は隙間を作ってはいけない(平面を最大の密度で充填する)という制限、ルールがある。立体をできるだけ高い密度で充填するという問題と似ている。「立体の充填問題」に出てくる規則性が、茎頂の規則性と似ているのかもしれない。 または、曲がった平面(球や円錐の表面)におけるタイル張りの問題が、茎頂における葉序の問題と似ているのかもしれない。「球面のタイル張り」に関して、研究が行われている。http://www.math.sci.hiroshima-u.ac.jp/KOUKAI/text-h18/hiroshimadai06.pdf   タイル張りとトポロジー   松本 幸夫先生

Spontaneous Patterns in Disk Packings というタイトルで、解説(論文?)が公開されている。http://vismath5.tripod.com/lub/

境界で囲まれた空間に対する最密充填問題は、非常に難しいそうである。茎頂の場合は詰められるものが細胞である。立方体に近いと考えればよいだろうが、実際には各細胞が少しずつ異なる形をしていたりする。境界になるL1層, L2層は金属のように堅いわけでなく変形できる。

Nature 460, 7257 (Aug 2009)   Cover Story: プラトン立体を詰め込む:プラトン立体とアルキメデス立体の充填の問題を解く

「このような理想的な形状の場合ですら、問題は非常に難しく、・・・」と書いてある。


「隙間を作ってはいけない」というような制限があると、結果としてそれを満たすために様々な他の規則性が派生する・出てきやすいらしい。マイクロアレイデータでも、例えば「栄養制限状態」における発現変動では、栄養十分な状態での変動と比べて変動に規則性が強く出てくる、規則を発見しやすいということもあり得るかもしれない。それがどんな規則性かということは、「エネルギーを節約する方向:トレードオフが発生する方向」に動くことはもっともらしいだろう。それがどんな規則になるかは、データを見ていろいろと試してみないとわかりようがないのではないか。

トレードオフが発生するときは、「A に対して B」というように対になる組み合わせが生じる。細菌では栄養飢餓状態で細胞内の代謝が優先され細胞壁の合成が抑制される。細胞内と細胞表層(壁)が対になっている。私の植物を用いた研究 でも、ミトコンドリア関連変異によって同じようなことが示唆された。遺伝子発現でも、対になるもの(負の相関を示すもの?)を見つけるということにも意味があるのかもしれない(特に栄養枯渇などの制限がかかっている条件で)。制限がかかっていない状態ではそういう「ペア」は見つからなかったり意味がなかったりするかもしれない。


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