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メモ1 - ....

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***1. メモ1

しかし、植物のセルロース合成を阻害する物質が、動物の鼻の細胞に対して選択的な毒物として働いたりもするようなので、一概にそうとは言えない。

***2. メモ2

というように、一般的には思われているし、私もそう思っていたが、「松原ら、「最終兵器もお手上げーバンコマイシンおまえもか!」化学と生物、37(12):807−809」によれば、実際は、細胞壁合成阻止を示す抗生物質の殺菌活性は、細菌の持つ自己溶菌能(autolysis) に依存していて、細菌自らが抗生物質の作用を手助けしており、さもなくば抗生物質は効きにくくなり、菌は耐性を示すそうである。このことは、細菌も、自分の細胞壁の状態を調べるためのセンサーを持っていて、バンコマイシンやペニシリンで壁の状態がおかしくなると、それを感知して自己溶菌を開始することを示しているのかもしれない。バンコマイシン耐性変異遺伝子はセンサーキナーゼの変異で、そのリガンドは分泌されるペプチドらしい (Novak R, Molecular Cell 5:49-57 (2000))。このシステムは、植物の細胞壁センシングの仕組みを調べるのにも参考になるかもしれない。

このことについてはずっと忘れていたが、最近植物では、細胞壁合成阻害剤処理で PCD が引き起こされるという報告がされている。自己溶菌というのは、PCD と似ていなくもない。細胞表層がうまくできないときにPCDのような反応が起きるのは微生物や原核細胞にも共通しているのかもしれない(論文としては聞かないが)。

***3. メモ3

2003年植物学会での発表の要旨

セルロース合成阻害剤 (DCB) を含む培地でシロイヌナズナの芽生えを育てると、根の伸長が抑制され、根端が肥大する。我々は、DCB処理による形態変化が起こりにくい変異体 (css) を単離し、分析している。この形態変化が起こりにくい変異体は、セルロース合成、細胞表層の撹乱に対する応答機構、またはその両方に変化が生じていると考えられる。最近、DCB処理による形態変化は、高温では野生型でも起きにくくなることを見出した。css 変異体が示す形質も高温で強くなった。細胞が温度を検知する機構では、細胞膜などの生体膜が重要であることが知られている。また、セルロース合成は細胞膜に局在する合成複合体によって行なわれる。そこで css 変異体の芽生えから脂質成分を抽出し、野生型と比較した。css 変異体の芽生えは、貯蔵脂質の分解が抑えられていた。また、抽出物中の遊離脂肪酸含量が増加し、蛍光を発する異常な脂質が蓄積していた。セルロースの含量は野生型よりも低下し、デンプンは逆に増加した。これらの脂質、多糖の変化は、培地の糖の量が多いときに顕著に見られた。これらのことから、脂質成分の正常な代謝が妨げられることによって、生体膜が不安定化し、その結果DCBに対する感受性やセルロース合成が影響を受けることが示唆された。

(注:2003年にこの要旨を書いたときは脂質に注目していたが、実際の変異遺伝子は脂質に直接関わるものではなかった。脂質代謝の変化は基礎代謝の変動により間接的に起こるものだった)

2004年シロイヌナズナシンポジウム

シロイヌナズナの芽生えは、培地の炭素源、窒素源の量や比率に応じて、生育や
貯蔵脂質の代謝を制御している。セルロースなどの細胞壁構成成分は、細胞の生存
と伸長成長に必須であるだけでなく、栄養源の分配先としても主要な割合を占め、
栄養源シグナルと関連がある可能性が考えられる。しかし、デンプンや貯蔵脂質と
比較して、細胞壁成分の合成、代謝に対する栄養源シグナルの影響は不明な点が多
い。
我々は細胞表層を不安定化する処理(セルロース合成阻害剤処理、高温処理)に
対する感受性が変化した変異体を取得し、分析してきた。興味深いことに、この変
異体の芽生えは、培地の糖が多いときに細胞壁のセルロースの割合が大きく減少し
た。また、培地の糖を減らしたとき、多くしたときのどちらでも、芽生えの生育が
野生型よりも著しく悪くなり、糖感受性が高くなっていた。この変異体の示す性質
は、野生型の芽生えを低窒素培地で育成した際に見られるものと似ていたので、変
異体の窒素代謝を調べたところ、可溶性アミノ酸の代謝に異常がおきていることが
わかった。変異によって細胞内の実効的な C/N 比が高くなり、それが糖感受性だ
けでなく、セルロースの合成にも影響を与えているらしい。

(注:現在はすでに変異遺伝子を単離できている(下記の要旨、論文)。全く予想と異なる仕組み(予想の仕方が悪いのだけれど)を通じて、セルロースをはじめとする基礎的な様々な代謝に影響が及んでいた。)

2006年3月植物生理学会(つくば)の発表の要旨

At-nMat1a (グループIIイントロンのマチュレースと相同性のある核遺伝子)の変異はミトコンドリアNAD4のスプライシング異常と大幅な炭素代謝の変動を引き起こす

中川直樹、桜井直樹; 広島大・総合科学

細胞壁の主成分であるセルロースの合成は大量に栄養源を消費する植物独自の代謝である。大量のセルロース合成のために植物のミトコンドリアは細胞質、細胞膜での代謝と呼応して効率よい基礎炭素代謝を司る必要があると思われる。しかしミトコンドリア機能とセルロース合成の関連性を示した研究例は殆どなかった。 我々はセルロース合成機構を探るため、セルロース合成阻害剤による根端の形態変化がおきにくい変異体(css1) を単離し解析してきた。この変異体はセルロース合成阻害剤に対する応答性のみならず、アミノ酸代謝(アラニンの蓄積)、脂質代謝、糖感受性、セルロースとデンプンの蓄積量に変化が見られた。この変異体の原因遺伝子はAt-nMat1a (グループIIイントロンのマチュレース(mat-R)と相同性のある核遺伝子)と判明した。ミトコンドリアNAD4のスプライシングがこの変異体では異常であることもわかった。ショ糖合成酵素は細胞質で糖代謝に関わるだけでなく、細胞膜に結合しセルロース合成にも関与する重要な酵素である。我々の分析から、この変異体でのミトコンドリア機能の低下が何らかの経路を通じて細胞質に局在するショ糖合成酵素の割合を高め、それによりセルロースの蓄積量が減少することが示唆された。

&link2(この仕事が論文として掲載されました%%%http://pcp.oxfordjournals.org/cgi/reprint/pcj051?ijkey=bdCMzQI5Y8B2sDQ&keytype=ref)

***4.メモ4

私も、「細胞壁合成から見た植物の形態形成」という方向で研究を進めたいと思っているが、それにはまだ至っていない。





















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