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ICAR2010 -

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2010年に横浜で開かれた 21th International Conference on Arabidopsis Research に関するメモ、それから考えたことについて 
**気がついたこと

・ 細胞内の仕組みは、どんなものでも非常に複雑 complicated であることがほとんどである。多くの講演者がそれに言及していた。それに対応するものとして「ネットワーク」という考え方がかなり導入されていた。様々な方法で、ある物事に関連している分子を網羅的にリストアップする。それら同士が、どう関係しているか(簡単に言えば促進、抑制のどちらか どの方向に変動するか 理屈的には微分方程式に書き直すことができるが、そんなに定量的な関係をはっきりさせることは難しい)を決定する。それをネットワーク図のようにまとめる。分子の数は10〜20くらいのようだった。あまり多いと分析しにくくなるだろう。

Science誌に、創薬研究でもネットワークが重視されていることが紹介されていた。

''新たな創薬標的を同定するためのネットワークに基づくツール''   Network-Based Tools for the Identification of Novel Drug Targets   Illés J. Farkasなど   「ここ数年、創薬のための新たな分子標的の同定において、ネットワークに基づくツールがますます重要になってきている」と書いてある。多数の遺伝子、標的分子を蓄積されたデータに従って複数のモジュールに分ける。それらのモジュールで重複している部分に含まれる分子は特に標的として重要である可能性が高いらしい。また、一つの標的だけでなく複数の標的を同時に阻害する薬剤の方が効きやすいらしい。特異性をあまり高めても意味がないらしい。   http://www.cosmobio.co.jp/aaas_signal/archive/pr_20110517.asp 2011年5月


ネットワークになっているシステムでは、原因と結果がはっきりしなくなる。原因、結果を決めようとするのではなく、ネットワークの挙動に対して影響力が高い分子、過程は何かと言うことを決めることが目標となるらしい。


ネットワーク図ができると、「ある因子の変化、欠失が、ネットワークの他の因子にどのような影響を及ぼすか」を予測できるようになる。式を連立させたモデルを作ることができる。さらには人工的なネットワークの改変、デザインも可能になる(はず)。生物時計に関して、そのような研究発表がされていた。植物の生物時計は多くの因子が複雑に関係しているので、そういう研究手法がとても有効だろう。茎頂についても、そういう発表があった。

http://eglab.osu.edu/projects/networks   ''Erich Grotewold'' 研究室の研究紹介

Siegal-Gaskins et al.(2011). Emergence of switch-like behavior in a large family of simple biochemical networks. PLoS Comput Biol 7(5): e1002039 pp.

Siegal-Gaskins et al.(2009). The capacity for multistability in small gene regulatory networks. BMC Syst Biol 3: 96 pp.

''Gene Regulatory Networks (GRN)'' という考え方は今では一般的になっていて、WikiPedia にも項目ができている。   https://en.wikipedia.org/wiki/Gene_regulatory_network



Sci. Signal., 31 May 2011 Vol. 4, Issue 175, p. ra35 [DOI: 10.1126/scisignal.2001390]   複雑なシグナル伝達ネットワークを代表的カーネルに縮約する   Reduction of Complex Signaling Networks to a Representative Kernel
   Jeong-Rae Kim など   http://www.cosmobio.co.jp/aaas_signal/archive/ra_20110531_1.asp   という論文があった。複雑なものをネットワークで表現し、さらに縮約するという手法が定石になるのかもしれない。多変量解析はデータの縮約によく使われる。そういうことを勉強しておいて損はないだろう。

タンパク質同士が形成する反応ネットワークの構造が、刺激に対する頑健性 robustness に関わっているという論文が既に発表されている。   ''Structural Sources of Robustness in Biochemical Reaction Networks''  Science 12 March 2010: Vol. 327. no. 5971, pp. 1389 - 1391      Guy Shinar1 and Martin Feinberg2,*    人工的な細胞内ネットワークの改変、デザインによって、ストレス、病害による細胞内反応の不適切な変動を抑制することが可能になるのかもしれない。

病原抵抗性シグナルの伝達経路についても、Katagiri 博士によって、そういう発表があった。シグナル伝達の仕組みをブラックボックスと考える。箱を破壊せずに、その中身について情報を得るには、軽く叩いたり揺らしたりしてみる (perturbation 摂動を与えて反応を見る)ことが有効である。それに相当するものとして、変異体を用いる。22個の変異体を使っていた。反応を見るために、「スモールアレイ」を使っていた。その方が安上がりで良いらしい。

''A high-performance, small-scale microarray for expression profiling of many samples in Arabidopsis-pathogen studies.''   Sato M, Mitra RM, Coller J, Wang D, Spivey NW, Dewdney J, Denoux C, Glazebrook J, Katagiri F.   Plant J. 2007 Feb;49(3):565-77. Epub 2006 Dec 20.   PMID: 17181774 

変異体を行、フェノタイプまたは発現変化を列にしてマトリックスとしてデータをそろえる。それぞれの変異体が示すフェノタイプ、発現変化の相似性(相関)を元にネットワークを描画する。22個の変異体(遺伝子)を結んだネットワーク図を得ることができる。
シグナルの流れは、得られたネットワークにおいて一番流れやすいように(最小コストフロー?)になるように伝わっていくらしい。

''Network properties of robust immunity in plants.''   Tsuda K, Sato M, Stoddard T, Glazebrook J, Katagiri F.   PLoS Genet. 2009 Dec;5(12):e1000772. Epub 2009 Dec 11.   PMID: 20011122 

''Topology of the network integrating salicylate and jasmonate signal transduction derived from global expression phenotyping.''   Glazebrook J, Chen W, Estes B, Chang HS, Nawrath C, Métraux JP, Zhu T, Katagiri F.   Plant J. 2003 Apr;34(2):217-28.   PMID: 12694596 

・ シロイヌナズナで得られた成果を、他の作物に生かす研究が進んでいた。

・ Systems Biology が様々な分野に対して適用されていた。大量に得られたデータを分析する方法は重要になる。マイクロアレイのデータに、独立成分分析 (ICA) を適用することでクラスタリングができ、今まで見いだせなかった遺伝子の重要性を見いだしたという話があった。独立成分分析は、よく時系列のデータの解析に使われている。アレイのデータも、時系列でたくさんデータをとったのかもしれない。

とそのときは思ったが、そうではなくて「統計的に独立かどうかを指標とした分析手法」を開発したと言うことかもしれない。相関係数が低くても独立ではないというような、遺伝子の関係が見いだせるのかもしれない。相関係数が高くなるには、データの全体に線形な関係がないといけない(データ全体にわたる大規模な構造)。データのごく一部分にだけ強い関係があったとしても、それだけでは相関係数は高くなりにくい。そういう場合でも、独立性を指標とすると相関係数では検出しにくい関連性を検出できるということを書いた文書があった。

''Two Glycosyltransferases Involved in Anthocyanin Modification Delineated by Transcriptome Independent Component Analysis in Arabidopsis thaliana.''   Yonekura-Sakakibara K, Fukushima A, Nakabayashi R, Hanada K, Matsuda F, ugawara S, Inoue E, Kuromori T, Ito T, Shinozaki K, Wangwattana B, Yamazaki M, Saito K.   Plant J. 2011 Sep 7. doi: 10.1111/j.1365-313X.2011.04779.x. [Epub ahead of print]   PMID: 21899608

「Multiplatform なデータの統合 (unify)」に、sparse な PLS を使ったという話があった。PLS は有名だが、「sparse な」というのはどういうものかはわからない。データが疎(sparse)な時に計算が速くなったりする方法なのだろう。
**細かいこと

データベース 1001ゲノム http://1001genomes.org/   http://www.annoj.org/   http://crep.ncpgr.cn/   http://www.yieldbooster.org/  

しおれアッセイ(乾燥耐性評価) 葉を葉柄をつけて切り取る。(水を少し入れた?)チューブに立てる。 何時間でしおれるか、経時的に観察する。

08020  Nakayama, Kuhlemeier 両博士   PIN1 がメンブレンに局在するようになるかどうかは、細胞膜にかかる張力によって影響を受ける(茎頂での話) 高張液で処理すると内在化してしまう 低浸透圧で処理すると細胞膜に局在しやすくなる PIN1はefflux carrier 

08070  Fleming のグループ 茎頂とエクスパンシンの研究 08020 と合わせると、エクスパンシンと PIN1 に茎頂で関係が出てくることになる。



**私はどうするか