「サイエンス・スタディーズ演習」レポート
国際資本「テルン」が日本で展開している製薬会社テルンジャパンの埼玉総合研究所第三号棟というところの研究プラントからLHV(通称レフトハンドウイルス)が漏れたという事故が起きた。その事故によりその三号棟は完全封鎖された。その事故直後にそこの主任であった影山智博が研究活動の続行を強制要求した。さもなければ致死率100%のLHVを外へ垂れ流すと脅した・・・
・ 物語に登場するマッドサイエンティストたち
というわけで、この小説の主たるマッドサイエンティストである「影山智博」という人物が登場するとからから始まります。この人物は、先の背景にもあるとおり研究活動のためだけにこの三号棟をのっとった張本人なのであります。そして、三号棟に起こったバイオハザードによってLHVに感染もしていて、今はこれまでの実験により生成された「カクテル」という薬によってこの進行を抑えているという状態です。影山は、最初のほうでは、そのLHVの実験を豚や猿で行っていました。しかし、それでは物足りなくなり、生きた人(三号棟の研究員の生き残り、LHVに感染しており「カクテル」を使用している)でz件をした。しかし、「カクテル」を使っている感染者から取れる実験データは数値が正確でなくなってしまうらしく、LHVに感染していて「カクテル」の使用のない感染モデル(被験者のこと)がほしくて、(といても直接感染させるわけじゃなくて、その人の皮膚細胞を培養してそれに感染させてデータを取るというものだけど)それも外に要求してそのきた被験者二名にて実験するとこなどマッドサイエンティスト的なものをだしていますが、とてもこの三号棟をのっとったりするようには見えない穏やかな表情をしている人物でした。
しかし、物語がすすんで故意ではなかったのですが、彼は感染モデルをLHVに感染させてしまいました。それから彼はそのモデルを狂ったように研究していきました。しかも「カクテル」の投与なしに。しかし、「カクテル」の投与をしないのは(もともとカクテルはLHVを封じ込めるわけでなくその発症をおくらせるというものだったのですが)それが完璧ではないからということで使ってないといっています。確かに副作用で死んでしまったり、使っていてもLHVが発症してしまうかもしれないが、何もしないのはどうか・・・。もしかしたら「カクテル」投与のない生の被験者がほしくてこうしたかもと考えられるし、そのため故意にLHVに感染させたとも捉えることができます。そのことに苦悩して彼はどんどん狂っていきました。
いったんここで影山智弘の話は終わりにしてこの小説に出てくるマッドサイエンティストのキーとなる科学者の残り二人について検証してみます。そのうちの一人は津山正太郎という厚生省から三号棟の調査に当てられた学術調査員です。彼は、影山と比べると彼のほうがより純粋に知識のみに固執したマッドサイエンティストと言えます。彼は、初め三号棟に入り感染モデルの調査だったがそんなことはどうでもいいらしくてLHVの研究というものにのみ興味を持ってきた。そして、影山からいろいろなLHVに関する情報を見たり聞きだしたりすることでそれに関する興味をだんだん募らせていった。そしてついには自衛隊が三号棟に強行突破してLHVの殲滅を行おうとするときに影山のように三号棟乗っ取り作戦を実行しようとするにいたった。その理由としては、影山のそれはLHVに対する純粋な知識欲ではなく、テルンジャパンへの対抗としてその乗っ取り作戦と研究続行を提示したのだが(詳しい説明は三人目と一緒に)、津山のそれはただLHVへの純粋なる知識欲によるものであるからよりマッドに近いといえるのです。
三人目のマッドサイエンティスト飯田俊一は影山とともにLHVを作り出した張本人なのです。物語の最初のほうにはLHVはいかにも自然のどこかからか採取されたもののように描かれていましたが実は、テルンジャパンの埼玉総合研究所第三号棟にて生成されたものだったのです。そのいきさつとは実に怖いものでなにもそこが細菌兵器の開発専門というのではなくてもともとはスキンケアの商品開発プラントだったのです。そこに飯田が持ち出した人工のウイルスを用いて人の体内のDNAを操作し肌の管理から先天的な病気を治すまでさまざまなことをウイルスによるDNA操作によって実現させるという案が出されたことにより始まったのです。しかも、そのウイルスは影山がテルンジャパンのロゴマークを入れているのであった。しかしここで飯田はなぜマッドサイエンティストと捉えたのかというと、私自身遺伝子とかDNAなるものはそれが操作されると生態系が大きく変わるかもしれない禁断の科学だと思うのです。それを自在に操るなんて狂った考えだとおもうのですから私的見解により入れさしてもらいました。
そして、話は影山に戻るのですが、もともと上記のような目的でウイルスの研究をしていたのですが順調にできていると思っていたものが実はLHVだったのです。スキンケアのためのウイルスの実験をしていると思っていた研究員はいきなりある日に実験に使用していたサルの左腕が取れて襲ってくるなど思いもしないことに遭遇し動転して三号棟全体にウイルスを撒き散らし封鎖にいたったのです。しかし、この失敗作はとんでもない爆弾でその一粒一粒にテルンジャパンのロゴが入っているというわけです。こんなものを作っていたとあっては会社は一大事ですから絶対に菌の抹殺を考えるわけです。その考えが影山もわかったため三号棟乗っ取りということにいたったわけです。それから影山はマッドサイエンティストの道を歩んでいったのです。
しかし、結局は会社の上の思惑のとおりに自衛隊の突入作戦が実行されLHVはすべて焼き払われることになりました。あまり納得はいかないけどマッドサイエンティストは屈服される形でこの物語のだいたいの幕は閉じられました。
・この話を読んでの考察
というわけだったのですが、私がこの話全体をとおしていえることは、一番初めに述べたのですがひとつは科学に対する脅威です。それは、この話に出てきたLHVはもともとスキンケアのためにDNAの操作のため異例ではあるけどウイルスを使ってどうにかするという過程の失敗作として登場したのです。いままでのものは故意に細菌兵器や化学兵器を作ったりして地球征服というものが多かった中、今回のものは故意ではなく偶然の産物により仕方なくそういう方向に行かないといけない、というような状況下にあった物語です。これは、科学というものは時には人間のコントロールの域を超えて存在するもので気をつけて常に用心しておけ。などというようなメッセージが取れなくもないのではと思いました。
それと、マッドサイエンティストはなにも最初から狂っていたのではなく、こうした極限下において追い詰められたりしてもなるもので、科学者というものは常にマッドと正常も間をゆれていて一歩間違えるとマッドサイエンティストになってしまう可能性を秘めているのではないかと思います。