未破裂脳動脈瘤

 

 脳動脈瘤とは血管と血管の分岐部にできたコブ(瘤)のようなものです。破れた瘤が破裂脳動脈瘤であり、破れていない瘤(破れる前にみつかったもの)が未破裂脳動脈瘤です(図1)。

一般的に未破裂脳動脈瘤があることによってなんらかの症状を呈することはありません。すなわち頭痛やめまいなどでの検査(CT, MRI)や脳ドックによって発見された場合は、全くの偶然に破裂していない脳動脈瘤が発見されたことになります。なお脳ドックでは正常な方の約6%に、親兄弟にクモ膜下出血の方がいるかたでは 16%に未破裂脳動脈瘤が発見され、かなり多くの方に未破裂脳動脈瘤はあります。

 現段階で、未破裂脳動脈瘤の破裂する正確な率は不明です。これまで世界中から報告された年間破裂率は約1%です。これは、たとえば平均余命が約30年である50歳の日本人男性に未破裂動脈瘤が見つかった場合、今後破裂する確率は約30%ですが、逆に70%は破裂しない確率ということになります。なお脳動脈瘤が破れて出血すれば、クモ膜下出血という病気を発生します。いったんクモ膜下出血になってしまうと、約30%が社会復帰可能となる程度であり、50%以上の方が死亡するか高度の後遺障害を残します。

 未破裂脳動脈瘤に対する対応ですが、外科的処置を行う方法と定期的に検査(CT, MRI)を行って経過を観察する方法があります。外科的処置は今後、未破裂脳動脈瘤が破裂し、クモ膜下出血になるのを未然に防ぐことが目的です。なお脳ドック学会は、70歳以下の方で5mm以上の脳動脈瘤が手術適応とのガイドラインを出しております。また脳動脈瘤の形がいびつなものや大きいものは破裂しやすいと言われています。

 

未破裂脳動脈瘤に対する外科的処置(図2−4)

 

○開頭手術(図2・3):従来からの方法。開頭手術を行って動脈瘤を、クリップという洗濯ばさみのようなもので外からはさんだり、特殊な布で包んだりします。

○血管内手術(図2・4):最近、保険認可された方法。血管の中にカテーテルという管を通し、その管を介して白金のコイルを動脈瘤内に入れて内から閉塞します。

 脳動脈瘤の大きさ・形は、患者様により十人十色です。開頭手術に適した動脈瘤、血管内手術に適した動脈瘤、どちらの方法でも治療可能もしくは治療困難な動脈瘤があります。どの方法が最も適しているかを十分に検討したうえで、患者様とご家族に呈示させていただきご希望に沿えるよう心がけています。

 

 

広島大学脳神経外科の未破裂脳動脈瘤に対する手術成績

○ 開頭手術

 過去10年間(1995年から2004年8月まで)に95例(男37人,女58人)の方の未破裂脳動脈瘤を手術しました。年齢は34歳から78歳(平均57歳)で 110個の脳動脈瘤を処置しました。2個以上の動脈瘤を持たれる方は19例いました。

 後遺症については、術後6ヶ月経過した時点で、4例 (4.2%)の方に後遺症が残りました。1例が嗅覚消失、1例が一側の眼の失明、1例が一側の眼の視野障害、1例が記銘力低下です。なお死亡した方や半身不随になった方はいらっしゃいません。これまでの世界中の報告では,後遺症出現率5%,死亡率1%といわれています。

【広島大学脳神経外科の未破裂脳動脈瘤に対する開頭手術成績一覧表】

 年

患者数

動脈瘤数

 合併症

1995

2

3

 0

1996

7

8

 0

1997

10

12

 1(嗅覚脱失)

1998

16

18

 1(失明)

1999

11

14

 1(視野障害)

2000

6

6

 1(記銘力低下)

2001

8

8

 0

2002

8

9

 0

2003

20

24

 0

2004

7

8

 0

 計

95

110

 4

 

○ 血管内手術

 過去7年間(脳動脈瘤用のGDCコイルが使用可能となった1998年から2004年8月まで)に40例(男10人,女30人)の方の未破裂脳動脈瘤を手術しました。年齢は38歳から73歳(平均63歳)で41個の脳動脈瘤を処置しました。

 合併症については、術後6ヶ月経過した時点で、1例 (2.5%)の方のみに記銘力低下が後遺症として残りました。なお死亡した方はいらっしゃいません。これまでの世界中の報告では,合併症出現率5-10%,死亡率1-4%といわれています。

【広島大学脳神経外科の未破裂脳動脈瘤に対する血管内手術成績一覧表】 

 年

患者数

動脈瘤数

 合併症

1998

4

4

 1(記銘力低下)

1999

3

3

 0

2000

6

6

 0

2001

5

5

 0

2002

9

9

 0

2003

6

7

 0

2004

7

7

 0

 計

40

41

 1

 

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