肥満や糖尿病など生活習慣病の発症に関わる生体内因子の探索をすることで,食品因子の新たな機能性を提案したいと考えています


1)肥満などの生活習慣病の発症の謎を解くために、発症や病態進行に関わる新しい分子の探索を行います


肥満とは白色脂肪組織の重量の増大を指しますが、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の基礎疾患としてとても重要な意味を持ちます。脂肪組織の増大では、脂肪組織を構成する一つ一つの脂肪細胞がエネルギーの蓄積により肥大してサイズが大きくなります。一方、今まで、脂肪細胞数は幼少期に限って増加し、成人になると増加しないと考えられていましたが、最近の研究では肥満によって脂肪細胞の数が増加することが明らかになりつつあります。




研究室では、脂肪細胞の肥大や増殖に関わる研究を行うことで、脂肪細胞の肥大や増殖を予防する新しい食品素材などを見出すことを研究目標としています。
さらに、下図の矢印に示されるように、肥満を呈した白色脂肪組織では多数の炎症反応に関わる血球の細胞が侵入して脂肪組織の中で蓄積しており、肥満の脂肪組織では慢性的な炎症を起こしていると考えられていますが、この慢性炎症こそが、先の糖尿病などの他疾病の発症と密接に関係します。
 そのような、脂肪細胞の慢性炎症の観点から、肥満発症のカギとなる因子を探索し、抗炎症性の食品素材の機能性の評価などに応用したいと考えています。




培養脂肪細胞も研究に利用されます。下は広く用いられているマウスの白色脂肪組織由来の脂肪細胞です。特殊な培養液で培養することで、細胞の中に中性脂肪の蓄積(脂肪滴の形成)が著しく進みます。



培養したマウス脂肪細胞の脂肪蓄積の様子
(赤色が脂肪滴の表面に存在するタンパク質、緑色が細胞核を示します)



2)リン脂質の代謝に関わる新しい酵素を先駆けて発見し、生理的意義の解明を通して、疾病発症のメカニズムを探ります

ホスファチジルコリンやホスファチジルイノシトールは主要な膜成分であるとともに食品素材としても利用されています。これらの二つの脂肪酸が切断されたグリセロホスホコリンやグリセロイノシトールは細胞分化や細胞増殖などに深く関わる水溶性のシグナル伝達物質として注目されています。私たちが見出した酵素群(glycerophosphodiester phosphodiesterase, GDE)は、そのシグナル伝達物質の分解を担っており、その細胞内の濃度を綿密に調節する重要な働きをもっていると考えています。現在では、ヒトゲノム情報から仮想にスクリーニングすることによって7種類の酵素遺伝子の存在を明らかにしています。



 今までの研究で、骨格筋特異的過剰発現マウス(GDE5Tg)の樹立に成功し、外観上は変化は認められませんが、速筋型筋肉(大腿筋など)の著しい萎縮を引き起こすことや、GDE5が筋細胞の細胞分化において重要な役割を担うことを明らかにしています(下図)。
 これら因子を、骨格筋の病変の鍵分子として捉えるだけでなく、作製した遺伝子改変マウスを新しい筋肉萎縮を持った病気の動物モデルとして利用できます。通常なら一年以上かかる筋肉の委縮が、このマウスでは10週ほどで起こります。例えば、老化や病気による寝たきりなどによって引き起こされる筋肉萎縮の予防を目指した食環境や食品因子の発掘に応用したいと考えています。







培養したマウス筋細胞の筋管形成の様子
(赤色が筋管、青色が細胞核を示します)


最近、思うこと

(ちょっと前に思ったこと)