ペスタロッチー関係文献リスト


主な著作紹介
日本語で読める著作・研究書
ペスタロッチー・フレーベル事典


主な著作紹介

『隠者の夕暮』
 『隠者の夕暮』はペスタロッチーの処女作ともいえる本です。 この本の冒頭で「玉座にあっても木の葉の屋根の伏屋に住んでいても 同じ人間、その本質における人間、人間とはいったい何であるか」と 問いをなげかけています。これは、王様も貧しい人もみんな同じ人間だと いうときの人間、人間とはそもそもどういうものなんだろう、という 意味です。ペスタロッチーは人間は何を求めるものなのか、どういう ときに安らぎを感じるものなのかを明らかにし、、人間にふさわしい 教育をおこないたいと考えたのです。


『リーンハルトとゲルトルート』
 ペスタロッチーを一躍有名にした本です。当時のベストセラーになった 小説です。形式は恋愛小説ですが、この本のなかで子どもの教育にとって 大切なことがらが、家庭教育、学校教育に関して書かれています。 読みやすいのでおすすめです。『ペスタロッチー全集』の2巻と3巻に はいっています。


『立法と嬰児殺し』
 現在でも乳幼児を自分の手で殺してしまう若い母親がいますが、 ペスタロッチーの時代にも幼い少女が生まれたばかりのわが子を殺す 事件がおき、世間の人々はその母親をひどい母親だと非難しました。 しかしペスタロッチーは、かわいいわが子を殺してしまうのは、母親が ひどい人間だからではなく、わが子を育てられないことへの絶望からだと 考えました。相手の男性への絶望、自分の家族への絶望が子殺しへと 向かわせるのだと考えたのです。だから大切なことは、刑罰を重くする のではなく、母親がひとりでもわが子を育てられるように乳児院を設置し たり、罪を犯した母親がわが身を反省し、服役後は社会復帰できるように 自立を支援することだと主張しました。この考え方は「教育刑」という 考え方であり、今日にも生きています。


『シュタンツ便り』
 ペスタロッチーが最初に教育実践をおこなったときの様子について 書かれている本です。手紙形式なので読みやすい本です。一番おすすめ です。ペスタロッチーがはじめてうけもった子どもたちは、年齢が ふぞろいな80人の孤児たちでした。盗みや乞食をして何とか生きている 子どももいました。そうした子どもたちとの苦闘の末に、ペスタロッチー と子どもたちが家族のようにうちとけあい、すばらしい関係をつくり あげました。感動的な本です。


『ゲルトルート児童教育法』
 世界で最初の体系的な教授学の本といわれています。内容は、 知的教育、身体的教育ならびに道徳的教育の内容と方法から構成されて います。前半部分に、ペスタロッチーがなぜ学校を作ろうと思ったのか、 またそのためにどれほど苦労を味わったかなど、自伝的に書かれた部分 があり、創始者の苦労が忍ばれます。第13信、第14信は母親と 子どもとの関係をとりあつかったところですが、その美しい描写は 幼児期の子どもにとっての母親の大切さを訴えるものとして胸を うちます。


『幼児教育の書簡』
 ペスタロッチーが幼児教育について書いた唯一の体系的な本です。 この本のなかで彼は学校教育を改善しようとするものは、まず家庭から、 とりわけ母親の教育からはじめなければならないと述べています。 母親の幼児への愛は本能的なものではなく、思慮深いものでなくては ならないと考えたペスタロッチーは女子教育の必要性を訴えています。 また幼児教育の内容として絵画や音楽の重要性も示すなど先駆的な 内容は含まれています。


『白鳥の歌』
 ペスタロッチーの最期の著作です。白鳥は死ぬ前に一声高く鳴くと いう西洋の伝説にもとづいて命名されました。教育論と自伝とで 構成されています。教育論の方では、人間の教育は知的教育、身体教育 ならびに道徳・宗教教育から構成されるが、それらは調和的に発達 させられねばならないと主張しています。自伝では、苦難にもかかわらず 楽観的に歩んできた彼の生涯がつづられています。ペスタロッチーが どんな人か知りたい人は、この本を読んでみるとよいでしょう。



日本語で読める著作・研究書

ペスタロッチーの本の日本語訳

『ペスタロッチ全集』全 6巻 (世界教育宝典全集),玉川大学出版部,1949-69年.
長田新編『ペスタロッチー全集』全13巻, 平凡社,1959-1960年.
福島政雄訳『隠者の夕暮』福村書店,1952 年.
長田新訳『隠者の夕暮・シュタンツだより』岩波書店,1954 年.
梅根悟訳『政治と教育』明治図書出版,1965 年.
松田義哲訳『ペスタロッチー スイス週報』理想社,1968 年.
長尾十三二・福田弘訳『ゲルトルート児童教育法』明治図書出版,1976 年.
長尾十三二他訳『シュタンツ便り他』明治図書出版,1980 年.
田口仁久訳『ペスタロッチ 幼児教育の書簡』玉川大学出版部,1983 年.
前原寿・石橋哲成訳『ゲルトルート教育法・シュタンツ便り』玉川大学出版部,1987 年.
東岸克好・米山弘訳『隠者の夕暮・白鳥の歌・基礎陶冶の理念』玉川大学出版部,1989 年.

ペスタロッチーについての研究書(日本語訳)

ドゥ・ガン著,
新堀通也訳
『ペスタロッチ伝』 学芸図書,1955 年.
T.リット著,
杉谷雅文・柴谷久雄訳
『生けるペスタロッチー』 理想社,1961 年.
H.バルト著,
杉谷雅文・柴谷久雄訳
『ペスタロッチ研究 ──教育・政治・経済・
道徳の関連』
明治図書出版,1962 年.
E.シュプランガー著,
吉本均訳
『教育の思考形式』 明治図書, 1962年.
L.W.ザイファルト著,
市村秀志訳
『ペスタロッチにふさわしき妻アンナ』 玉川大学出版部,1969 年.
K.ジルバー著,
松田義哲訳
『ペスタロッチー ─人とその事業』 ぎょうせい,1977 年.
O.ボルデマン著,
松田義哲訳
『ペスタロッチー』 明治図書出版,1980 年.
K.ジルバー著,
前原寿訳
『ペスタロッチー』 岩波書店, 1981年.
M.リートケ著,
長尾十三二・福田弘訳
『ペスタロッチ』 理想社,1985 年.
H.ロート著,
川村覚昭・下山田裕彦訳
『ペスタロッチの人間像』 玉川大学出版部,1991 年.
トレーラー,D. 著,
乙訓稔訳
『ペスタロッチの哲学と教育学』 東信堂,1992 年.
ハーゲル,F-P. 著,
乙訓稔訳
『ペスタロッチーとルソー』 東信堂,1994 年.
クラフキー,W. 著,
森川直訳
『ペスタロッチーのシュタンツだより』 東信堂,1997 年.

日本でのペスタロッチーに関する研究書

長田新『ペスタロッチーに還れ』1947年.
福島政雄『ペスタロッチー小伝』福村書店,1946 年.
福島政雄『ペスタロッチ』福村書店,1947 年.
小西重直『新日本建設とペスタロッチー』西萩書店,1947 年.
岩崎喜一『ペスタロッチ研究』大日本雄弁会講談社,1947 年.
玖村敏雄『ペスタロッチの生涯』玉川大学出版部,1948 年.
長田新『宗教と教育』福村書店,1949 年.
森徳治『ペスタロッチからデューイへ』刀院書院,1950 年.
長田新『ペスタロッチー伝』( 上下巻) 岩波書店,1951-52年.
長田新『ペスタロッチー』牧書店,1956 年.
福島政雄『ペスタロッチの社会観』福村書店,1956 年.
坂東藤太郎『新教育とペスタロッチー運動』光風出版,1956 年.
佐藤守『国民教育の理論と実践──ペスタロッチー教育学の研究』理想社,1958 年.
岩崎喜一『ペスタロッチの人間の哲学』牧書店,1959 年.
坂東藤太郎『ペスタロッチーの道徳・宗教教育の研究』協同出版, 1962年.
坂東藤太郎『ペスタロッチー運動の発展』協同出版,1964 年.
松田義哲『ペスタロッチーの教育思想』協同出版,1966 年.
田口孝雄『ペスタロッチーの社会観と教育思想』国際教育研究所,1967 年.
稲富栄次郎『ペスタロッチの生涯と思想』福村出版,1971 年.
長尾十三二『ペスタロッチ「ゲルトルート」入門』明治図書出版,1972 年・
伊藤忠好『ペスタロッチの教育思想』福村出版,1973?年.
松田義哲『ペスタロッチーの教育方法論』理想社,1973 年.
恩賀一男『ペスタロッチの宗教と教育』黎明書房,1978 年.
東岸克好『ペスタロッチの直観教育思想の研究』建帛社, 1980年.
片山忠次『ペスタロッチ幼児教育思想の研究』法律文化社, 1984年.
村井実『ペスタロッチーとその時代』玉川大学出版部,1986 年.
虎竹正之『ペスタロッチー研究 ─職業教育と人間教育』玉川大学出版部,1990 年.
長尾十三二, 福田弘『ペスタロッチ』清水書院,1991 年.
村井実『いま, ペスタロッチーを読む』玉川大学出版部,1991 年.
鈴木由美子『ペスタロッチー教育学の研究 ──幼児教育思想の成立』
玉川大学出版部,1992 年.
森川直『ペスタロッチー教育思想の研究』福村出版,1993 年.
関口博子『ペスタロッチと音楽教育』民衆社,1997年.

ペスタロッチー・フレーベル事典


日本ペスタロッチー・フレーベル学会編『ペスタロッチー・フレーベル 事典』増補改訂版(玉川大学出版部,2006年)

また専門的なご関心のある方は、石橋哲成・清水徹編「日本におけるペス タロッチー研究文献目録」(教育哲学会『教育哲学研究』第76号,1997年) をご参照ください。


(以上の文献は、『ペスタロッチー・フレーベル事典』の文献リスト から作成しました。1945年以降のものに限定しています。 )


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