光機能化学(学部三・四年生対象)

講義内容:
化学の研究にたずさわる皆に共通するキーワードは何だろうか。それは「物質」といえる。では物質の状態とは,どのように分類されるか。小さな例外を除けば,物質は全て気相・液相・固相の3つの「相」に分類される。これを物質の3態と呼ぶ。本講義では,化学全般に共通する気体・液体・固体の性質(以下,物性)を学ぶ。その他にも,「第4の相」と呼ばれる興味深い状態・物質についても少し触れたい。
さて話は変わるが,我々人類は固体・気体・液体の新たな「物性」を発見し,それを「機能」として利用し生活を豊かにしてきた。本講義では,講義名にもあるように「光」に関する固体・気体・液体の物性や機能を交え紹介してゆく。講義内容は物理化学と少しの物理である。物理化学や物理の講義は数式を使うことが少なくない。この講義では数学的理解のほか,背景に潜む「フィジックス」の直感的理解と物理的センスを養うことも同時に大切にする。

1. イントロダクション:物質の三態,光とは,色とは(吸収,散乱,発光)

2. 固体I:固体の種類,結晶の種類,結晶構造,ミラー指数
テキスト:ボール物理化学21章

3. 固体II(ボール物化21章):X線回折と消滅則
テキスト:ボール物理化学21章

4. 固体III:金属(自由電子気体モデル,Fermi-Dirac分布,プラズマ振動,金属の反射と色)
参考書:キッテル固体物理学6章

5. 固体IV:半導体(バンド構造,P型・N型半導体,PN接合,LED,太陽電池)
参考書:アトキンス物理化学14章,キッテル固体物理学7章 6. 気体I:理想気体(状態方程式,Maxwell-Boltzmann分布,平均自由行程,衝突頻度)
テキスト:ボール物理化学19章

6. 気体I:理想気体(状態方程式,Maxwell-Boltzmann分布,平均自由行程,衝突頻度)
テキスト:ボール物理化学19章

7. 気体II:実在気体(van der Waals方程式,ビリアル方程式,対応状態の原理,超臨界流体)
テキスト:マッカリーサイモン物理化学16章 (参考:ボール物理化学1章)

8. 気体から液体へ:液化(分子の凝縮,分子間ポテンシャルと状態方程式,分子間力)
テキスト:マッカリーサイモン物理化学16章

9. 中間試験(暗記ではなく理解度を確認する)

10. 表面・界面I:表面張力,液滴,ぬれと接触角,毛管現象
テキスト:ボール物理化学22章

11. 表面・界面II:表面エネルギー,固体表面,吸着,触媒
テキスト:ボール物理化学22章

12. 光物性I:レーザー(自然放出と誘導放出,アインシュタインのA係数とB係数,反転分布)
テキスト:マッカリーサイモン物理化学15章

13. 光物性II:光と分子(光の吸収,遷移,励起状態の緩和)
テキスト:マッカリーサイモン物理化学15章,ボール物理化学14・15章

14. 光物性III:光と固体(光の吸収,バンド間遷移,エキシトン,緩和,光エレクトロニクス)
参考書:適時確認してください。

15. 光物性IV:最近のトピックス(光ナノサイエンス)
参考書:適時確認してください。

16. 期末試験(暗記ではなく理解度を確認する)

講義方式:
板書多用,パワーポイント使用,中間・期末試験(追試なし),小テストやレポート(数回予定)

成績評価:
期末試験,中間試験,小テストやレポート,出席などの結果に基づき総合的に評価する

履修者へのメッセージ:
物理化学の知識を総合的に使う。新しく学ぶ分野が7割,復習が3割程度になる予定。今まで別々に学んだ領域が有機的につながり,使える知識として定着することを目標にしたい。

講義では,毎回豊富な画像や少し脱線したサイエンスのトピックスも踏まえ,様々な方面からアプローチする。2年生までに物理化学が苦手な学生も,楽しめるところが毎回あるように努力する。そして物質のもつ性質がいかに多様であり,またそれを機能としていかに生活にうまく取り入れているかを知り,物質の豊かな機能性も感じ取って欲しい。