No.ReSCL-15

英語タイトル:

Optical properties of the water in a deltaic environment: Prospective tool to analyze satellite data in turbid waters

 

日本語訳タイトル:

河口域における水の光学的特性:濁った水の衛星データ解析のための先駆的手法

 

筆者:

Ferrari, G. M., Hoepffner, N., and Mingazzini, M.

 

要旨:

  培養(algal culture)したサンプルやイタリア北のPo Deltaで採取したサンプルを使って抽出した色素濃度(pigment concentration)の生体内吸収スペクトル(in vivo absorption spectra)を,水による全吸収(total absorption)とそれぞれ光学的に変化する構成成分(active constituent)とを区別して解析を行った.その結果,生きている植物プランクトン細胞と破砕的な(detrital)(無機的な)物質は「青と赤」及び「青と近赤外」の吸収比に系統的な傾向(分光的に異なる形状傾向)があることが分かった.そしてそれは410nm670nm730nmにおける自然水における生体内の全吸収係数から410nmの溶存有機物(黄色物質:yellow substance)を導くことに使われた.また「青と赤又は青と近赤外」の吸収比の異なる値を使って現場の黄色懸濁物質による吸収係数を導き出す簡単な方法を開発した.研究地とバルチク海(the Baltic)において感度解析(sensitivity)及び地域的な(regional)テストをした結果,そのモデルは異なる濁度の条件下で観測したデータ分散の85%以上を説明することができた.このことは予測した黄色物質は生きている植物プランクトンよりも破砕的な物質の変化の方がより高感度であることを示している.以上のような研究は沿岸の濁った水において,リモートセンシングの技術を使って,光学的に変化する構成物質を区別するために有効である.本論では水の後方散乱係数(backscattering coefficient)に関する問題を解決すること,遠隔計測情報(remotely sensed signal)から大気の影響(atmospheric effect)を精度よく取り除く方法を提案する.

(訳:作野)

 

訳者コメント:

 Abstractを読んだだけではわかりにくい点が多いが,本論文は衛星データを用いた実験ではなく,培養プランクトンあるいは現場から採取したプランクトンの吸光吸収係数を測定した研究である.この分野は山梨大の小林さんが非常に詳しいと思われる.ALOS/AVNIRや,Landsat/TMTerra/ASTER等の波長分解能ではこの論文で議論されているようなモデルの適用は難しく,検証にはADEOSII/GLI等の超多バンドセンサの打ち上げが待たれるだろう.現状の宍道湖・中海の研究では,実利用という面が重要と思われるため,このような細かい議論は理論構築時にとどめるべきだと考える.ただ,将来的にはこのようなプランクトンの種類等を意識した実験的研究も必要であろう.