What's Telomere ?
我々上野研究室が執着しているテロメアについて説明しましょう(a little)。
老化に関心があるなんて、人生に悔いがある証拠だよねっ。
2004年6月現在

・研究テーマ

 高等な生物には、各種属、各個体に予め寿命が定められているという。なぜこんなことが決められてるんだ!と、お思いでしょうが、事実らしいです。種属の進化、悪性遺伝子の遺伝防止など、理由はいろいろ想像できますけどね。
 特に多細胞、多組織の生物(人等)では、寿命を決める要因はいくつか思い当たります。細胞レベルの寿命では、最近話題になっている「テロメア」と呼ばれる染色体末端部分が、各細胞の寿命を定める要因の一つになっている。と言われています。この機構を解明することは、老化システム解明の大きな手がかりとなることでしょう。
 そこで我々上野軍団はこの大きなプロジェクトに、勝手に参戦しているのだ!(つづく)

・生化学の基礎 vol.1

 知ってますか?生物はほとんど水で出来ているそうです。残りの固体部分は御存知DNAや、あの玉子などで有名なタンパク質で出来ています。
 そうです。生物を構成する一個一個の細胞もこれらから構成されています。その中に、生体を構成する情報、親から受け継いだ情報などが、暗号化されていくつかの染色体に蓄えられています。やはりこの染色体もDNAとタンパク質から構成されています。この染色体にその個体の寿命のデータも入っている、といわれてます。

・テロメア初級編

 テロメア(和名:末端小粒)は、何本もある染色体(紐状)の全ての末端部分にあります。ここは、重要な情報の入った染色体を守るガードマンであり、さらに細胞の分裂回数(細胞の寿命と言っても過言ではない)の目安ともなっています。
 分裂ごとにこのテロメアは短くなり、ついには染色体ガードが出来なくなってしまいます。こうなると染色体の危機、染色体の異常を引き起こしてしまいます。こうなる前の対応策として分裂周期を遅らせるなどの対策がほどこされます。これが老化と言っても良いのではないでしょうか。ついにはその細胞、ひいては生命はその一生を終えるのでしょう。

・生化学の基礎 vol.2

 基礎 vol.1では、からだは水とDNA、タンパク質から出来ているといいました。いまいちピンと来ないタンパク質、いったい何をしているんでしょうか。
 タンパク質にもいろいろな種類があります。髪の毛などのような構造を造るものや、ウイルス等の侵入を防ぐ抗体、体内外からの刺激、情報をバケツリレーのように伝えるタンパク質、DNAの読み取りレベルを調節する因子、DNAやタンパク質を都合よく修正する酵素などなど。個々に決められた仕事をこなす自動工場のロボットのようなかんじです。この先の話はこの辺をふまえて下さい
 それではDNAはなにをやってるのかとお思いでしょう。DNAは四種類の物質の羅列が二本一組みになったものです。この4物質(A,T,C,G)の組合わせで生命の情報を構成し、蓄えているのです。そしてこの情報を読みとり、先程のタンパク質を作りだします。

・テロメア中級編

 テロメアももちろんDNAとタンパク質からできています。一般にテロメアが持つ役割(初級編)というのは、じつはほとんどテロメアDNAにくっつくタンパク質群によって分担されています。細胞内、核内に無数に存在するタンパク質は、どうやってテロメア部分に集まるのでしょうか。それはテロメアの持つDNA構造が鍵を握っています
 テロメアDNAは生物毎に特有の、簡単な配列の繰り返しからできています。タンパク質がこの繰り返し配列を認識しその部分に結合します。さらにこのタンパク質を認識して更なるタンパク質がくっついてきます。こうして集まったタンパク質は、個々に、または複数で働きます。ある者は末端保護、またある者はテロメアDNAの長さ調節など・・。
 長さの調節、ですが、さきほど(基礎 vol.2)DNAは二本一組みで出来ていると言いました。細胞が分裂する際、染色体も二つに分けねばなりません。そこで二本のDNAを二つに分け、わけられた一本を基にもう一本複製します。これで同じ者が二つになります。問題なのはこの複製方法でこうやって作られた二本のDNAは、もとのDNAより少し短くなってしまっています(初級編)。これが繰り返されると大変なことになりますね。
 単細胞生物や生殖細胞でこんな事がおきていたら大変です。なぜ?成長につれて染色体が短くなってしまったらそれを受け継いだ子の染色体の長さはその親の染色体と同じ長さになってしまいます。それでは親と子の命日が同じって事ですよね。実際生殖細胞、単細胞生物は染色体(テロメアDNA)の長さは一定です。
 これは体細胞では普段働かないテロメアーゼと言う酵素(タンパク質)が働いているためです。この酵素が一定の繰返し配列をテロメアDNA末端に補強して長くしています。この酵素を調節するタンパク質もテロメアDNAにくっついています。これらのタンパク質によってテロメアDNAは維持されています。寿命を持たず、無限に増殖するガン細胞もこの酵素が働いているためです。

・テロメア上級編

 これ以上は一般の方はごらんになれません。コードキーと暗号が必要です。

・あとがき

 どうです、テロメアに対する見方がかわりましたか?知識欲を刺激し、さらに探求してみたくなったでしょうか。そうなっていただけければ幸いです。
 ここに書いてあることに対する批判、訂正および更なる質問は、私、達也までお願いします。でも、高度な質問は先生の方へ直接お願いします。

文章・挿絵・構成:和範、脚色:規之