HSRって何?

 

 

HSRは、Homogeneously Staining Regionの略。Giemsa染色等で均一に染色される染色体領域のことで、がん細胞に見られる増幅した遺伝子は、ここに局在する場合もある。DMとHSRの関係については別記。染色体はGiemsa染色等々の昔からの染色法によりバンド構造をしていることが知られている。つまり、Giemsaでよく染まるG-bandと、薄くしか染まらないR(reverse)-bandが交互に規則正しく並んでいる。面白いことに、多種多様な染色法により検出されるバンド構造は常に同じパターンとなる。これは、このようなバンドが染色体構造の基本ユニットとなっていることを示唆している。実際、G/C含量、複製タイミング、遺伝子密度、反復配列の種類、等々、G-バンドとR-バンドは対照的な性質を持っている。さらに、最近の研究では、染色体バンド構造は、間期の核内で折り畳まれた染色糸についても、基本的な構造ユニットとなっていることが示されてきている。HSRは均一に染色される領域である。私たちは、この領域がDMに由来する単純な反復配列からなることを示した。つまり、G/C含量も遺伝子密度も反復配列の密度も均一だった。にもかかわらず、多分核内で折り畳まれる必然性から複製タイミングに関してのバンド構造が生じることを見いだした。

上の図は、ヒト大腸がん細胞株COLO 320HSRの分裂期染色体標本である。この図では、DNAは赤色の蛍光色素で染色し、遺伝子増幅した領域は緑色で検出した。つまり、Aではこの細胞中で遺伝子増幅している遺伝子全てを検出する微小核プローブを用い、またBでは、この細胞で増幅しているc-myc原がん遺伝子に対するプローブを用いて、FISH法で検出した。どちらのプローブを用いても主として3種類の増幅領域が検出される(I~III)。この細胞は異数倍数生が強いため、IVの領域は細胞によってない場合がある。この際、HSRと呼べるのはIとIIであり、ともに数10メガ塩基対にも及ぶ巨大な染色体領域を占めている。

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