キャンパス俳句
キャンパス俳句
2010
とんど焼き餅差す竹の勇ましさ
娘の通う小学校で,地域・PTA主催の行事として,とんど焼きが行われ,家族で出かけた。
山陰に暮らしていたときも,名前ぐらいは耳に入っていたが,実際に参加するのは初めてだった。子どもに「どんな由来か知ってる?」と答えのありそうな問いかけをしながら,その実,豊作を祈るのだろうぐらいにしか解は用意していなかった。
通学路を歩いて到着すると,まずその大きさに驚いた。15メートルほどはある。周りでわらべ歌を歌いながら昔遊びをする親子を尻目に,俳句ができそうだななどと考えていた。 青々と高く組まれた竹を眺めながら,
振る舞われた餅ワッフル「もっふる」をひとかじりして,点火を待った。臼まで置いてあることが気にはなったが,句もできて安心していた。
とんど焼きブランコ放ちてにじり寄る
式典がはじまり,由来がアナウンスに流れた。無病息災の意味もあるという。点火式に進む。子どもたちによって放たれた火は,一気に燃え上がる。竹の割れる音が連発して,晴れ上がった空に響く。これがとんど焼きかと感心していると,小5の娘がその感動を句に詠んだ。
とんど焼き火の粉巻き上げ竜となる
さて,そろそろ帰ろうかと気もそぞろになった頃,新たな竹が運ばれてきた。 アナウンスが「まだ火には近づかないでください」と注意を促す。まだ燃やすのかと訳がわからないのは我が家ばかり。周りでは餅を取り出し,竹の先に挟み込む。火の落ち着いたとんどで焼くのだ。これがとんど焼きだとようやく思い至る。 妻はわけもわからず,餅を持ってきていた。アナウンスがやさしく教えてくれる。「とんどで焼いた餅を食べると,一年を通して健康に過ごせると言われています。いっぱい焼いていっぱい食べましょう。」
みなが竹を手に取り,餅を竹に挟み,やる気満々。これがとんど焼きなのだと,句を作り直す。お隣の方に砂糖醤油をわけてもらい,我が家も健康を願って焼いた餅をいただいた。
とんど焼き餅差す竹の勇ましさ
2010年1月24日日曜日