キャンパス俳句
キャンパス俳句
2010
夏空や契りて臨むスライダー
大学はまだだが,世間は─といっても学校に限ってだが─夏休みである。このまま大学の休みを待っていては,子どもの休みは過ぎゆくばかりと,はじめての日曜日に,海辺まで行くことにした。
一応水着は用意しておこう,それならば一応ビーチサンダルも用意しておこう,それならば一応クジラの浮き輪も用意しておこう,それならば一応空気入れも用意しておこう,いっそのこと膨らませておこう・・・。
書きかけの論文のことが頭から離れず踏ん切れずにいたが,そこまでやったのだから,自分も泳ぐことにしようと心を決めて,家族三人車に乗り込んで,中国山地を下った。
魚のおいしいお店で昼食をすませ,海沿いにあるかつてのリゾート施設へ向かう。駐車料金を払ってゲートを通り,プールに入場する。私と娘はそれぞれ男女の更衣室で着替える。妻は明日の仕事のことから身を切り離すことができずに,見学。そのときのために一応「1Q84」Books.3を持ってきていたのに,車の中に忘れてきて,戻るには暑すぎて,見ているだけに。
娘とプールに飛び込むが,水のぬるさに驚けり。これで一句できるかと思いながら,娘の乗ったクジラの浮き輪を引き引き,8の字型のプールを一周するが,できず。そして,娘はいざウォータースライダーへ。 こわがりの質で,やっと言い含めて遊具に乗せてきたのだが,もう大丈夫のようだ。叫び声と水しぶきを上げながら,目の前に飛び込んできた。こちらの気持ちも盛り上がる。
せっかく仕事をなげうってきたのだからと,渋る娘を誘って,台を昇る。並ぶ間に,「せーいのーで滑ろうね。」と契りをかわす。係員が,下のプールから前の人が上がるのを確認し,「どーぞ。」と告げる。
「せーいのっ。」
同時に滑り始めたが,やがて娘がリードしながら,着水する。大笑いしながら,サイドに上がり,妻に頼んでいた動画を確認する。上出来だ。後は俳句ができればよいのだが,それが問題だ。
2010年7月27日火曜日