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外務省が主催する「第六回文明間の対話セミナー:イスラム世界と日本」に出席するために、サウジアラビアに行ってきました。中東は何度も訪れたことがありますが、サウジアラビアは初めてでした。イスラム原理主義が濃厚な国であるとは聞いていましたが、たしかにヴェールで全面的に顔を隠す女性が多いことや、女性の一人歩きや運転を禁止する風習にその片鱗を見ました。 会議場でも男女の同席は許されておらず、つねに女性の聴講者だけが固まっていましたし、イスラム代表の中に女性は一人も含まれていませんでした。それがそのまま女性抑圧を意味するわけではありませんが、どこか不自然なものを感じました。 豪華な王宮でアブドラ国王に謁見し、その後、砂漠にある離宮で宴が開かれました。砂を固めた壮大な王宮ですが、宮殿の外にはラクダの隊商や行商人まで登場してきて、臨場感がありました。 さて、この旅のハイライトは、仏教徒である私がメッカ巡礼をすることができたことです。メッカ巡礼はイスラム教徒なら生涯に一度は果たすべき義務ですが、メッカの町そのものに検問所があり、非イスラム教徒は入ることができない仕組みになっています。 検問に引っ掛かった場合に備えて、サウジアラビアの知人と質疑応答のリハーサルをして行きました。しかし、オムラという二枚の白いバスタオルのような巡礼着をまとった私は、検問所を難なく通過することができたのです。その時、ある人から「あなたの過去世はアラビアにある」と言われたことを思い出しました。 カアバ神殿を七回巡り、あの黒い石に接吻をし、アブラハムの妻ハガルが息子イスマイルのために水を求めて往来したという二つの丘の間を七回往来しました。 その間、カアバ神殿を埋め尽くす巡礼者に混ざって、二度の礼拝もしました。もちろん、異教徒の私も宇宙の創造主であるアッラーに感謝しました。無神教的コスモロジーの立場から、すべての宗教は根源で繋がっていると考えている私には、何の違和感もありませんでした。 それよりも、黄昏の礼拝時に見上げた空の美しさに圧倒されました。あの紅が滲んだような深いブルーは、まさに天空の神アッラーの色なのかもしれません。 ジェッダの町では、サミ・アンガウィという著名な建築家の家に泊めてもらいましたが、それはそれはお伽の国のお城のように美しい家でした。彼は自宅に友人達を招き、私のために「講演と瞑想の集い」を開いてくれました。瞑想といっても、日本語でアリガトと称える感謝念仏のことですが、終わってからサミ氏が涙を流しているのに気づきました。やはり、祈りには国境がなかったのです。 そのように素晴らしい体験を重ねたサウジアラビアですが、いろいろと問題の多い国のように感じました。あまりも王権が強く、社会的にも経済的にも、ほとんど民主化が進んでいないことです。サウジの国民が、これからどのように道を切り開いていくのか、見守っていきたいと思っています。 |