2002年7月22日
Endeavor
〜航海の概要〜


今回のEndeavorでの航海はニューヨーク州立大学のDr. D. J. Kieber(State University of New York)が主席研究者で、副主席はDr. K. Mopper、実際には乗船はしませんでしたがSecondary contactsの欄には私のボスやDr. W. Millerの名前もあり、知る人が見れば今回の航海が海洋中での光化学であることは容易にわかります。最近はこの光化学が海洋での炭素の循環に及ぼす影響などがよく議論されるようになり、今回の航海のグラントはこの炭素循環で当てるようです。

調査海域は出航から7月3日までの11日はデラウエア湾で行いました。このデラウエア湾というのは海と言うよりもむしろ大きな川で、湾の入り口(大西洋に接しているところ)こそ塩分で32とか33ありますが、湾の奥に入るにしたがって塩分はどんどん下がり0.1以下になります。瀬戸内海の広島湾でも豊潮で入れるところはせいぜい塩分20代ですから、どれほど低いかよくわかります。
ここではいろいろな塩分の水をとっては様々な項目を測ったりし、また処理して翌日にデッキ上でインキュベーションをしました。また、各測点ではOpticsと呼んでいましたが、水中での紫外から可視域の水中光量子や光散乱などを測定していました。水の吸収スペクトル(いわゆるCDOMというやつやつですね)との関連などを議論するようです。
湾奥はフィラデルフィアまで行きました。湾奥に近くなると湾の幅も数百メートルほどと非常に狭くなり水深も20〜40mほどでしたが、かなり大きな船も行き来していました。ある場所では道路に非常に近く車と並んで走っているような場面もありました。

後半は大西洋。といってもほとんど沿岸に近いところでやりました。観測項目などはほぼデラウエア湾と同じでしたが、ここでは測点を決めて、朝早くにその測点に到着したらその日暮れ、又は翌日の日暮れまで同じ地点での観測をしました。メキシコ湾流(Gulf Stream)のはじっこやアメリカとカナダの国境に近いジョージバンクやメーンバンクでも観測しました。残り4日となった7月13日は前日から同じ測点で、いよいよFree Drifting Buoyによるインキュベーションをやりました。もう少し早めにやる予定でしたが、デイブのグループの二酸化炭素の分析装置の調子が悪く、Buoyの試料を分析できる状態ではなかたのでこの日になりました。最後の2日はウッズホール海洋研究所のあるケープコッドに近いナンタケット島のごく近くで(水深30mくらい)で錨泊して観測とBuoyをやりました。

今回の航海は長い。しかもCTDのキャストは全部で118回、大量です。試料を持ち帰って分析するということはほとんどなく、その場で分析し、その場でデータを計算して整理して、グラフにして、その場でディスカッションして翌日のスケジュールなどに反映させていきました。いままでの私が乗った航海ではあまりなかった(ほとんどなかった)風景です。広い実験室で、長期で、乗っている人の実験の目的がほとんど一致して、かつ船が日程の変更など柔軟に対応してくれるとう4拍子そろってないとこうはいかないと思います。確実に論文を書くつもりで乗っているとう雰囲気でした。

この航海はNSFのグラントを当てた航海で、およそ1日あたり100万円くらいに相当するのだそうです。だから1日でも無駄にしたくないようで、途中帰港してお休みなんてシチュエーションはありません。また、夕方5時くらいになるとすっかり家に帰ってしまうアメリカ人とは思えないほどよく働き、朝は6〜7時ころから夜は12時すぎまで結構みんなよくはたらきます。ただし私は3時間ごとの24時間観測(深夜、早朝を含む)を提案しましたが、深夜と早朝は働きたくないようで、だれもからも賛同を得られずポシャリました。

やっぱ違うは、アメリカは・・・。




2002年07月22日




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