この講演の内容の主要部分は次の論文の内容に基いている。
H. Tasaki,
Antipodal sets in oriented real Grassmann manifolds,
Internat. J. Math. 24 no.8 (2013)
コンパクト対称空間の部分集合 S が対蹠集合であるとは、 S の任意の元 x, y に対して x に関する点対称が y を固定することであり、 これはChen-Naganoの導入した概念である。 R^n 内の向きの付いた k 次元部分空間の全体である 有向実Grassmann多様体 G~_k(R^n) の対蹠集合に関する結果は これまでほとんど知られていなかった。 この講演では、G~_k(R^n) の対蹠集合に関する結果を解説する。
{1, ..., n} の k 個の元からなる部分集合の全体を P_k(n) で表す。 P_k(n) の元 α, β に対して差集合の元の個数 #(α-β) が偶数になるとき、 α, β は対蹠的であるといい、部分集合 A ⊂ P_k(n) の任意の二元が 対蹠的であるときに、A を対蹠的という。 G~_k(R^n) の等長変換全体の単位連結成分の作用による G~_k(R^n) の極大対蹠集合の合同類と、 対称群 Sym(n) の作用による P_k(n) の極大対蹠的部分集合の合同類は、 一対一に対応することがわかる。 これにより、G~_k(R^n) の極大対蹠集合の分類は、 P_k(n) の極大対蹠的部分集合の分類に帰着する。
P_k(n) の極大対蹠的部分集合の合同類をすべて求めるための手順を示し、 k が 4 以下のときにこの手順を実行して P_k(n) の極大対蹠的部分集合の 合同類の分類を行う。 この分類の際に現れるいくつかの極大対蹠的部分集合は、 大きな k の場合にも一般化できることを示し、 大きな k に対する P_k(n) の極大対蹠的部分集合の系列を構成する。