コンパクト対称空間 M の部分集合 S が対蹠集合であるとは、 S の任意の元 x, y に対して x に関する点対称が y を固定することである。 n 次元球面 S^n の部分集合 {x, -x} は対蹠集合の典型的例である。 対蹠集合はChen-Naganoの導入した概念である。 この講演では、R^n 内の向きの付いた k 次元部分空間の全体である 有向実Grassmann多様体 G~_k(R^n) の対蹠集合について得られた結果を 解説する。
G~_k(R^n) の等長変換全体の単位連結成分の元によって二つの部分集合が 写り合うとき、それらは合同であるという。 k が 4 以下のときの G~_k(R^n) の極大対蹠集合の合同類の分類と 大きな k に対する G~_k(R^n) のいくつかの極大対蹠集合の構成が 講演の主な内容である。
{1, ..., n} の k 個の元からなる部分集合の全体を P_k(n) で表す。 P_k(n) の元 α, β に対して差集合の元の個数 #(α-β) が偶数になるとき、 α, β は対蹠的であるといい、部分集合 A ⊂ P_k(n) の任意の二元が 対蹠的であるときに、A を対蹠的という。 対称群 Sym(n) の作用によって P_k(n) の二つの部分集合が写り合うとき、 それらは合同であるという。
G~_k(R^n) の極大対蹠集合の合同類と P_k(n) の極大対蹠的部分集合の 合同類は一対一に対応することがわかる。 P_k(n) の極大対蹠的部分集合の合同類をすべて求めるための手順を示し、 k が 4 以下のときにこの手順を実行して P_k(n) の極大対蹠的部分集合の 合同類の分類を行う。 この分類の際に現れるいくつかの極大対蹠的部分集合は、 大きな k の場合にも一般化できることを示し、 大きな k に対する P_k(n) の極大対蹠的部分集合を構成する。