三中信宏氏の集中講義(自然学類)

科目名:数学特別講義III (1単位) C141801
担当教員:三中信宏氏 (農業環境技術研究所 上席研究員/ 東京大学・大学院・農学生命科学研究科 教授)
日程:12月 11日(月)〜13日(水) 9:30〜16:00 (12日のみ15:00まで)
場所:自然系学系棟D814
履修申請:TWINSから申請(履修申請期間:11月13日(月)〜12月8日(金))
レポート課題 (〆切:2007年1月15日(月)、提出先:自然系学系棟B720田崎研究室) 文献表
歓迎会 12月11日(月)

講義題目 かたちをはかる:生物形態の数理と統計学

【シラバス】 「かたち」を定量的に解析する手法のひとつとして, 近年「形態測定学(morphometrics)」という研究領域が確立されつつある. さまざまな学問分野を横断して生じる「かたち」を“定量的”に見るという このアプローチの特徴は, それが個別科学(たとえば生物学・医学・考古学など),数学, そして統計科学の融合する領域で急速に進展しているという 学際的性格を強く帯びていることにある. いま切り拓かれつつある形態測定学のヴィジョンを描き出し, 「かたち」を分析するツールとしてどのように利用できるのかを概観する. 「かたち」の幾何学的情報は,たとえ視覚的には単純に処理できるようで あっても,数値的には何らかの多変量データとして記述される必要がある. 「かたち」から抽出された多変量データに対して, 従来的な線形統計学的手法を適用しようとした1960〜70年代の 多変量形態測定学の反省の上に, 「かたち」のもつ幾何学的情報(サイズとシェイプ)をすくいあげるためには, 形態測定学の方法論そのものが幾何学的であるという認識が広まってきた. 「かたち」をめぐる統計学と幾何学との共同作業が1980年代にわたって続けられ, その結果として,後に「形態測定学の革命」と呼ばれるようになる 形態測定学の変革期を1990年代に迎えることになる. 本講義では,いま切り拓かれつつある形態測定学のヴィジョンを描き出し, 「かたち」を分析するツールとしてどのように利用できるのかを概観する.
0)「かたち」の風景−生物形態学の置かれてきたコンテクスト
1)測られてきた「かたち」−形態測定学の系譜をたどる
2)「かたち」の統計学−導入として
2−1)形態変量とは何か?:輪郭・距離・座標
2−2)形態学的距離の統計学
2−3)現代の形態測定学の方法論
3)変換幾何学から見た「かたち」
3−1)形態は図形である:変位・回転・拡縮
3−2)変換不変量の発見
3−3)サイズ因子とシェイプ因子の導出
4)円形正規分布−二次元の「かたち」の確率分布モデル
4−1)二次元形状のばらつきをモデル化する
4−2)円形正規分布:複素平面における複素確率分布として
4−3)形状座標の確率分布の近似的導出(Bookstein 1984)
4−4)分散分析による形状差の統計的検定
5)「かたち」の球面空間−ケンドール形状空間論
5−1)図形変換にともなう変換不変量の関係
5−2)リーマン多様体としてのケンドール形状空間
5−3)正確な形態測定学はリーマン多様体論とともにある
6)「かたち」の線形空間−接部分空間における線形近似
6−1)ケンドール形状空間の接線形部分空間
6−2)アフィン変形:線形成分のテンソル解析
6−3)非アフィン変形:スプライン補間による記述
6−4)非アフィン変形の直交分割:部分歪み解析
7)「かたち」の集団の変異をはかる:相対歪み解析
7−1)プロクラステス平均形状の算出
7−2)平均形状からの部分歪みを主成分分析する
8)ふたたび,接線形空間からケンドール形状空間へ
8−1)形状空間の上での非線形統計学
8−2)パラメトリック統計とノンパラメトリック統計
9)「かたち」の分析ツールとしての幾何学的形態測定学
9−1)さまざまな改良:たゆまざる進展
9−2)適用範囲の広がり:生物学,医学,工学,考古学,……
9−3)インターネット資源の活用と研究者コミュニティ

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