" Osoinach Construction"

John K. Osoinach は,1998年,テキサス大学での学位論文 "Manifolds obtained by Dehn surgery on infinitely many distinct knots in S3" において,その題目どおり,0-surgery した結果がすべて同じ 3次元多様体であるような無限個のhyperbolic knot を構成した。 これはKirby の問題集のProblem 3.6(D) に対する解答をあたえるものである。なお,Osoinach は研究者としての道を選ばず,また論文の出版予定はないそうだ。

Problem 3.6(D) [in Kirby Problem List] Is there a homology 3-sphere or any 3-manifold which can be obtained by n surgery on an infinite number of distinct knots?

Remark. Osoinach の論文には書かれていないが,Osoinach の構成法は,任意の整数スロープに拡張できる。一方,Cooper-Lackenby によると,分母が23以上であるような非整数スロープの場合は,高々有限個のknot しか,同じ3次元多様体を与えない。John Luekce は,無限個のknot のr-surgery として表現できる3次元多様体が存在するのは,r が整数のときに限ると予想している。

Osoinach は2つの興味深いケースを考察している。

Theorem 1(hyperbolic case) There exists an infinite family {Km} of distinct hyperbolic knots in S3 such that longitudinal surgery on each of the knots yields the same hyperbolic manifold.

Theorem 2(toroidal case) There exists an infinite family {Km} of distinct hyperbolic knots in S3 such that longitudinal surgery on each of the knots yields the same toroidal manifold.


A をS3内のembedded annulus とする。

A の2つの境界成分を,Aの内部にほんの少しだけ押し込む。それらをc1,c2 とよぼう。

c1,c2 はA上でannulus Acをはっている。

さて,元のAの2つの境界成分にバンド和を行い,生じるknot をKとよぶ。ただし,そのバンドはA-Acとは交わらないものとする。Acとは交わらないと,意味がない。(異なるknot を構成できない)

たとえば,Aがunknotted annulus の場合,バンド和で得られるknot Kは,もちろんribbon knotである。

以下,話を簡単にするために,Aがunknotted annulus であると仮定する。ここで,c1,c2 において,それぞれ1/n-surgery, -1/n-surgery を行う。

この2つのsurgery は,annulus Acに沿ったtwist で実現されるので,surgery の結果は再び3-sphere に戻る。こうして,knot Kn が得られる。

重要な事実は,K,c1,c2 からなる3成分link がonce-punctured annulus Rをはっていることである。

それは, cl(A-Ac) とバンドを合わせて得られる。

Rの境界スロープを調べると,c1,c2 では,Acのそれと一致し,Kにおいてはちょうど0になっている。

従って,K上で0-surgery を行うと,Rがannulus Qに拡張し,K(0) 内部でQに沿ってtwist を行ってもmanifoldは変わらないことから, Kn (0)=K(0) であることが理解できる。

特に,Kがhyperbolic knot 88であるようにバンド和ができる。(そのknot がribbon というだけのこと)

さらに,その0-surgery はhyperbolic manifold を与えることが知られている。

Theorem 1 の証明として残っているのは,族{Kn}が無限個のhyperbolic knot を与えていることを示すだけである。

まず,K,c1,c2 からなる3成分link がhyperbolic であることをタングル分解を使って示す。(ずいぶん苦労している)

Gromov-Thurston の2π-theorem を使って,n が十分に大きければ,Knがhyperbolic であることがわかる。

最後に,n が十分に大きければ,Knのexteriorのvolume が単調増加する事実を用いて,無限個のhyperbolic knotが実際に得られていることを結論する。


Theorem 2 の証明では,figure-eight knot 2つのconnected sum Kから出発する。

figure-eight knot はamphicheiral だから,Kはribbon である。よって,先の構成が適用できて,族{Kn}が得られる。

K(0) がtoroidal であることをみるのはやさしい。composite knot の0-surgeryでは,一般にその結果は各成分のexteriorを張り合わせたものになるので,必ずseparating essential torus を含んでいる。また,irreducible であることもやさしい。

無限個のhyperbolic knotが得られることは,Theorem 1と同じ議論で示されている。


Theorem 2 で構成された例は,大変おもしろい性質をもっている。

  1. K(0) (=Kn(0)) contains a unique essential torus T.
  2. There is no bound on the number of times that the cores of the attached solid tori from {Kn} puncture T.

最初の事実の証明は難しくないが,2つめは確かに読みにくい。decomposing sphere からくるplanar surfaceとpunctured torus との交差を考察し,Rieck の評価式を用いている。