論文執筆のために知っておきたい臨床医学英語論文の構成の特徴(Move・Stepとキーワード・キーフレーズの特徴)
6. IntroductionのMoveキーワードとキーフレーズの特徴
7. Materials & MethodsのMoveとStep
9. ResultsのMoveキーワードとキーフレーズの特徴
11. DiscussionのMoveキーワードとキーフレーズの特徴
12. Move別のキーワード・キーフレーズの活用とライフサイエンス辞書へのリンク
To "Move Keywords & Key Phrases Top"
本サイトでは、臨床医学論文でよく使われるキーフレーズを論文の流れに沿って提示する。以下で説明する臨床医学論文395編のMove分析によって明らかにしたものである。キーフレーズは、ライフサイエンス辞書コーパスと連携させてあるので、実際の用例を調べることもできる。論文を執筆するときに活用しよう。本サイトの構成としては、「セクション見出し(Moveリスト付)」→「各セクションのMoveとStepの図解」→「Move keywords(キーワード)」→「Key phrasesのSummary」→「Key phrases(キーフレーズ)」となっている(Move keywordsはスキップできる)。構成が理解できたら、眺めてみよう。疑問がなければ、以下の説明を読む必要はない。
本サイトで示すキーフレーズは、論文の流れに沿った形で分類してあるので、典型的な流れの作り方を同時に学ぶことができる。論文を書く際には、ここに示すキーフレーズを中心に、各パラグラフの文章を組み立てていくというイメージを持つと、より有効に活用できるであろう。最近は、機械翻訳を使って英語論文を執筆しようとする人が多くなっている。しかし、そのような方法では、たとえ通じる英語になったとしても、論文らしい英語にはならないことが多い。英語表現と日本語表現には大きな違いがあるため、機械翻訳によるほとんど直訳の英語では、英語論文でよく使われる表現にはなりにくいからであろう。ここで示すキーフレーズは、まさに英語論文らしい表現の宝庫である。たとえ機械翻訳を利用するにしても、キーフレーズを中心に英文を組み立てることを前提に考えれば、より論文らしい英文を組み立てることができるはずである。
ここで示すキーワード、キーフレーズをクリックするとライフサイエンス辞書にジャンプするので、キーワードの意味を確認したり、キーフレーズを用いた英文を参照したりして確認しよう。ライフサイエンス辞書コーパスには、約2億語の英語論文抄録が収集されており、また、強力な検索機能が備わっている。ジャンプした際に示される英文を確認するだけでなく、検索条件を工夫して、単語やフレーズの使い方を調べるために活用することを強くお勧めしたい。なお、ライフサイエンス辞書にジャンプした場合、元に戻るときはプラウザの戻る矢印を使う必要がある。ライフサイエンス辞書コーパスで示される巻き戻しボタンは、検索語の入力画面に戻るためのボタンであって、ブラウザの戻るボタンとは異なるので注意しよう。
以下では、Moveキーワード・キーフレーズがどのようなものであるかについて、臨床医学論文の構成上の特徴とともに解説する。
臨床医学英語論文では、Introduction, Materials & Methods, Results, and Discussion (IMRaD)の4部構成となることが圧倒的に多い。ここでは、この枠組を使う論文がどのような構成になっているかを、より詳細かつ具体的に解説する。ここに示す情報を、実際の論文執筆に活用しよう。
IMRaD構造を持つ臨床医学英語論文は、どのような流れで書かれているのか? それを詳しく分析するために、ここではMoveという概念を活用する。IMRaDの各セクションは、いくつかの共通する構成要素(Move)から成り立っている。先行研究に基づいて、臨床医学395論文を分析したところ、多くの論文が次の12のMoveから構成されることが明らかになった。なお、分析したジャーナルは、NEJM、Lancet、BMJ、AMJの4誌である。
² Introduction
l I-Move1 (IM1): Presenting Background Information(研究対象の背景情報)
l I-Move2 (IM2): Reviewing Related Research(関連する先行研究と着眼点)
l I-Move3 (IM3): Presenting New Research(本研究の紹介)
² Materials & Methods
l M-Move1 (MM1): Describing Study Design and Subjects(研究デザインと研究対象)
l M-Move2 (MM2): Describing Research Methodology(研究方法)
l M-Move3 (MM3): Describing Statistical Analysis(統計分析)
l M-Move4 (MM4): Describing Role of Funding Source(資金提供者の役割)
² Results
l R-Move1 (RM1): Describing Research Results(研究結果)
l R-Move2 (RM2): Describing Adverse Events(有害事象)
² Discussion
l D-Move1 (DM1): Highlighting Overall Research Outcome(本研究の概略)
l D-Move1 (DM2): Explaining Specific Research Outcomes(個々の結果の考察)
l D-Move1 (DM3): Stating Research Conclusions(まとめと将来展望)
395編の臨床医学英語論文のテキストを分析し、Moveごとにテキストを集めてMove別のコーパスを作成した。各Moveコーパスに含まれる単語や連語の頻度を論文全体のコーパスと比較し、各々のMoveにおいて、統計学的に有意に高頻度で使われていた単語(キーワードKeywords)や連語(キーフレーズKey phrases)を抽出した。本サイトでは、このようなキーフレーズを分類・整理して示す。なお、ex.の記号で示す表現は、典型的例であって、統計学的に有意なものではない。また、Moveキーワードについては、統計学的なランキングの上位10単語のみとした。
Introductionのキーフレーズの整理にあたっては、各Moveに含まれる内容を分析し、下位要素として以下のようなStepを定義した。
l IM1: Presenting Background Information(研究対象の背景情報)
Ø IM1-Step1: Reference to established knowledge in the field(研究対象・分野の紹介)
Ø IM1-Step2: Reference to a gap in established knowledge(研究対象に関する課題)
l IM2: Reviewing Related Research(関連する先行研究と着眼点)
Ø IM2-Step1: Reference to important previous research(重要な先行研究)
Ø IM2-Step2: Reference to a gap in previous research(解くべき問題の提示)
l IM3: Presenting New Research(本研究の紹介)
Ø IM3-Step1: Reference to the purpose of the present study(本研究を行った目的)
Ø IM3-Step2: Reference to new findings in the present study(本研究で明らかにした知見)
Ø IM3-Step3: Reference to strategies used in the present study(本研究で用いた戦略)
IM1では、研究対象の紹介として大きな枠組みから話を始め、IM2、IM3へと進むに従って、本研究の課題へと話題が絞り込まれていく。
その際に、IM1では、研究対象の重要性を強調しつつ背景情報(IM1-Step1)を述べ、さらに研究対象に関する大きな課題(IM1-Step2)を述べることが多い。
IM2では、重要な先行研究(IM2-Step1)を紹介しつつ、未解明の課題(IM2-Step2)を提示する。
IM3では、本研究の目的(IM3-Step1)、本研究で明らかにした知見(IM3-Step2)、本研究で用いた戦略(IM3-Step3)などを述べる。Stepは、この順に登場することも多いが、1つか2つのStepのみが用いられることも多い。
IntroductionのMoveとStepに沿ったストーリー展開としては、「背景→問題→解決」の流れが複数回繰り返されるパターンが多い。すなわち、Introduction冒頭からのIM1の流れは、背景情報(IM1-Step1)から研究対象の課題(IM1-Step2)へと繋がるが、これが最初の「背景→問題」の流れとなる。次に、このような「問題」に対する「解決」のためのヒントが、IM2の冒頭に来る重要な先行研究の紹介(IM2-Step1)として示される。これによって、1巡目の「背景→問題→解決」が完結する。この「解決」の部分は、同時に2巡目の「背景」(IM2-Step1)となることに注意しよう。続いて、さらに絞り込まれた具体的な課題(IM2-Step2)が次の「問題」として提示される。最後に、本研究の紹介(IM3)が最も重要な「解決」となり、2巡目の「背景→問題→解決」が完結する。もちろん、Introductionにおける「背景→問題→解決」の繰り返しは常に2巡とは限らないが、具体的な構成の基本パターンと言えそうである。Introductionの執筆は、このような流れを意識すれば比較的容易になるであろう。
「背景→問題→解決」のパターンを使ってIntroductionを作る際のポイントとしては、IM1およびIM2では課題や問題点を明確にすること、IM2では本研究につながる着眼点を紹介すること、IM3では本研究の目的や概略を述べることが挙げられる。
6. IntroductionのMoveキーワードとキーフレーズの特徴
IM1の主なMoveキーワード・キーフレーズの特徴は、Stepに基づいて理解することができる。IM1のMoveキーワードランキング1位は”is”であり、これは”is+名詞”の形でIM1-Step1(背景情報)における研究対象を定義する表現として使われることが多い。また、トップ10キーワードのうち”disease”と”cancer”は、このような文の主語となる研究対象であることが多い。さらに、”worldwide”や”most”は、研究対象の重大性を強調するために使われる。
キーワードは単語に過ぎないので、実際には様々な文で使われうる。一方、キーフレーズは特定のStepに対応する場合が多い。IM1のMoveキーフレーズのうちIM1-Step1(背景情報)に関連するものとしては、”is a 〜”などのパターンを使って研究対象を定義するものや、”is+過去分詞”を使って研究対象の特徴を説明するものが多く使われる。また、現在完了形を使って、先行研究を紹介する表現もある。IM1-Step2(課題)に関連するものとしては、未解決の課題などを述べる表現が見られる。キーフレーズはさらに細かく分けて、IM1-Step1(背景情報)をIM1-Step1a (Definition), IM1-Step1b (Characteristics), IM1-Step1c (Previous studies)に分類し、IM1-Step2(課題)をIM1-Step2a (Problems), IM1-Step2b (Possibilities)に分類して示す。
IM2のMoveキーワードランキング1位と2位は”has”と”have”であったが、これらは現在完了形を使って先行研究を紹介する(IM2-Step1)ために使われる。また、トップ10キーワードのうち、”been”と”studies”も同様の目的で使われる。一方、”however”は問題提起(IM2-Step2)の際に使われる。
IM2のMoveキーフレーズのうちIM2-Step1(重要な先行研究)に関連するものとしては、先行研究の紹介や研究対象の特徴づけのための表現が見られる。IM2-Step2(解くべき問題)に関連するものとしては、問題提起や可能性を述べるための表現が用いられる。キーフレーズはさらに細かく分けて、IM2-Step1(重要な先行研究)をIM2-Step1a (Introduction of previous studies), IM2-Step1b (Characteristics)に分類し、IM2-Step2(解くべき問題)をIM2-Step2a (Problems), IM2-Step2b (Possibilities)に分類して示す。
IM3のキーワードランキング1位の”we”は、本研究で著者が何を行ったかを述べるときに使われる。トップ10キーワードに含まれる動詞は、主に”we”と組み合わせて使われる。また、”aimed”と”aim”は、本研究の目的(IM3-Step1)を示すために使われる。
IM3のMoveキーフレーズのうち、IM3-Step1(本研究の目的)に関連するものとしては、目的を示す定型表現が多く見られる。IM3-Step2(本研究で得られた知見)に関連するものとしては、”we”を主語として本研究の知見を提示するときの定型表現が多く用いられてる。IM3-Step3(本研究の戦略)に関連するものとしては、”we”を主語として本研究で行ったことを述べる表現が使われる。
7. Materials & MethodsのMoveとStep
Materials & Methodsのキーフレーズの整理にあたっては、各Moveに含まれる内容を分析し、Moveの下位要素として以下のようなStepを定義した。Materials & Methodsでは、定型的な表現が非常に多く使われる。これらは、多くのキーフレーズに反映されている。また、MM1-Step4(役割と責任)とMM4: Role of Funders(資金提供者の役割)には、一部、重複がある。
l MM1: Describing Study Design and Subjects(研究デザインと研究対象)
Ø MM1-Step1: Describing study design(研究デザインの概略)
Ø MM1-Step2: Describing selection of participants(研究対象の選択)
Ø MM1-Step3: Describing ethics(研究倫理)
Ø MM1-Step4: Describing role and responsibility(役割と責任)
l MM2: Describing Research Methodology(研究方法)
Ø MM2-Step1: Describing procedure(方法)
Ø MM2-Step2: Describing evaluation(評価)
l MM3: Describing Statistical Analysis(統計分析)
Ø MM3-Step1: Restating subjects(研究対象)
Ø MM3-Step2: Describing statistical procedures(統計分析の実施)
Ø MM3-Step3: Describing the purpose of analysis(分析の目的)
Ø MM3-Step4: Describing criteria for statistical significance or data expression(P値の基準とデータの表示方法)
l MM4: Describing Role of Funding Source(資金提供者の役割)
Ø MM4-Step1: Describing role of funders(資金提供者の役割)
Ø MM4-Step2: Describing authors’ responsibility(著者の責任)
キーフレーズは、さらに細かく分類して示す。
Materials & MethodsのMoveとキーフレーズ
Resultsのキーフレーズの整理にあたっては、各Moveに含まれる内容を分析し、Moveの下位要素として以下のようなStepを定義した。
l RM1: Describing Research Results(研究結果)
Ø RM1-Step1: Describing methods(方法)
Ø RM1-Step2: Indicating specific observations(結果の提示)
Ø RM1-Step3: Indicating comparison or changes(比較・変化)
l RM2: Describing Adverse Events(有害事象)
Ø RM2-Step1: Describing adverse events(有害事象)
Ø RM2-Step2: Indicating discontinuation(治験の中止)
RM1では、新しい知見の提示(RM1-Step2)を行う。具体的な結果を述べる際には、比較あるいは変化(RM1-Step3)を示す。また、最初に方法(RM1-Step1)について説明することもあるが必須ではない。
RM2は有害事象に関することなので、すべての論文で述べられるわけではない。治験などでは、有害事象について確認する(RM2-Step1)ことが非常に重要である。有害事象の程度によっては、治験は中止される(RM2-Step2)こともある。
9. ResultsのMoveキーワードとキーフレーズの特徴
RM1のMoveキーワードランキング1位は”group”であり、これは異なる処置を行って比較する被験者の群を示すために使われる。トップ10キーワードのうち、”placebo”は、対照群としての”placebo group”を示すために使われる。また、”significantly”と”significant”は、群間に有意な差があったことを示すことが多い。
RM1のMoveキーフレーズのうちRM1-Step1(方法)に関連するものとしては、患者の群分けや処置状況などを示すものが多く用いられる。RM2-Step2(結果の提示)に関連するものとしては、結果の提示表現や、発見に関する表現が多く用いられる。RM1-Step3(比較・変化)に関連するものとしては、比較表現、増減に関する表現、変化がないことを示す表現などが見られる。キーフレーズはさらに細かく分けて、RM1-Step2(結果の提示)をRM1-Step2a (Presentation of results), RM1-Step2b (Findings), RM1-Step2c (Possibility)に分類し、RM1-Step3(比較・変化)をRM1-Step3a (Comparison), RM1-Step3b (Changes), RM1-Step3c (Similarity), RM1-Step3d (No difference)に分類して示す。
RM2のMoveキーワードランキング1位は”adverse”であり、これは、トップ10キーワードの一つである”events”と組み合わせて、有害事象を意味することが多い。また、”serious”も有害事象に対して使われることが多い。RM2でもRM1と同様に、”group”、”groups”、”placebo”などの群分けに関連するものがトップ10キーワードに含まれていた。
RM2のMoveキーフレーズのうちRM2-Step1(有害事象)に関連するものとしては、有害事象の有無に関する表現が多く使われる。RM2-Step2(治験の中止)に関連するものとしては、治験が中止されたことを述べる表現が見られる。RM2-Step1(有害事象)のキーフレーズをさらに細かく分けて、RM2-Step1a (Adverse events), RM2-Step1b (No adverse events)に分類して示す。
Discussionのキーフレーズの整理にあたっては、各Moveに含まれる内容を分析し、Moveの下位要素として以下のようなStepを定義した。
l DM1: Highlighting Overall Research Outcome(本研究の概略)
Ø DM1-Step1: Describing background of research subjects(研究対象の背景情報)
Ø DM1-Step2: Summarizing the present study(本研究の成果の概略・意義)
Ø DM1-Step3: Presenting major findings of the present study(本研究の主要な知見)
l DM2: Explaining Specific Research Outcomes(個々の結果の考察)
Ø DM2-Step1: Describing specific background(個々の結果の背景情報)
Ø DM2-Step2: Restating specific outcomes(個々の結果の提示)
Ø DM2-Step3: Interpretating specific outcomes(個々の結果の解釈)
Ø DM2-Step4: Describing strength of the present study(本研究の強みと意義)
Ø DM2-Step5: Describing limitations of the present study(本研究の限界と課題)
l DM3: Stating Research Conclusions(まとめと将来展望)
Ø DM3-Step1: Describing summary(本研究のまとめ)
Ø DM3-Step2: Describing perspective(本研究の展望と課題)
Discussionの第1パラグラフは、DM1に相当することが多い。本研究のまとめ(DM1-Step2)と、それに引き続いて具体的な発見(DM1-Step3)やその解釈が示されることが多い。またDM1は、研究対象の背景情報(DM1-Step1)から始まることもある。
DM2は、DM1とDM3の間の部分である。Introductionの約2倍の分量があるDiscussionでは、DM2は5つ程度のパラグラフで構成される。DM2はパラグラフごとの独立性が高く、それぞれ異なる実験についての考察が行われる。その際には、個々の結果(DM2-Step2)を述べ、引き続いて個々の結果の解釈(DM2-Step3)が述べられることが多い。また、結果を述べる前に、関係する背景情報(DM2-Step1)が示されることもある。また、本研究の強み(DM2-Step4)や限界(DM2-Step5)について述べられることも多い。
Discussionの最終パラグラフは、DM3に相当することが多い。ただし、最終パラグラフの途中からDM3が始まる場合もある。まず、まとめ(DM2-Step1)を述べ、それに続いて将来の研究などの展望(DM2-Step2)を示すことが多い。
11. DiscussionのMoveキーワードとキーフレーズの特徴
DM1のMoveキーワードランキング1位は”that”であり、これは他動詞の目的語となるthat節を作るために使われることが多い。トップ10キーワードのうち、”found”と”suggest”はthat節を目的語とする。また、”this”と”our”は本研究に対して使われることが多い。
DM1のMoveキーフレーズのうちDM1-Step1(本研究の背景)に関連するものとしては、先行研究を紹介する表現が見られる。DM1-Step2(本研究の成果の概略・意義)に関連するものとしては、本研究の主な結果の提示表現や、本研究の重要性を強調する表現が多く見られる。DM1-Step3(本研究の主要な知見)に関連するものとしては、具体的な関連性、一致、変化などを述べる表現が多く用いられる。DM1-Step2(本研究の成果の概略・意義)のキーフレーズをさらに細かく分けて、DM1-Step2a (Summary), DM1-Step2b (Significance)に分類して示す。
DM2のMoveキーワードランキング1位は”our”であり、これは本研究に対して使われる。DM1と同様に、”that”や”this”がトップ10キーワードに含まれていた。また、”may”や”might”は様々な可能性を考察する際に使われる。
DM2のMoveキーフレーズのうちDM2-Step1(個々の実験の背景)に関連するものとしては、先行研究を紹介する表現が見られた。DM2-Step2(個々の実験の結果)に関連するものとしては、結果の提示表現や、比較や対比のための表現がよく使われる。DM2-Step3(個々の実験の解釈)に関連するものとしては、様々な可能性を議論する表現が用いられる。DM2-Step4(本研究の強み)に関連するものとしては、strengthを述べる表現が使われる。DM2-Step5(本研究の限界)に関連するものとしては、本研究のlimitationに関する議論や将来研究の課題が示される。DM2-Step3(個々の実験の解釈)のキーフレーズをさらに細かく分けて、DM2-Step3a (Possibility), DM2-Step3b (Consistency)に分類して示す。また、DM2-Step5(本研究の限界)のキーフレーズをさらに細かく分けて、DM2-Step5a (Limitations), DM2-Step5b (Future research)に分類して示す。
DM3のMoveキーワードランキング1位は”conclusion”であり、”In conclusion”の形でDM3の冒頭シグナルとして使われる。トップ10キーワードのうち、”should”、”will”、”future”、”need”、”needed”は、将来の研究における課題を述べるために使われる。
DM3のMoveキーフレーズのうちDM3-Step1(まとめ)に関連するものとしては、まとめや、主な結果、解釈について述べる表現が使われる。DM3-Step2(展望)に関連するものとしては、将来研究で必要なことや、本研究の重要性を述べる表現が多く見られる。キーフレーズはさらに細かく分けて、DM3-Step1(まとめ)をDM3-Step1a (Conclusion), DM3-Step1b (Interpretation)に分類し、DM3-Step2(展望)をDM3-Step2a (Future research), DM3-Step2b (Significance)に分類して示す。
12. Move別のキーワード・キーフレーズの活用とライフサイエンス辞書へのリンク
各Moveのトップ10キーワードと、各Moveで有意に高頻度で使われていたキーフーズのうち、主なものをStepに基づいて分類して別掲する。ほとんどのキーフレーズは、特定のStepに割り当てることができる。キーワードおよびキーフレーズには、ライフサイエンス辞書コーパスへのリンクが付けてあるので、具体的な頻出パターンを確認しよう。また、「EtoJ」として、キーフレーズの中心となる単語をライフサイエンス辞書(英和)で検索するリンクも合わせて示す。
こちらに示すライフサイエンス辞書コーパス活用法も参照していただきたい。
1. 河本 健・石井 達也 (2018).トップジャーナル395編の「型」で書く医学英語論文——言語学的Move分析が明かした執筆の武器になるパターンと頻出表現—— 羊土社.(リンク)
2. Kawamoto, T., and Ishii, T. (2018) Move analysis of English medical papers and its application to the writing of the introduction and discussion sections. Journal of Medical English Education, 17, 3: 107-111.(リンク)