人間は脳の神経回路網(ニューラルネットワーク)を使って、非常に優れた情 報処理を行っています。人間や動物の脳には、非常にたくさんのニューロンが あり、それらは非常に複雑に絡み合って情報をやり取りしています。そうした 複雑な神経回路網の上でのニューロン間の情報のやり取りによって、優れた情 報処理が実現されています。一方、現在のコンピュータは、1個のCPUでプロ グラムとして与えられた命令を逐次的に高速に処理する方式を取っており、脳 の情報処理の方式とはかなり違っています。また、現在のコンピュータは、プ ログラムとして予め与えられた命令を忠実に実行することは得意ですが、新し い環境に適応したり、学習により新しい能力を身に付けたりすることはあまり 得意ではありません。音声を聞き分けたりするパターン認識の能力や直観的な 判断能力、新しい環境への適応能力や学習能力では、我々の脳は現在のコン ピュータに比べてはるかに勝っています。我々の脳では、ニューロン間の結合 の強さを変化さることにより学習が行われていると考えられています。(人工) ニューラルネットワークは、脳を真似て多数のニューロンを結合したネットワー ク上での情報処理をさせようとするものです。この講義では、その基本となる 学習の考え方あるいは学習のアルゴリズムについて理解してもらえればと思い ます。