重回帰分析(最小2乗法)では、モデルとデータとの誤差が平均 の正規分布 に従う場合には、推定されたモデルは最適なものとなるが、データに例外値が 含まれているような場合には、推定結果は例外値の影響を大きく受けて、必ず しもよいモデルが推定できるとは限らない。
画像処理やコンピュータビジョンでは、データに例外値が含まれていることを 前提にしてデータからモデルのパラメータを推定できれば便利なことが多い。 例えば、複数の動きを含んだデータから主要な動きのみを推定したい場合には、 異なる動きのデータを同時に処理し、データの主要な部分のみから運動のパラ メータを推定できれば便利である。
ロバスト統計を用いると、例外値をある程度含むようなデータからでも比較的 安定にモデルのパラメータを推定できる。以前は、ロバスト統計に基づく手法 は、メディアンフィルタなどの画像の平滑化以外ではあまり利用されていなかっ たが、1990年代に入って、様々な用途で使われるようになり、最近では、画像 処理やコンピュータビジョンの分野でもモデル推定のための標準的な手法とみ なされるようになってきている。