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多変量データ解析の利用

以上のような要求を満足する類似画検索法を、多変量データ解析を用いて実現する。

多変量データ解析手法を画像データベースの検索に適用する試みとしては、キーワー ド(形容詞)群の因子分析を用いて、キーワードから画像を検索する手法が提案され ている[29,43]。しかし、それらはデータベース中の全ての 画像に人手で付与したキーワードに基づく検索法であり、例示画そのものをキーとす る類似画検索に直接適用することはできない。例示画から類似画を検索する場合には、 例示画から何等かの画像特徴(索引)を自動的に抽出し、それをキーとして類似画を 検索する必要がある。

画像の信号的特徴としては、濃淡分布や周波数分布等を考える [50,51,52,83,84,88]。これらの画像特徴 と利用者の主観を関係付けるために画像特徴空間(GF空間 Graphical Feature Space)から利用者の主観尺度を反映するような主観特徴空間(SF空間 Subjective Feature Space)への写像を学習用画像集合に基づいて構成する。この対応関係はニュー ラルネット等を用いて非線形写像として構成することも考えられるが、ここでは線形 写像によって構成することを考える。これによりある評価関数に関して最適な写像が 解析的に比較的簡単に求まる。

利用者の主観的類似度を抽出する最も簡単な方法は、学習用画像集合のグループ分 けである。学習用画像を利用者(被験者)に見せて、似ていると感じる画像が同じ グループに入るように画像集合を任意の数のグループに分割してもらう。このグルー プ分けに従って、同じグループの画像はなるべく近く、異なるグループの画像はなる べく遠くなるようなSF空間が構成できれば、その空間は利用者の主観尺度をある程度 反映した空間であると言える。このようなGF空間からSF空間への線形写像は判別分 析により構成できる[83,84,88]。

利用者の主観尺度をより精密に測るには、学習用画像集合内の二つの画像がどれぐら い近いかを表わす類似度を測ればよい。例えば、ある利用者(被験者)に類似度を数 値で回答してもらう、あるいは、数人の利用者に学習用画像集合をグループ分けさせ、 その結果を総合して類似度を計算する等が考えられる。

これら以外にも、利用者の主観情報の数量化法がいくつか考えられるが、以下では、 最も基本的な上記の場合について述べる。

画像を例示する際、画像が多少傾く等して同じ画像に対して必ずしも同一の画像特徴 が得られるとは限らない。この変動を吸収するために、入力条件を変えて学習用画像 集合を数回読み込み、画像特徴の変動を吸収するような写像を構成する。このよう な線形写像は判別分析を用いて実現できる。



Takio Kurita 平成14年7月3日