What's New 16-7

2016年度科学研究費が教室から7件採択されました

採択された研究課題と研究概要は以下の通りです。

■日本学術振興会科学研究費 基盤(C)
去勢抵抗性前立腺癌マーカーRegⅣ・OLFM4を標的とした新規診断・治療開発
松原昭郎
研究概要:去勢抵抗性前立腺癌は未だ予後不良であり、最適な診断・治療の確立は急務となっている。私たちは、分泌蛋白質に注目して前立腺癌の研究を行い、NBL1などの診断・治療標的を同定してきた。これらの研究から、私たちはRegⅣとOLFM4がCRPC特異的に高発現する分泌蛋白質であることを発見した。さらにRegⅣとOLFM4は抗アポトーシス作用を持つことから、血清腫瘍マーカーならびに治療標的としても有望と考えられる。本研究では、去勢抵抗性前立腺癌の臨床検体とin vitro、マウスモデルを用い、去勢抵抗性前立腺癌におけるRegⅣとOLFM4の機能を明らかにする。本研究により、RegⅣとOLFM4は、去勢抵抗性前立腺癌の新規血清腫瘍マーカーならびに新規治療標的として診断・治療の改善に貢献できると期待される。

■日本学術振興会科学研究費 基盤(C)
内分泌性FGFsの分子機構解明による去勢抵抗性前立腺癌に対する新規治療戦略の確立
亭島 淳
研究概要:近年わが国では、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対する作用機序の異なる新規薬剤が次々と導入され、これらを用いた最適な治療戦略の確立が急務となっている。内分泌性FGFサブファミリー(内分泌性FGFs)はホルモン様作用と増殖因子活性を有するユニークで多機能な分子群である。当教室ではこれまでに前立腺癌の去勢抵抗性獲得と内分泌性FGFsの発現変化に密接な関係があることを突き止めている。本研究は、CRPCにおける内分泌性FGFsの分子機構を解明することによってCRPCに対する新たな治療戦略の確立を目指すものである。

■日本学術振興会科学研究費 基盤(C)
がん幹細胞性制御遺伝子を標的とした膀胱癌の新規治療法の開発
林 哲太郎
研究概要:抗がん剤耐性膀胱癌は予後不良で、その機序の解明と新規治療法の確立は急務である。私たちはこれまでに、膀胱癌の新規治療法の開発を目的に、抗がん剤耐性細胞株を樹立し、耐性遺伝子を同定してきた。その結果、OLFM4などのがん幹細胞性を制御する遺伝子が、抗がん剤耐性膀胱癌で高発現することを見出してきた。これらの研究成果を踏まえ、私たちは未分化能の維持機構にアプローチし、抗がん剤耐性獲得の機序を明らかにし、さらにマウス膀胱癌in vivo移植モデルを用いて、がん幹細胞を標的とした膀胱癌治療の有効性を評価することを本研究の目的としている。がん幹細胞に着目した抗がん剤耐性機序の解明は、膀胱癌研究分野で新規性が高く、新規標的治療の確立に向けた有望な研究である。

■日本学術振興会科学研究費 基盤(C)
磁気ターゲティングを用いた骨髄幹細胞移植による膀胱再生の開発
井上省吾
研究概要:放射線治療や糖尿病などによる膀胱組織傷害により、膀胱機能が大きく損なわれる患者は多い。また、筋層浸潤性膀胱癌における膀胱全摘除術後の腸管を利用した代用膀胱は、術後の生活の質を大きく損なっている。このように、膀胱は再生医療が必要とされる代表的な臓器である。これまでさまざまな手法で膀胱再生が試みられてきたが、手間と技術を要する上に、生着し組織再生する細胞の効率が低いため、正常な生理作用を有する膀胱再生の実現が望まれている。これに対して私たちは、膀胱再生を実現するための移植細胞源として、骨髄間葉系幹細胞移植に着目した。骨髄間葉系幹細胞は格段に高い増殖能をもつことが知られており、本細胞の移植は安全性の点においても優れた手法である。本研究は、私たちの開発した磁気ターゲッティングを用いて骨髄間葉系幹細胞を効率よく標的臓器に集積させる方法の確立を目指すものである。

■日本学術振興会科学研究費 若手研究(B)
去勢抵抗性前立腺癌におけるFGFR2IIIbを用いた新規治療戦略の開発
正路晃一
研究概要:進行前立腺癌や去勢抵抗性前立腺癌細胞株においては、繊維芽細胞成長因子受容体2IIIb (Fibroblast Growth Factor Receptor 2IIIb, FGFR2IIIb)の発現消失が報告されており、当研究室ではFGFR2IIIbを発現回復することにより腫瘍抑制効果、放射線感受性および化学療法感受性の増強効果があることを報告してきた。本研究ではFGFR2Ⅲbの発現回復により生じる遺伝子発現の変化を始めとする分子機構の変化をCAST(Escherichia coli ampicillin secretion trap)法を用いて検索し、さらに臨床検体を用いて検証することにより、去勢抵抗性前立腺癌に対する新たな治療戦略開発の一助とすることを目的としている。

■日本学術振興会科学研究費 若手研究(B)
前立腺癌増殖を制御する新たな癌統括酵素Par14の臨床応用を目指して
金岡隆平
研究概要:プロリン異性化酵素Pin1は、50種類以上の癌関連遺伝子を統括する酵素で近年注目されている。私たちは、これまでPin1阻害剤が前立腺癌の細胞増殖を抑制することを証明したが、Pin1 KOマウスがアルツハイマー病や糖代謝異常など様々な表現型を示すように、阻害することでの副作用の問題で、残念ながら現時点では臨床応用まで至っていない。Par14はPin1のアイソフォームで類似した構造や作用をもつが、Par14 KOマウスはPin1 KOマウスのような明確な表現型を呈さない。さらに予備実験でPar14発現抑制にて前立腺癌の細胞増殖が抑制されたことから、その阻害剤は副作用の少ない治療と考え、本研究では、前立腺癌におけるこのPar14が示す重要な機能の解析、ならびにPar14を標的とした新たな創薬の開発に向けた基礎研究を行うものである。

■日本学術振興会科学研究費 若手研究(B)
腎細胞がん微小環境における骨髄由来間葉系幹細胞の機能解明
北野弘之
研究概要:近年、がんの増殖と進展には、がん細胞と間質細胞の相互作用が重要であることが証明された。私たちは、この報告に注目し、腎細胞がんの間質がPDGFβ受容体を介して活性化される事を見いだし、さらに、癌関連線維芽細胞や周皮細胞がPDGFβ受容体を発現し、スニチニブにより抑制される事を証明した。本研究では、これらの成果を踏まえ、より前駆的な骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)に着目し、以下の3点を明らかにする。 [1]腎細胞がんの間質において、MSCから分化する細胞の同定 [2]がんの進行におけるMSCの役割を解明し、がん細胞とMSCの相互作用に関わる物質の同定 [3][1]と[2]をもとに、創薬につながる新しい標的分子を同定