何はともあれ筋
骨に付着して,手足などを動かす時に,収縮する筋肉のことを骨格筋といいます.みなさんは,この骨格筋がどのような構造をしていて,どのような仕組みで収縮するのかご存知ですか.興味がある方は,左の骨格筋をクリックしてみてください.
筋線維の種類
骨格筋を構成する筋線維には,ただ1つの種類のものしかないかというとそうではなく,性質の異なる2種類のものがあり,それらは速筋 (fast-twitch; FT) 線維と遅筋 (slow-twitch) 線維と呼ばれています.ST線維はtype I 線維と,またFT線維はtype II 線維と呼ばれることもあります.FT線維は,さらにFTa (type IIa) 線維とFTb (type IIb) 線維の2種類に細分されます(筋線維の特性).
筋原線維の収縮
筋原線維は,アクチンフィラメントとミオシンフィラメントとの2種類のフィラメントからできています.それぞれのフィラメント自身は収縮しませんが,2種類のフィラメントがお互いに滑り込むように移動し,全体の長さが短くなります.これが筋収縮です(筋原線維の収縮)
収縮速度はなぜ,筋線維タイプ毎で異なるのか
先に,筋線維タイプによって収縮速度が異なると述べましたが,一体何故なのでしょうか.タンパクには働きは同じだが,構造が若干異なる数種類のものが存在することがあり,それらのタンパクの1群をアイソフォームをいいます.同じ人間でも顔かたちが異なるようなものです.収縮速度はミオシン分子の性質によって大きく規定されることが知られています.もう,お分かりでしょう!筋線維のタイプによって収縮速度が異なるのは,含まれるミオシンのアイソフォームの種類が異なるからです (ミオシン).
筋細胞内のカルシウム濃度の調節
筋原線維の収縮は,細胞内のカルシウムの濃度によって制御されています.骨格筋では,筋小胞体 (sarcpolasnic reticulum; SR) と呼ばれる器官がカルシウムの濃度を制御しています(筋小胞体).SRの機能は,筋原線維の弛緩速度に影響し,SRのカルシウム取り込み速度が高いほど,弛緩速度が速くなります.
筋は変化する!
筋は,その特性が変化しやすいことに特徴があります.たとえば,長期間トレーニングを行ったり,宇宙空間に滞在したりすると,速筋線維が遅筋線維になったりあるいはその逆の変化が起こったりする場合があります.また,一回の運動を行っても,運動後では運動前と比べて,筋細胞内の代謝物の濃度などが,劇的に変化することもあります.
本研究室では,
「筋をどのような条件下に置くと,どのように変化するのか」
「筋の疲労はなぜ起こるのか」(筋疲労)
「疲労を防ぐことはできないのか」
などをテーマに研究しています.