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第86回例会


開催年月日   テーマ  話題提供者
86 平成28年6月16日 核戦争防止国際医師会議(IPPNW)と医師の倫理 片岡 勝子 先生


核戦争防止国際医師会議(IPPNW)と医師の倫理



IPPNW日本支部 事務総長
 片岡 勝子


 東西冷戦の最中の1980年、著名な心臓病学者であるハーバード大学のバーナード・ラウン教授とソ連厚生省のエフゲニー・チャゾフ博士は「核戦争は人類生存の危機であり、この疫病を予防するためのもっとも有効な処方箋は核兵器廃絶である」ことに合意し、「核兵器廃絶に尽力することは、政治体制や思想信条の相違を越えた医師の使命である」と、医師の世界的組織である核戦争防止国際医師会議 (IPPNW)を設立した。この設立目的そのものが、医師の倫理に基づいたものである。第1回世界大会(1981)は米国バージニア州のエアリーで開催され、12か国が参加したが、日本も3名の代表(広島2名、米国在住1名)を送った。

 1985年のノーベル平和賞受賞は、IPPNWを世界でも有力な平和団体に押し上げた。受賞前後にはIPPNW代表団が核保有国を歴訪して、政府高官と核兵器廃絶に関する対話を行ったが、そのなかにはソ連のゴルバチョフ書記長も含まれていた。第9回世界大会 (1989) は、東西冷戦構造が音を立てて崩れる最中に広島で開催され、参加者約3,000名と、IPPNW史上最大の大会となった。冷戦構造の崩壊とともに世界核戦争の脅威が薄れ、IPPNW活動は参加者、活動、資金面ともに減少傾向にある。第10回以降の世界大会は2年に一度行われ、第20回世界大会 (2012) は、再び広島で開催された。

 IPPNWは一国一支部制をとっている。日本支部は「核兵器廃絶と放射線の健康影響」を活動テーマとしており、そのほかの活動は会員個人の自由に任せている。米国支部は1980年代の「核の冬」に続いて、最近は「局地的な核戦争も地球規模の飢餓をもたらす」という研究発表をしている。もっとも活発な論客であるドイツ支部は、反原発を中心に活動しており、その圧力は特に日本支部に対して強い。アフリカ諸国は小型武器に対する反対を主要テーマとしており、武器貿易条約が国連で採択されたことは大きな成果である。各国支部は近隣諸国のそれと地域をつくり、日本は韓国、中国、北朝鮮、モンゴルとともに北アジア地域を形成している。このうち、朝鮮半島の両国と中国は政治情勢の影響からか、近年は活動をほとんど休止しており、本年2月末に広島で開催された第9回北アジア地域会議も、日本とモンゴルのみの参加であった。

 放射線の健康影響について「正しく知り、正しく怖がる(寺田寅彦)」ということは易しいが、医師の日常活動のなかで被ばく者である患者に対して、これを説明することは極めて難しいことも痛感している。







IPPNW日本支部
http://www.hiroshima.med.or.jp/ippnw/




 

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