A New Foundation for Cognitive Development in Infancy: The Birth of the Representational Infant
In Conceptual Development: Piaget's legacy 1999 edited by Scholnick, E. K., Nelson, K., Gelman, S. A., & Miller, P. H. Lawrence Erlbaum Associates, Inc. chapter3 53-78

Andrew N. Meltzoff
M.Keith Moore

University of Washington, Seattle

Rep: 宮崎美智子 東京工業大学社会理工学研究科 Email: miyazaki@psyche.tp.titech.ac.jp

人間の心の初期状態とは?

近年の乳児研究の大きな成果
	imitation 
	object permanence
	
	これらを挙げた理由
	乳児にとって重要な二つのもの(人と物)に関係する
	ピアジェ理論がこれらの領域についてはっきりとした予測をしていること
	発達におけるさまざまな学派が解釈を戦わせていること
	


ここでの目的は、極端な生得主義と経験主義の間にある行き詰まりを打破すること。
この問題に対する新しい見方を提案する。

 
表象能力と概念発達に関する理論(Figure3.1)

Meltzoff, Mooreの理論では、前言語期の乳児の初期の表象能力と概念変化の両方を仮定する。
	the representational-development theory

SKETCH OF A NEW FOUNDATION
すべての発達理論は何らかの形で乳児の初期状態の存在を認めている。表象なしに感覚運動を反映させるのはPiagetであるが、より洗練された形のものをMeltzoffは主張。

representational persistence:小さな乳児が純粋に感覚運動レベルの機能に支配されてはいないことを示すデータを引用
人や物の数的同一性の保持
BaillargeonとSpelkeの物体の永続性実験の再検討

DEFFERED IMITATION AND REPRESENTATION
遅延模倣:Piagetでは感覚運動期の第6ステージにできるとされている。しかし近年の実験結果によれば、遅延模倣は乳児期の終わりに起こりはじめるのではないことが示されている。

Deferred Imitaiton Without Motor Practice
遅延模倣の検討に際し、注意すべき区別
	(a)観察のみの表象形成
	(b)行為、動作を含む繰り返し

Meltzoff(1985,1995b)
	観察のみ条件で遅延模倣をさせた。その結果、6ヶ月から9ヶ月の子どもに遅延模倣が見られた。(Barr, Dowden, & Hayne, 1996; Heimann & Meltzoff, 1996; Meltzoff, 1988b)

Deferred Imitaiton of Novel Acts
18ヶ月以前の乳児の模倣がなじみのある行為やよく訓練されたものに限られるなら、
	特定の対象は認識できても観察のみによる行為の獲得は難しい。

Meltzoff(1988a)
	[デザイン]
	Novel Acts群:おでこでパネルを押す場面を見る
	統制群:特に何も見ない
	[結果]
	1週間後、その対象を見せられNovel Actsを行った乳児は
	Novel Acts群:66%
	統制群:0%
	[考察]
	乳児の遅延模倣が試行錯誤の結果であるかどうかの検討も行ったが、テスト試行での反応パターンを分析した結果、試行錯誤ではないことがわかった。つまり、大人の動作は乳児にとってまったく新規の出来事であった。

Length of Delay
Piagetの観察では、Jacquelineに12時間の遅延模倣がみられた。Piagetは単純な感覚運動ではもはや説明できず、何らかの表象的要素が含まれることを確信していた。

近年、小さな乳児がどれくらいの長さのdelayを扱えるかが調査されている。
[6ヶ月から9ヶ月児:]24時間のdelayで遅延模倣を行う。
[12ヶ月児:]4週間のdelayで遅延模倣を行う。
[2歳児:]4ヶ月かそれ以上の遅延模倣。
(e.g., Barr et al., 1996; Bauer & Wewerka, 1995; Heimann & Meltzoff, 1996; Klein & Meltzoff, 1999; Meltzoff, 1988a, 1988b, 1995b)

Deferred Imitation Is Generalized Across Contexts
遅延模倣は表象の長期保持よりも高度な能力を必要とする。
	別の状況下での応用

遅延模倣の生成に関する実験(Klein & Meltzoff, 1999)
	[被験者:]12ヶ月児
	[結果:]乳児の家である実験者がテスト対象に行った動作を、1週間後に別の実験者がテスト対象を提示したときに模倣することができた。

Deferred Imitation in the First Months of Life
古典的には遅延模倣や表象はおよそ1歳か1.5歳で見られるとされているが、少なくとも単純な身体動作が示されたときにはもっと小さな子どもでも模倣が可能である。


Meltzoff & Moore(1977):3週間児の顔の模倣(舌の突き出し、口をあける)
Meltzoff & Moore(1994):6週間児が24時間前の動作を模倣した
Meltzoff & Moore(1994):6週間児に舌の突き出し(まっすぐ方向、横方向)をさせた。(横方向については大きな差が出なかった。)

おもしろいのは、新規の動作をはじめて模倣するのに関わらず、正しく行えるという点である。

Implication of Deferred Imitation for Representaion
これまでわかったこと
	乳児は長いdelayには耐えられない、知らない動作を模倣できる、文脈が変わっても模倣ができる。


初期の表象の性質に関する3つの予測

 観察だけでも真似ができる。 
 保持される。
 動作を正しく生成できる。

Meltzoffらが主張しないこと;新生児の模倣能力が2歳児のものと同等ではない。

知覚的な刺激が欠如した状態で保持された表象に基づく動作の能力は、乳児発達のスタート地点であり、完成されたものではない。



THE NEED FOR MORE DIFFERENTIATED THEORETICAL CONCEPTS
object permanenceの問題は外に見えない状態での表象を保持(persisting)できるかどうかという点にある。

Representation Without Object Permanence
representationのpositive evidence(隠した対象を取り替え、再び見せると乳児は驚く。)がobject permanenceの証拠と勘違いされている。
だが、ただ単に現在の知覚と見えなくなった対象とのミスマッチに驚いただけかもしれない。

Differentiating Two Types of Identity
表象能力:物体の同一性の問題を引き起こす。

Piaget(1954,1962), philosophers(e.g., Strawson, 1959):
"a is the same as b"には二つの意味がある。
	[numerical identity:]空間、時間的な隔たりがあっても同じ物として物体が存在するという定義に関係
	[qualitative identity:] appearancesに関すること。特徴どうしが似ているというような。

qualitative identityに関する先行研究

item e.g., Cohen,1979; Fagan,1990; kuhl,1983,1994; Quinn & Eimas,1996
	乳児はあるパターンと同様か、類似したパタンを再認することに長けている(proficient)ことが示された。
item Piaget
	qualitative identityに興味はあったが別の視点からだった。(乳児が同じ動作をするかどうかでの判断)

numerical identity
"same as"ではなく"same one"であることを見分ける
 Piaget
	Lucienne:庭にいるPiagetを見て、書斎の窓を振り返り父親を探した。
	同じ人の姿があることを完全に理解していなかったため。
 e.g., Bower,1982; Meltzoff & Moore,1995,1998; Moore, Borton & Darby, 1978; Xu & Carey,1996
	小さな乳児はnumerical identityにcluelessではなく、物体の同一性をtracingする基準が発達とともに変化することが示されている。
	
Object Identity as a Developmental Precursor to Object Permanence
物体の同一性を保持することは永続性を発達させるために必要不可欠である。
(Moore,1975; Moore & Meltzoff,1978)



INFANT'S REACTIONS TO OBJECT OCCLUSIONS: EVIDENCE OF REPRESENTAION, IDENTITY, OR PERMANENCE?
二つの視覚的反応:
	apatially directed looking & preferential looking 

preferential-looking effectsが永続性の理解を必要としないメカニズムによることを再検討する。

Overattribution of Permanence Baced on Anticipatory Looking
key question:
乳児の予測はものの見える軌跡の推定によるものなのか、スクリーンに隠れている間の見えない動きの推論によるものなのか?

重要な点は、発達的にも論理的にも、同一性の認識が乳児に存在を予測させる必要を生じないという点である。

Using the Split-Screen Technique to Disentangle Identity and Permanence
split-screen techniqueの利用による永続性の検討

[永続性を理解している乳児(permanence infants):]スクリーン1とスクリーン2の間を飛ばして通り抜けることができないことを理解。

[同一性を理解しているが永続性を理解していない乳児(identity infants):]スクリーンの間を飛ばして物体が移動しても驚かない。

FIVE-MONTH-OLDS MAINTAIN NUMERICAL IDENTITY ACROSS OCCLUSIONS BUT NOT PERMANENCE
Moore et al.(1978)の実験
	[目的:]
	 幼い乳児は物体のocclutionを同一性から解釈し、永続性からは解釈しない。
	 もしそうなら、永続性の解釈は発達するものである。
	[被験者:]
	5-9ヶ月児
	[デザイン:]
	split-screen situation(Figure3.2)

	[結果:]
	9ヶ月児:permanence,identityのviolations両方に敏感に反応。

TESTS OF EARLY PERMANENCE USING THE PREFERENTIAL-LOOKING TECHNIQUE
ここではBaillargeonとSpelkeによるpreferential lookingをもちいた研究の分析を行う。

9ヶ月以前でも物体の永続性の理解が可能であるという結果
(but see Bogartz, Shinskey & Speaker,1997; Fischer & Bidell,1991; Haith,1998)

があるが別の解釈を提言する。

A Reinterpretation of Baillargeon's Split-Screen Studies
Fig3.3に示すような落差のあるスクリーンの後ろをウサギの人形がとおる実験
(Baillargeon & Graber, 1987, Baillargeon & DeVos, 1991)

	[デザイン]
	possible: 短いウサギが見えない、impossible: 長いウサギが見えない
	[結果]
	1987の実験では5.5ヶ月児、1991の実験では3.5ヶ月児のimpossibleな出来事に対する注視時間が長かった。
	[考察]
	乳児は背の高いウサギが見えなくてもその高さを保持していると思っていたようだ。よって、スクリーンの落差にウサギが見えるに違いない、と推論した。だが見えなかったので驚いた。 object permanence を理解している証拠

しかし、Meltzoffらによれば、この解釈は強すぎる。 永続性よりも同一性保持によるものなのでは?
	[tall条件:]t2で出てくることを期待
	item[short条件:]t3で出てくることを期待

A Reinterpretaiton of Baillargeon's Drawbridge Studies

はね橋実験(Baillargeon, 1987,1991; Baillargeon et al., 1985)
	[被験者:]5ヶ月児
	[方法:]はね橋のように、スクリーンが回転する出来事に馴化させる。スクリーンの軌跡をさえぎるように、スクリーンの背後に箱を置く。possible: スクリーンが引っかかる、impossible: スクリーンが通り過ぎる
	item[結果と考察:]impossibleな出来事の注視時間が長かった。乳児は箱が覆いの後ろに隠れていても存在しつづけること、箱が固体であることを理解しており、そのためスクリーンが通り過ぎると驚いた、という過度な解釈

同一性による解釈
箱があるはずなのにない、というのを理解しているのではなく、単にあったはずの箱がなくなったという知覚と表象のミスマッチに過ぎない。

REINTERPRETING THE STUDIES OF EARLY OBJECT PERMANENCE
視覚的注意を測定することによって物体の永続性理解を確認できるが、操作による測定によってテストすることが難しいといわれている。
別のモジュールであるとする理論家も。

	乳児は物体がどこにあるかを「知って」いるが、その知識をもとに行動することができない。それは、行動を制御するモジュールが視覚的注意を操作するモジュールと分離しているからである。(Spelke,1994)

Meltzoffらの考えでは、視覚的な測定と操作による測定の間の基本的な関係を否定。乳児が手を伸ばさないのは、物体がどこにあるかわかっていないからである。
	その証拠 Moore et al.(1978)
	9ヶ月まで、見えなくなった対象をvisually searchしなかった。


NEW FOUNDATIONS FOR INFANT COGNITIVE DEVELOPMENT
ここでは、純粋な感覚運動期は存在しないということを示唆する研究について検討を行う。他にもこのことについて書く研究者は多い(e.g., Bertenthal, 1996; Gopnick & Meltzoff, 1997; Karmiroff-Smith, 1992; Mandler, 1988; Munakata, McClelland, Jhonson, & Siegler, 1997; Meltzoff, 1990; Meltzoff, Kuhl, & Moore, 1991, Meltzoff & Moore, 1998 Mounoud & Vinter, 1981)が、立場はさまざま。Meltzoffらは、乳児が生まれたときから何らかの表象能力を持つことを示すデータを引用する。

Representaional-Development Theory
ここまでのセクションでは、特定のドメイン内に限って話を進めてきたが、ここでは、ドメインをまたがる表象において起こる発達の可能性について検討する。

乳児が用いる表象には次の2種類があり、発達する順番があると考える。
[PP-representation:]以前に見た(知覚した)が、今は見ていない物体や出来事の表象
[NP-representation:]以前に知覚したことのない、見ることのできない物体や出来事の表象
Meltzoffらは、PP、NPの順番で発達すると考えている。

少なくとも5ヶ月から9ヶ月の間に、見たことのない出来事を理解するために、PPのみの状態からPPとNP表象の両方を用いることができる状態に移行する。これを発達的な変化を説明するための一部であると確信する。

SUMMARY
年少の乳児は、感覚運動的な行動に制限されていない。
表象は持続し、遅延があっても利用可能。このことを"representaional persistence"と呼ぶ。
representational persistenceはobject permanenceとは違う。永続性は物理的物体の存在の理解が必要だが、表象はその理解なしに保持できる。
世界はダイナミックに変化する。乳児の認知に関する重要なもののひとつとして、物体の数的同一性の保持があげられる。
表象システムの機能はprospectivelyであり、retrospectivelyである。
一般的なレベルにおいて、表象には発達的変化が見られる。

簡単に言えば、乳児はPiagetが予測したよりも豊かな初期状態をもち、概念発達があることも受け入れることを主張する。