混合燃料のデトネーション特性に関する研究

 天然ガスは石油や石炭に比べて燃やした際のCO2やその他の有害物質の排出量が少なく、クリーンな燃料として注目されています。また石油が中東を中心とした地域に生産地が偏在しているのに対し、天然ガスは日本近海にも比較的豊富に存在するため、供給の安定性の面からも重要なエネルギー源であると考えられています。

 私達は天然ガスをパルスデトネーションエンジンに利用できないかと考えています。天然ガスの主成分はメタンです。 しかしメタンはデトネーションになり難い性質があり、メタンを主成分とした天然ガスをパルスデトネーションエンジンに利用するためには、適当な方法でメタンガスのデトネーションを起こしやすくする必要があります。 解決策の一つとして、デトネーションになりやすい気体燃料をメタンに混ぜる方法があります。当研究室では、メタンに他種気体燃料を混ぜるとデトネーション特性がどのように変化するかを研究しています。


実験の詳細

 デトネーションは瞬間的に高温・高圧を発生させるため、デトネーションの実験は丈夫な管の中で行います。 実験には気体燃料はメタンとプロパン、もしくはメタンと水素を混合したものを用い、空気または酸素とアルゴンを混合した模擬空気を酸化剤に用いてデトネーションを発生させます。 発生したデトネーションは、イオンプローブを用いた伝播速度の計測と,すす膜記録法を用いてその詳細を調べます。




図1 デトネーション特性実験装置外観



実験結果

 図2,図3はメタン・水素混合燃料と空気を用いて得られたすす膜記録です。 メタンの含有率が増えると、すす膜上に記録されたセル模様(うろこ模様)が大きくなっている様子が確認できます。 およそデトネーション管の直径よりもセルの幅が大きくなると、デトネーションは管内を伝播することができなくなります。 メタン・空気混合気ではセル幅がおよそ30cmであるため、デトネーション伝播に必要な管の直径は少なくとも30cmが必要となり、パルスデトネーションエンジンには非現実的な、大きなデトネーション管を使う必要があります。実験例のように、他種燃料を混ぜることで任意にセル幅を小さくすることができれば、より現実的な管直径でパルスデトネーションエンジンを実現することができます。




図2 メタン・水素混合気のすす膜模様,セルサイズ大
メタン・水素・空気=9:1:31,1気圧)





図3 メタン・水素混合気のすす膜模様,セルサイズ小
メタン・水素・空気=1:1:12,1気圧)