プレデトネータ−パルスデトネーションエンジンの起爆および推力特性に関する研究

 パルスデトネーションエンジンにおいて、いかにデトネーションを起爆するかは非常に重要です。 デトネーションを起爆する方法には大きく分けると、燃焼器内に障害物を設置し、流れを乱して徐々にデトネーションに遷移させる方法と、大きなエネルギーを加えていきなりデトネーションを起こす方法の2つがあります。 本研究では酸素・燃料を充填したプレデトネータを用い、後者の方法によるデトネーション起爆に関する実験を行っています。

 さらに、デトネーションの起爆状態がパルスデトネーションエンジンに発生する推力に及ぼす影響も調べています。推力の測定は弾道振子法によって行ってい ます。


実験装置の詳細

 起爆実験用パルスデトネーションエンジンは、主にデトネーション管と、これに垂直に設置したプレデトネータから構成されています。 デトネーション管内には燃料(ガソリン)と空気の混合気が、プレデトネータには非常にデトネーションを起こしやすい燃料(ガソリン)と酸素の混合気が充填されます。 この状態でプレデトネータの点火プラグによって点火すると、プレデトネータ内の点火プラグに近い位置からガソリン・酸素混合気のデトネーションが発生します。 プレデトネータ内で発生したデトネーションはデトネーション管内に伝播し、簡単にはデトネーションにならないガソリンと空気の混合気を一気にデトネーションにします。

 デトネーションの起爆は、プレデトネータとプレデトネータ近傍のデトネーション管形状に強く影響を受けるため、この部分の形状を容易に変更できるよう装置が工夫されています。

 デトネーション管内のデトネーション起爆の様子は、圧力や火炎の伝播速度の測定、すす膜記録などの方法によって調べられています。 パルスデトネーションエンジンに作用する推力はワイヤーでエンジン本体を宙吊りにし、弾道振子法によって測定します。



図1 起爆実験用パルスデトネーションエンジン





図2 起爆実験用パルスデトネーションエンジン外観



実験結果

1.パルスデトネーションエンジンの推力測定および多サイクル運転試験

 パルスデトネーションエンジンの推力を測定する場合には、消音機を使うことができませんので、大音響を伴う爆発音とともに火炎が噴出します。




図3 推力測定時のパルスデトネーションエンジン




図4 多サイクル運転試験映像(10Hz,1秒間運転)


2.すす膜記録によるデトネーション起爆状態の測定

 デトネーション管内にすす膜記録板を設置し、デトネーション管内でどのようにデトネーションが起爆されているかや、起爆部の形状の影響を調べます。 図5はすす膜記録の例です。 すす膜上に記録された線の様子から、どの位置で爆発が起こり、デトネーションが開始したかを推定することができます。




図5 すす膜記録による起爆状態の測定