Study 01

界面とバイオ

タンパク質/ペプチドを使って界面をとらえる

じめに

無機材料を標的にした結合ペプチドの取得は2000 年に化合物半導体材料であるガリウムヒ素を標的にしたペプチドが創られて以降、注目を集めることとなった。これまでに金(Au)をはじめ20種類以上の様々な無機物に対するペプチドが選択されている。タンパク質/ペプチドと無機/有機の固体界面の結合にどの程度の選択性があるか、またその選択性や結合力を引き出して利用するにはどのようにすればいいかに関しては未知の部分が多い。
 
タンパク質/ペプチドと無機/有機の間の引力としては、分子間力、静電的な力、疎水的相互作用、そして斥力としては電気二重層、水和の斥力がある。これらの力は、タンパク質/ペプチドの配列(一次構造)で当然変化するが、二次構造や三次構造も大きく影響することがわかってきた。現時点での経験から言って、結合力を高めたければ、天然変性領域を使うことが一つの選択肢になると考えられる。逆に選択性を高めたければ、環状ペプチドのなどのしっかりした構造が考えられる。将来は自由に特異性を引き出したり、結合力を高めたりしたいと考えている。
 
結合ペプチドをランダムペプチドライブラリーからスクリーニングすることもできるが、我々は目的の無機結合タンパク質の基になるタンパク質を自然界から選びだし、そこからペプチドを限定するという方法を得意としている。また、対象をアスベストやエクソソーム、半導体にすることで、応用性に優れた技術としたいと考えている。
 

アスベスト

スベストとは、天然に産出する極めて細い繊維状の鉱物のうち、工業的素材として用いた数種のケイ酸塩鉱物の総称である。「奇跡の鉱物」と呼ばれ長い間いろいろな用途に利用されてきた。しかし、その繊維は、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫、肺がんを起こす危険性があることがわかり、現在ではほとんどの先進国で使用が禁止されている。アスベストの検査は複雑で、最終的には電子顕微鏡とX線による元素分析で同定する。アスベストを見分けるタンパク質/ペプチドが開発できれば、検査が迅速に行える。

 

 

エクソソーム

エクソソームとは、細胞から分泌される直径30-120nm程度の脂質二重層膜に覆われている細胞外小胞である。その内部にはマイクロRNAmiRNA)など細胞の情報が高度に保存されていることから、ガンなどの新たなバイオマーカーとして注目されている。また近年、間葉系幹細胞由来のエクソソームが、抗炎症作用や複合的な免疫制御作用を持つことが明らかとなり、エクソソームそのものを治療薬として利用する研究が活発に行われている。 脂質二重層という有機の界面に対して結合するペプチドを開発してエクソソームの分析に貢献しようとしている。


 

半導体

シリコン半導体(表面はシリコン酸化膜)に結合するタンパク質を利用することで、半導体バイオセンサーを造るプロジェクトを行っている。ここでは特にタンパク質/ペプチドとの強固な結合が求められており、そのためにどの様なものを作り出せばいいかに挑戦する。シリコン結合タンパク質と目的タンパク質の融合タンパク質は、混合するだけで固定化するので、デバイスは全く修飾する必要がない。また、配向性よく固定できるため目的タンパク質の活性が高いという特徴を持つ。
 

 

  

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