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本章のまとめ

本章では、「柔らかな情報処理」を実現するための基礎理論として、特に、多 変量データ解析の理論について考察した。多変量データ解析手法を一般の非線 形写像を許すように拡張し、各手法が本質的にどのようなデータ処理を行って いるのか、あるいは、データの持つ確率的な構造をどのように抽出しているの かについて明らかにした。また、各手法の相互の関係についても明らかにした。 さらに、従来の線形手法が非線形手法のどんな近似になっているのかについて も明らかにした。

非線形の多変量データ解析手法を実際に応用するためには、データの背後にあ る確率分布に関する完全な知識が必要である。しかし、実際には、この確率分 布に関する知識を完全に知ることは難しいので、何らかの方法でそれを推定す る必要がある。逆に、もし何らかの方法でデータの背後の確率分布に関する知 識が推定できるなら、本章で展開した非線形の多変量データ解析手法によって 最適な表現を求めることが可能となる。また、従来の線形の多変量データ解析 は、線形モデルの枠内でデータの背後の確率的な構造を抽出しようとする手法 であると言える。さらに、階層型ニューラルネットもネットワークの制約のも とでデータの背後の確率構造を抽出しようとしていと考えることもできる。こ うした考察は、従来の線形の多変量データ解析手法や階層型ニューラルネット を、実際問題に応用する際に役立つものと期待できる。


Takio Kurita 平成14年7月3日