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はじめに

データ圧縮は、情報の伝達、蓄積、利用などのための実際的な手段として重要 な技術である。現在、我々が利用する情報は画像や音声を含むマルチメディア 情報へと拡大している。それに伴いデータ圧縮への要求はますます大きくなっ てきている。本章では、データ圧縮のために統計的手法を応用する例としてカ ラー画像のデータ圧縮について考察し、カラー画像を小ブロックに分割し各ブ ロックを2色で近似することによりデータを圧縮する方法を提案する [81,97]。

濃淡画像を小ブロックに分割し各ブロックを2つの濃淡値で近似する方法は、BTC (Block Truncation Coding)と呼ばれ、Delp と Mitchell [23] によ り提案され、その後いくつかの改良が試みられてきた [4,106,115,170,175]。 それは、画像の輪郭線などの目につく画像特徴を保存したまま目立たない詳細を無視 するような画像圧縮法として知られている。各ブロックの圧縮には、1ビットの適応 的スカラー量子化器が使われる。大津らは、平均2乗誤差最小の意味で最適なスカラー 量子化器を利用する最小2乗 BTC を提案している[132]。

BTC によるデータ圧縮は、通信の際の雑音にも強く、しかも、マイクロプロセッサ上 に非常に簡単に実現できる[23]。また、1パスの圧縮が容易に実現できる ので、実時間の画像圧縮なども可能である。

本章では、この方法をカラー画像に拡張する。提案する手法では、スカラー量子化器 の代わりに1ビットの適応的ベクトル量子化器を用いる。ブロック内の画素の色情報 の主成分分析 [22,68] によって得られた主成分スコアを用いて、 各ブロックで適応的にベクトル量子化器を設計する。ブロック内の各画素はそのベク トル量子化器によって2つのクラスに分類され、2色で近似される。従って、ブロッ クは各クラスに割り当てられる色の情報と各画素がどちらのクラスに属しているかを 示すビットマップに符号化される。画像を復元するには、そのビットマップに従って 各画素に2つの色のうちのどちらかを割り当てれば良い。従って、ブロックのサイズ を $4 \times 4$ とし、色情報を各色 $8$ ビットの合計 $24$ ビットで表すとする と、画素あたり $4$ ビットで表現できることになる。ブロックのサイズを $8
\times 8$ とすると、$1.75$ ビット/画素となる。

以下では、まず、カラー画像の BTC アルゴリズム (CBTC) を示し、次に、量子化誤 差を削減するための改良法を示す。最後に、画像圧縮実験の結果について述べる。



Subsections

Takio Kurita 平成14年7月3日