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2003年09月


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2003.09.29

毎日、PCRやクローニングなどの実験をしながらその合間にデータベース解析をしているわけだが、いやむしろデータベース解析の合間に実験をしているのだが、いまの僕の研究対象はゲノム内に大量に存在している「トランスポゾン」(動く遺伝子)などの反復配列なので、つまり、検索をかけると莫大な数のDNA配列がヒットしてくることになる。その中から自分が求めている情報を探し当てないといけないので、藁の中の針さがしとまでは言わないが、GATCおよび数字とにらめっこの時間が長く続いて、なかなかしんどい作業である。いままでは、ヒットした配列の名前と、ヒットした領域をとにかくエクセルに流し込んで、ソートして、関数を使っていろいろ条件を絞っていって、情報を探し当てるということをやっていたのだが、どうも効率が悪いので、GATCとか数字とかを見なくてもどこにどうヒットしているかを直観的に把握できるようにしたいなあ、と思い、いろいろ考えていた。結局、土曜日にふと思い立ってPerlで短いプログラムを書いて数字のデータを図に変換してみたら、これがものすごく分かりやすい。1000とか2000あるヒットを、ものの10分ほどでサーベイしてしまえるようになった。いままで数字とにらめっこして唸っていたのがばからしくなる。というわけで効率は上がったのだが、結果の方は、うーん、今のところあまりクリアとは言えない。もっといろいろな配列を使って調べてみないと駄目みたい。

明後日から後期授業の開講。
ほんとのこと知りたいだけなのに、夏休みはもう終わり――なんて口ずさんでみる。
もうとっくに秋なのですが。


2003.09.28

買った本メモ:仲正昌樹『「不自由」論』、D. E. G. Briggs, D. H. Erwin, F. J. Collier, C. Clark『バージェス頁岩化石図譜』、塩田丸男『フグが食いたい!』、芳崎せいむ『金魚屋古書店出納帳』(1、2)、TONO『ラビット・ハンティング』(1)、吉崎観音『ケロロ軍曹』(7)、小箱とたん『スケッチブック』(1)、山田風太郎&せがわまさき『バジリスク 甲賀忍法帖』(1)、ジョージ朝倉『ハッピーエンド』。

世界の猫百科とかいうテレビ番組を見ていたら、ベンガル山猫と家猫の掛け合わせでできた品種「ベンガル」というのが出てきた。ブリーダーの人は「ベンガル山猫は人に慣れず、人を寄せつけないが、私はどうしてもベンガル山猫を抱いてみたかった。だからこの品種を作った」というようなことを言っていた。こういうのを聞くと、うーん何だかなあ、と思うのだけど、まあ人はずっと家畜に対してその類いの事をやってきたわけだから、いまさら非難してもという気もするし、複雑な気分だ。うまく言えないが、何というか「山猫に失礼だ」という気がするんだよね。まあ猫たちじしんには罪はないので、かれらが生まれ、増えていくこと自体を否定する気はないけれども。小泉義之なら交雑万歳と言うのだろうね。(『生殖の哲学』は、とても面白い本だった。)


2003.09.25

最近購入した本のメモ:小林泰三『目を擦る女』、アルンダティ・ロイ『帝国を壊すために』、鶴田謙二『Forget me not』(1)、森川ジョージ『はじめの一歩』(66)、田中耕一『生涯最高の失敗』、Robin Williams『The Non-Designer's Design Book』、姜尚中他『「イラク」後の世界と日本』、竹村和子編『"ポスト"フェミニズム』、小野不由美『くらのかみ』。

23日の日記に写真を追加。


2003.09.24

ずいぶん手こずったけど、パズル「Polo-Australia」が解けた。評判どおり、解けて納得の美しい解。次は「CAT-FACE」に挑戦だ。


2003.09.23

動物学会も無事に終わり、日常に復帰しつつある。昨日から出勤して、実験を再開。同時にデータベース解析も再開した。学会帰りでモチベーションが上がっていることもあって、やりたいことがたくさんありすぎて、何から手を付けたら良いか混乱するが、絞っていかないと到底自分一人の手に負えないのは分かっているので、まずは冷静に頭を整理しないといけない。
今日は祝日なので午後から大学に出て明日の仕込みを少しだけして、あとは自宅で仕事をした。特に長年の懸案事項だったiBookの散らかりまくったHDを整理して、だいぶすっきりさせることに成功した。Carbon Copy Clonerで外付けHDにいったんコピーを作り、内臓HDをフォーマットし直して、もう一度コピーのコピーを作るとHDのフラグメンテーションが解消できるというので、それもやってみた。ついでにswapファイルは別パーティションに移した。心なしか動きが速くなったような気がする。

動物学会は去年はドイツにいて出られなかったので2年ぶりだった。前日(16日)に羽田経由で函館に飛び、バスで函館駅へ。駅前の朝市は昼過ぎでもまだ開いていたので、早速食堂でウニ、イクラ、ホタテの3色丼を食べる。旨い。
ホテルに荷物を置いて、函館市内観光へ。函館は何度か来た事があるので、まだ行った事のない場所をと思い、青函連絡船「摩周丸」を改造した連絡船博物館を見学。ブリッジの機器類を触って遊ぶ。
海沿いをぶらぶら歩いて、赤煉瓦倉庫へ。土産物屋を覗いていたら、Nさんにばったりと出くわし、やあやあ久しぶりとご挨拶。しばらく近況を聞いたりする。彼女は待ち合わせがあるというので、じゃあまた明日と別れて、また周囲をぶらぶら。
地ビールの「函館ビール」というのを飲んでみたいと思っていたら、うまいぐあいに函館ビールを出す海鮮レストランがあったので、少し早いかなと思いつつも入って、早速ヴァイツエンを一杯。肴はニシンの焼き物にイカの刺身、そしてツブの刺身。追加でアルトも一杯飲んで、満腹。
ホテルに帰ろうとぶらぶら歩いていたら、駅前でD君とばったり。学生さんたちと仙台からバスとフェリーで今着いたところだという。いったんホテルに行くが、あとでもしかしたらH君やY君と飲みに行くかも、と言うので、もし行くなら電話して、と言って別れる。しかし結局疲れて寝てしまったそうで、飲み会はお流れ。もっともこちらも疲れて寝ていたし、発表前日でもあったので、その方が良かったかも。

学会1日目。朝から朝市で朝飯(銀ダラ定食)を食って、途中で会ったT君と一緒にバス停へ。既に長蛇の列が出来ている。すし詰めの臨時バスで函館大学へ。午前中はニハイチュウの話から始まって、カエルの変態の話、内分泌撹乱物質関係の話など。午後の一番で自分の発表だったので、早めに食事を取って、会場を下見に行こうとしたら、学会誌の編集会議に使われていて入れない。仕方ないので休憩室でお茶を飲んで、そこで会ったKさんと近況の話など。
自分の発表は、さすがに大入り満員とは行かなかったが、そこそこ人も入ってくれて、まあ満足できる出来だった。次が人気のあるホヤの話だったので、そちらを聴きに来た人が多かったのだと思うが。反響が気になったが、Oさんがプローブに使いたいのでクローンをくれないかと言ってくれたのと、なにより京都の師匠が「面白かった」と言ってくれたのがうれしかった。ここ数年、それまでとはまったく違うテーマで手探りで研究を続けて来たが、自分が面白いと思っている事がちゃんと他の人にもアピールするのか、やはり不安ではあった。他に同じような視点で研究をしている人もあまりいなさそうだったし。でも、最近、ようやく、やっぱり面白い、と多少自信を持てるようになってきた。そんなときに、尊敬する(いや本当に)師匠から「面白い」と言ってもらえるのは、やはり励みになる。
午後はそのまま同じ会場でホヤとカブラハバチとボルバキアの話を聴いて、そのあとシンポジウム「生物多様性研究への多様な取り組み」を聴き、夜は関連集会「胚誘導と形態形成」を聴きに行く。Xenopusのゲノムプロジェクトの話は参考になった。Xenopusの脳の再生の話も面白かった。
疲れたのでホテルに戻り、近くの居酒屋で食事。ホッキの刺身、ニシンの焼き物、ホタルイカの煮付けなど。

学会2日目。やはり朝市で鮭ハラス定食。今日はポスター発表のみで口演は無し。会場も昨日とは別の市民会館である。行きの電車でNさんに会い、学会賞おめでとうございますと挨拶する。
開会前に一通りポスターを下見しておこうかなと思って早めに会場に行ったのだが、H君とU君に会って話しているうちにそんな時間はなくなる。ポスターで聴いたのは。K君のカイコのトランスポゾンの話、T君のアルテミアの近交系の話、O君のラボのホヤの内柱の話、H君のカシパンの原腸形成の話など。聴きたいものすべてを聴ききれないのはいつもの事だ。恒例の高校生の研究発表もあって、広島の国泰寺高校の科学部の生徒さんたちがオオサンショウウオの反復DNA配列について制限酵素で調べるという研究をしていたので、それも聴いてきた。なかなか意欲的にやっていて、将来が楽しみである。うちの学部に来ないかな、というのもあって、名刺を渡して来た。
午後からは動物学会賞の受賞者講演。今年の受賞は阪大に移った西田さんで「ホヤ初期胚発生過程における発生運命決定機構の解析」というテーマ。まあ西田さんはいつ受賞してもおかしくなかったし、受賞者2名という年も多い中で今年は単独受賞というのも、西田さんなら納得というところ。その分、受賞者講演の時間が長くなるのも、聴く方としてはうれしい。講演の内容は、とにかく圧巻であった。アイディア、テクニック、データのクリアさ、モデルの美しさ、すべてがすばらしく、時間を忘れて聴いた。1時間があっという間だった。浅虫で西田研のみんなと一緒に実験していた頃のデータもたくさん紹介されて、懐かしかった。懇親会会場へのバスの中であったWさんと「やっぱり西田さんはすごいねえ」と話す。
懇親会はさすがに函館で、料理は旨かったし量もたっぷり。イトウの刺身をはじめ、珍しいものも食えた。浅虫で世話になったN先生に久しぶりに会えたのも、函館だからか。いろいろな人と話をしている間に、あっと言う間に2時間。その後は、長らく海外だったので久しぶりに会ったH君、そしてT君、Mさんら、浅虫仲間と近くの焼き鳥屋でしばらく飲み、そのあと、受賞パーティーが終わった西田さんご一行と合流して3次会。この頃になると、もう相当に疲れて、頭が働かない状態だったが、NさんやD君や、なにか久しぶりに懐かしい人たちがそろったので、とても楽しい時間を過ごすことができた。結局、ホテルに帰ったのは2時頃。

学会3日目。だいぶ飲んだ割にはちゃんと目覚めて、午前中は分類・系統の会場で共生関係の話から系統地理学の話、そしてN君のオタマボヤの筋肉遺伝子の話、京都の師匠のユウレイボヤゲノムの話、ナメクジウオの分子系統の話などを聴く。そのあと会場を移ってK君のホヤ中枢神経系遺伝子のプロモータ解析の話、そして佐藤研のホヤでMinosを使ってエンハンサートラップをやったという話。午後はプラナリアと両生類の再生の話、最後は生態の会場でサンショウウオの幼生の生活史の話と、水族館でのウミガメの繁殖行動の解析の話。以上で終了。
函館駅方面に戻ってお土産を買い、ラーメンを1杯食べて、バスで空港へ。この日は羽田へ飛んで、東京泊まり。

東京では本屋さんめぐり。池袋ジュンク堂、まんがの森、渋谷まんだらけ、そして神田の古書店に行って来た。結局買ったのは、大野乾『遺伝子重複による進化』、石川統『共生と進化』、岡田節人編『脊椎動物の発生』(上)、内田善美『ひぐらしの森』、三原順『ルーとソロモン』(1)(2)、樹村みのり『ふたりが出会えば』、吾妻ひでお『産直あづまマガジン』(3)など。『脊椎動物の発生』は定価25750円が4500円になっていたので、これは私費でも買えると思って購入した。

秋葉原にも寄って、Mac系の店をひやかす。駅前の露店のパズル屋さんで、パズルを3つ購入。Edi Nagataさんの「フレイムシリーズ」から「Polo-Australia」と、「CAT-FACE」、そしてYananose Junichiさんという方が作ったという「Holey Rectangle」。どれも手強そうで楽しみ。

せかっく東京に来たのだからと、丸の内で「カウパレード」を見物してきた。cowParade
とても全部は見てまわれなかったけど、うん、なかなか面白い。プロの作品と、8歳の子供の作品が同列に並べてあるのも良いね。
これと似たオブジェに、ベルリンの熊オブジェがある。街のあちこちにペイントされた熊が置いてあって、ベルリンのシンボルというか名物になっている。
berlin-bear
berlin-bear
いくつくらいあるんだろう。あまりにたくさんあったので見当もつかない。僕が滞在していたマックス・デルブリュック分子医学研究センターにも、真っ青に塗られた熊が立っていた。(青はセンターのシンボルカラーなのである。)
berlin-bear
去年の夏に訪れた時には、ブランデンブルク門の近くの公園に、各国のアーティストによってペイントされたたくさんの熊たちがずらりと円形に並んでいて、とても壮観だった。
berlin-bear
berlin-bear
berlin-bear
今年の春にもう一度行ってみたら工事か何かで更地になってしまっていたが。
そのベルリン熊公園(と我々は勝手に呼んでいる)で熊を見物していたときに同居人Tomが言うには、熊アートには2種類あって、熊オブジェを「熊」として捉えた上で、その熊に何か装飾を施す、というやり方と、熊オブジェを単に「変わった形のキャンバス」として捉えて、それが熊である事にあまり捕われずにアートを描く、というやり方がある、と。なるほど言われてみるとその通り。もちろん、どちらともつかない物もあるけれども、アーティストの態度として、大きくこの2つの方向性があるように思える。今回見た牛の場合も、やはり彼女の言うとおりで、これこれは前者だろうし、これこれは後者になるのだろう。僕の好みとしては、その形が牛であること、熊であることの特性がより面白く引き立つという意味で、前者のようなタイプのオブジェの方が好きだ。ところで、いまWebで牛をブラウズしていてこの素敵な牛を見ていないことに気付いた。丸ビルには行ったのに…。残念。


2003.09.11

岩波書店の「1冊でわかる」シリーズから『テロリズム』(チャールズ・タウンゼンド)と、『文学理論』(ジョナサン・カラー)を購入。このシリーズはOxford University Pressが出している、"A very short introduction"という入門書シリーズの翻訳で、日本で言えば新書のような位置づけなのだと思うが、値段は1400円ということで新書の倍。テキストの量から言えば新書フォーマットに入らない量ではないと思うが、さて内容は倍の値段の価値はあるだろうか? 書き出しの部分はどちらも期待させるに十分だが。

動物学会のOHPを一通り作り終えて、発表の練習をしてみたら、持ち時間12分のところ、15分かかってしまった。だいぶ削らないといけない……。データはもちろん削りたくないし、だとするとイントロを削らないといけないのだが、イントロを短くしても研究の趣旨をちゃんと理解してもらえるか、不安だ。「さてみなさんお馴染みの……」という話なら良いんだけど、これは誰もやっていないようなネタだし、しかも去年はドイツに行っていて動物学会には出ていないので、一昨年ポスターで話しただけの話の、バックグラウンドを覚えていてくれている人はまずいないと見て良いだろうし。

日曜の日記に書き忘れていたので書いておこう。広島市内で電車(市電のことね)に乗って、見るともなしに外を見ていたら、信号待ちの時に小さな神社が目に入った。稲荷町のあたりにある稲生神社という社である。その参道の石段に幟がいくつか立っていて、「寄進、衣笠祥雄」というように、寄進者の名前が書いてある。それだけならどうということもないのだが、そのそばに立っている1本の幟を見て驚いた。寄進者の名前が「京極夏彦、荒俣宏、水木しげる」なのである。この幟がいつから立っていたのか、今まではまったく気付かなかったのだが、これを目にしたとたん、何の変哲もない神社が急に怪しげに見えてきた。いったいどういう縁りがある神社なのか。おそらく物の怪あやかし関係なのだろうけれど、大都会の真ん中にひっそりと立つミステリー・ゾーンという趣である。
で、ネットで検索してみたら、この稲生神社というのは『稲生物怪録』の稲生武太夫にゆかりの神社らしいのですね。まあもともとは三次の神社らしいので、市内の神社は分社なのかもしれないのだが。ふむふむ。今度近くに行ったら立ち寄って由来書きでも見てこようっと。


2003.09.09

抽出したRNAのチェック。うまく取れているようなので、よし明日はノザンブロットをしようとゲルを作る。夕方には新しい実験のためのプライマーも届いたので、フグゲノムでのPCRも試さないといけない。それとペット屋から新鮮なフグを入手して、RT-PCR用のRNA取りをして、それからそれから……。という具合に、やりたいことが山積している。
しかし動物学会まではまともに仕事にはならないし、動物学会が終われば、もうすぐに後期授業の開講である。夏休みなんてあっと言う間だ。


2003.09.08

オタマジャクシからRNAを抽出。

『7日間でマスターするレイアウト基礎講座』を読んでいる。面白い。そして役に立つ。いままで学会発表やセミナーのスライドはほとんど我流で作ってきて、まあそんなに大失敗はしていなかったと思う(思いたい)のだが、やはりどのフォントを選ぶかとか、サイズはどうしようかとか、図と文字の配置とか、悩む事が多かった。この本では、図版や文字をどのようにレイアウトすればどのように見えるか、というのを基本から説明してくれて、なるほどと思う事しきりである。経験的になんとなく感じている事であっても、ちゃんと言葉で説明されるとしっかり身に付く感じがする。
さてそれは良いのだが、読んでいたらいま作っている動物学会用のOHPを全面的に作り直したくなってしまって、半日かけて直しの作業をしてしまった。おかげでだいぶ改善はされたと思うが、こんなことに時間をかけていて良いのかなあ、とも思った。まあそもそも、今頃になってレイアウトの本なんか読んでいるのがまず間違いなのであって、こういうことは大学院生の頃にでもちゃんと勉強しておくべきことなんだろう、本当は。でも手軽にレイアウトをいじれるようになったのって、僕にとっては、やはりデジカメから写真をMacに取り込み、編集し、Macから直接プロジェクタに映したり、OHPを手軽にカラープリントできるようになって以降のことなので、つまり高々ここ数年ぐらいのことなのだ。昔は写真屋で焼いてもらった写真を色合いが気に入らないなどとぶつぶつ言いながら手でトリミングして、インレタで文字を入れて、それをもう一度リバーサルフィルムに撮って、半日で現像してくれる写真屋に走って……、なんてことをやっていた訳で。とてもレイアウトどころではなかったのである。


2003.09.07

同居人Tomが行きたいと言うので、宮島水族館に行ってきた。西条からJR宮島口まで電車で約1時間、フェリーに乗り換えて約10分。西条に住んでいると、宮島はお客が来た時に連れて行くには手ごろなので、もう何度も訪れている。松島、天橋立と並んで日本三景と言われる宮島だが、実際には訪れるたびに「日本三景?」と感じてしまうのが正直なところ。そのため「宮島なんて、ねえ」という気になるのだが、しかし今回、船から島を眺めつつよくよく考えてみると、いつも歩いているのは厳島神社や水族館のある海沿いの平地、つまり極度に観光化されている地区だけなんだよね。実際には島内には結構高い山もあって、実はそちらの方を歩いてみると、今まで知らなかった面白さがあるのかもしれない。猿もいるし。それに、この前の進化学会で聴いた話だが、宮島には矮小化している植物が多いのだそうだ。見る人が見ればその辺の生態的な特徴も面白いのかもしれない。残念ながら僕は植物に関しては「見る人」ではないので、何も違いが分からないかもしれないが。今回も海沿いしか歩かないけど、次に来るときには山の方へ行ってみようか。そんなことを考えながら水族館へ向かった。
途中、例によってたくさんの鹿に会う。前は気付かなかったのだが、「餌をやらないで下さい」の看板がけっこうたくさん立っている。その割に、鹿せんべいを売っていたりもする。なぜ? さらに水族館への道中、小さな水路があって、その石垣の下に、近くの食堂の人が撒いたものなのか、白い米の飯がどさっと置いてあり、それを鹿が2頭、がつがつと漁っている。地元の人はいつもこうやって餌をやっているの? 鹿の食糧事情がよくわからない。
shika
しばらく様子を見ていると、餌の匂いを嗅ぎ付けたのか遠くから何頭もの鹿が集まってきて、押し合いへし合い頭突きで押しのけ合い。うちの猫たちよりも意地汚い動物を久しぶりに見た。少なくとも腹一杯食べてはいないようだ。背中にご飯粒が付いてるよ、きみたち。
shika
宮島水族館はずいぶん久しぶり。宮島名物といえば「お散歩ペンギン」だが、今回もいました。飼育係のお嬢さんにつれられてよちよち館内を歩きまわり、背中をなでさせてくれる。可愛い。子供たちに大人気である。加えて大人気ない大人たちにも大人気である。
penguin 
大人気ない大人の一人として触ってみると、背中の羽毛は水を弾くためであろう、密でけっこう固いのだが、首のところの羽毛は柔らかくて、気持ち良かった。なでていて思ったのだが、ほ乳類には毛をなでたり(なめたり)、なでられたり(なめられたり)するのが好きなものが多くて、それが一種のコミュニケーションにもなっているわけだが、鳥はどうなんだろう。羽づくろいが必要だという点では、毛づくろいが重要なほ乳類と共通するところがあるようにも思えるが。なでられて気持ち良いのかな? 少なくとも嫌がってはいないようだったが。飼育係のお嬢さんに名前を訊いたら、「花ちゃん」だと教えてくれた。あ、もちろんペンギンの名前ね。
さて、鳥も魚も無脊椎動物も良いけど、観ていて飽きないのはやはりほ乳類である。この水槽にいたあざらしは2頭。ゴマノスケとラン。兄と妹だそうだ。人の動きに反応してくれるのが面白い。
azarashi azarshi
水族館を出ると午近くで、汐がだいぶ引いていた。
島に着いた時は、
torii
こんなだったのが、水族館を出ると、
hama
こんな感じである。
hama
潮干狩りをしている人たちが何人かいた。僕と同居人Tomも落ちていた竹片で砂を掘って、
hama
二枚貝、ゴカイ、ナマコ、カニ、ヒラムシ、その他いろいろと見つけた。

帰りに宮島口で穴子飯。ウマー。

広島市内で買い物。デオデオで自宅用の外付けHD(ヤノの120GB)。ハンズで自転車のパンク修理用パッチ、テールランプ。ジュンク堂で、視覚デザイン研究所編『7日間でマスターするレイアウト基礎講座』、ピエルルイジ・コッリーナ『ゲームのルール』、黒田硫黄『映画に毛が3本』、唐沢俊一編著『なぜわれわれは怪獣に官能を感じるのか』、映画秘宝『セクシー・ダイナマイト猛爆撃』などを購入。


2003.09.04

注文していたLaCieの200GB外付けハードディスクがようやく届いた。注文してから4週間くらいかかった。お盆を挟んだにしても遅すぎるよ。iMacの内臓HDもけっこう大きいのだが、最初に変な具合にパーティションを切ってしまった私が馬鹿で、使いにくくて仕方がない。もう一度フォーマットして切り直すにしてもデータをどこかに移しておかないといけないので、日常のバックアップ用も兼ねて1台外付けを買う事にしたのだった。いちいちCDにバックアップ取るもの面倒だしね。HDならバックアップも自動化できる。今日のところはCarbon Copy Clonerでシステムディスクをコピーして起動ディスクを作り、内臓ディスクの各パーティションに散らばっていたいろいろなファイルを整理して、おおむね整理がついた。あとは大事なデータを念のためDVDに焼いた上で内臓ディスクをまっさらにして、もう一度外付けからコピーし直す。明日中にできるかな。HDがすっきりすれば、念願の「ゲノム配列データをFTPしてきてMac上でローカルに配列データ解析を行う」というシステムを作れる。やりたいことはいろいろ溜まっているので、楽しみだ。動物学会前は忙しくて無理かもしれないけど。


2003.09.03

動物学会の準備はなかなか終わらない。まだ10日ほどあるので焦る必要はないのだが、どうも話の筋がびしっと決まらなくて、悩ましい。8月の進化学会のを使い回せれば楽なのだが、話のネタがだいぶ違うし、持ち時間も短いし、発表の形態もOHPだしで、やはり根本から作り直さないといけない。うんうん言いながら作っている。しかしOHPを作るにしても、Keynoteはやはり良い。PowerPointは使うのが苦痛だが、Keynoteは楽しい。それがせめてもの救いである。

鈴木クニエさんが先週の日記に初トリビアという話を書いていらっしゃったが、僕もたまたま先週、「トリビアの泉」を初めて観たのだった。で、「原哲夫はふかわりょうのいとこ」というトリビアは、僕も同居人のTomも「ふかわりょうって誰?」状態で、皆が何に「へぇ!へぇ!」言っているのか(ていうか言わしてるのか)さっぱり分からなかったのだった。たぶんふかわりょうっていう人は、原哲夫とものすごくかけ離れたイメージの人なんだろうね、きっと、と思ってみても、それが最高点を叩き出すほどのトリビアだとはどうしても思えないのだった。ふかわりょう……。検索すればすぐ分かるんだろうが、検索する気にもならない。今週最高点を出したのは、「111111111×111111111は12345678987654321である」というトリビアだったが、こちらは「へぇ!」というより「はぁ?」である。
それなりに面白かったのは「トリビアの種」というコーナー。視聴者から寄せられた疑問を実際に調べてみるという企画である。今日のお題は「日本で一日に切られる髪の毛の長さはどれくらい?」という疑問。この手の概算をちゃっちゃとやって、だいたいこれくらいのオーダーと見当を付けるっていうのは面白い遊びで、理系の人には好きな人が多いんじゃないかと思う。この番組では、実際に美容院や理髪店から髪の毛を集めて、1軒あたりで切られる髪の長さを求め、それに全国の店舗数を掛けて答えを出していた。いろいろ考えるよりとにかく力技で調べてしまおうというやり方で、センスは悪いけど、これはこれでどういう答えがでるのか、興味はそそられる。で、その答えがだいたい8000万kmだという。8 × 10^7 km つまり 8 × 10^10 m。地球と火星の軌道の距離くらい。
ふーん、と思って、じゃあ髪の伸びる量は? と、ちょっと計算してみた。頭皮の面積をだいたい半径0.1mくらいの円と考え、髪の密度を1平方センチあたり100本つまり1平方メートルあたり100 × 10^4本くらいとして髪の本数を概算し、「髪の毛に不自由している人」もいるから、その分割り引いて髪の量はまあ「不自由していない人」1億人分くらい? 一本の髪が一日に0.5mmくらい伸びるとして、日本で一日に伸びる髪の長さの概算は……、あ、πは3として(笑)、
{π × 0.1^2 (平方m/人))} × {100 × 10^4 (本/平方m)} × {1 × 10^8 (人) }× {0.5 × 10^-3 (m/本)}
= 3 × 5 × 10^( -2 +2 +4 +8 -1 -3) (m)
= 1.5 × 10^9 (m)
だから、ほぼ10^9 m、つまり10^6 km = 100万 kmくらいのオーダー。
……って「トリビア」の結果とぜんぜん違う (^-^;。
上の計算は髪の密度と頭皮面積の概算がいい加減なので、そのせいかと思い、人の髪の量について検索してみた。このページによると、「日本人の場合、少ない人では7〜8万本、多い人で11〜12万本」だそうだ。3 × 10^4本というのは3倍くらいのunder-estimationだった。ついでに髪の伸びる速さも検索。このページによると1日に0.3mmとのこと。こちらは多少over-estimationだったようだ。
さて、すると、すべての髪の毛がこの速さでちゃんと伸びるなら、一人の髪の毛は1日に
0.3 mm × 10万 = 0.3 × 10^-3 × 10^5 m = 30 m
くらい伸びることになる(まあそんなもんかな?)。一億人では、
30 × 10^8 m = 3 × 10^9 m
……やはり100万 kmのオーダーで、前の計算とあまり変わらない。もっといろいろ細かい修正が入っても、これが20倍以上変わるとは思えないなあ。髪の毛が伸びる以上に切られるはずはないわけで、「トリビア」の計算はやっぱりover-estimationじゃないかと思う。切られずに抜ける毛もあるだろうしなあ。特殊な地域のデータを使って、人じゃなくて店舗を単位に計算したのがover-estimationの原因じゃなかろうか。


2003.09.02

最近なにをやっているかというと、動物学会の準備である。発表するデータをいまさらのように取っていたわけだが、まあそれもだいたい目処が付いて(あきらめて)、スライドと原稿の準備をしている。その合間に少しづつ新しい実験も。12月の分子生物学会にもポスターを出す予定なので、その要旨を書いたりもしていた。残暑のせいか今ひとつ調子が出ないが、物事は少しづつ進んではいる。

2週間ほど日記を書いていなかったが、もちろんその間にもいろいろあった。ドイツの友達から来た質問のメールがmac付属のメールソフトである"Mail"によって「迷惑メール」に振り分けられてしまっていて、1週間も気付かなかったとかそういう酷い話もあったし、ドイツのラボとの共同研究で、どうやらもう少し気合いを入れ直してやらないといけない部分が出て来たり(ヨノナカソンナニアマクナイ)もしたしで、なかなか残暑が身に堪える8月末ではあった。

愛用している辞書ソフトJammingのアップデートのメールがきて、Longmanの新しい判(4th eds.)のCD-ROMデータを使えるようになったというので、早速第4版を買ってきてインデックスを作った。これでまた電子辞書の使い勝手がだいぶ上がった。あとはいつも使っている百科事典(スーパーニッポニカ)がJammingで使えるようになれば、ほぼ全ての用途は満たせるわけだが。

買い物メモを書いておく。いままで音楽関係のDVDはほとんど買っていなかったのだが、ここ2週間ほどで4枚買ってしまった。小島麻由美の『セシル座のブルース』と、クラムボンの『ベスト』(これはCD+DVDのセット)は、たまたま近所のCD屋で見かけて。どちらもルックス的に花のあるアーティストではない(微妙な表現)ので、DVDまで買わなくてもとも思うのだが、小島麻由美、クラムボン、そしてスガシカオは現在、自分の中で最も重きを占めるアーティストなので、まあ衝動買いも仕方ないか。小島麻由美のたぶん直筆によるチープなアニメプロモーションビデオには笑った。他にSandiiの『サンディーズ・ビューティフル・フラ』2部作、「笑顔のフラエンジェル達へ」、「愛するフラエンジェル達へ」をAmazonから。これは音楽というよりダンスに重点があるDVD。

小島麻由美といえば、最近ヘビーローテーションで聴いているのが小島麻由美の『夏の魔物』である。スピッツのトリビュートアルバム『一期一会』に入っているカバー曲であるが、これが本当に素晴らしい。この曲、小島麻由美のために書いたんじゃないの? というくらい、見事にはまっている。『拝啓、越路吹雪様』という、これもトリビュートアルバムで、小島麻由美が『ろくでなし』を歌った時も、ああ『ろくでなし』は小島麻由美によって歌われるために存在したのかと、勝手に納得したものだが、小島麻由美の歌の天才は、自前の曲だけに限らずに発揮されることが再度証明された一曲だと思う。毎日数回聴いて、そのたびにゾクゾクしています。

他に音楽では『女子十二楽坊~Beautiful Energy~』。これはまあ、こんなものかな、と。DVDでは『サボテンブラザース』。いまごろ出ていた事を知りました。酒場のダンスのシーンが最高に好き。本は『モンティ・パイソン・スピークス』、『サンディーのフラ・ビューティ』、『星がとびだす星座写真』、『陰摩羅鬼の瑕』、マンガは、榎本ナリコ『ホーム・ドラマ』、獣木野生『THE WORLD』3巻、羽海野チカ『ハチミツとクローバー』5巻、『昭和時代の傑作玩具たち』など。他にもあったと思うが、忘れた。

T3もカリブの海賊も555も観に行けていない私だが、『英雄 HERO』だけは日曜に観てきた。まず、映像は美しかった。いかにも欧米人に向けて、アジア的な「エキゾチックな」美を「ほら奇麗でしょう?」と見せているような、そんな美しさではあったけれども、それでも確かに美しかった。ワイヤーアクションも、ジェット・リー本来のアクションを殺しているという意見もあるようだが、あれはあれで面白かったと思う。さて、それはそうとして、映画としてどうかというと、いくつも不満が残った。まず無名および他の刺客たちの秦王暗殺に対する執着が十分に描かれていなかったように思える事。かれらが命を懸けてまで暗殺を遂行しようとする、その情念に観客が共感できてはじめて、彼等が行う様々な選択について感動が生まれうるわけだが、それが十分に表現されていたとは思えない。もう一つは、秦王がそれほど(天下を任せるに足ると思えるほど)の人物に見えなかったということ。秦王の器が十分に描けていなければ、残剣や無名のとった選択が説得力を持って腑に落ちてこない。あと個人的にはえらくかっこ良かった長空の出番があれだけかいというのも不満だった。120分くらいにして、その辺を描きこんでくれれば良かったのにと思う。でもまあ見どころがたくさんあるのも確か。音楽も良かったね。1500円分の価値は十分にあった。



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HIKOSAKA Akira - 制作者にメール