高イオン温度磁気ミラープラズマのドリフト波


静電プローブ:Electrostatic Probe (ESP)

プラズマ中の低周波揺動(<100kHz)を計測するために、中心閉じ込め領域には静電プローブ(ESP)が多数設置されており、イオン飽和電流を計測しています。写真に示したのは、内径約40cmのプラズマリミター上に設置されたESPの様子です。方位角方向に45度ずれているため、隣あうESP信号の位相差を計測することにより、励起された揺動が磁力線に対してどちら向きに回転しているかを計測することができます。ガンマ10の通常の実験条件では、中心付近の電位が正となるのでExBドリフトの回転方向と電子の反磁性ドリフト方向が逆になります。ここでは前者を正の方向と定義して話を進めます。

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ESPによる磁力線方向の伝播速度計測

柱状プラズマに励起される代表的な低周波揺動としてフルート揺動とドリフト波がありますが、前者は磁力線方向に一様な構造をもち、後者は磁力線方向に構造を持つ、つまり伝搬することが知られています。しかし、これまで高イオン温度磁気ミラープラズマ中に励起されるドリフト波の磁力線方向の伝播速度が計測されたことはありませんでした。ここでは、写真に示したように上記のプラズマリミターから約16cm離れた位置に磁力線に沿ってESPを設置することにより、ドリフト波の磁力線方向の伝播速度を計測できるようにしました。

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高イオン温度磁気ミラープラズマでの電子ドリフト波の分散関係

高イオン温度磁気ミラープラズマにおいては、供給水素ガス圧や印加するRFパワーを制御することにより、下図に示すようにわざとドリフト波を励起することが可能です。図(a) に示したのはドリフト波が強く励起されている時のプラズマの線密度(赤線)と反磁性量(青線)で、図(b)には、そのときのESP信号の FFT power spectrum の時間変化を示しています。図中明るいところの power が大きくなっています。さらに、方位角方向と磁力線方向のESP信号の位相差を波数に直して分散関係として図にしたのが(c),(d)で、それぞれの方向の位相速度がわかります。これから明らかなように、励起されたドリフト波は磁力線方向の位相速度が方位角方向の位相速度よりも十分大きいことが確認されました。

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参考文献
  • H.Higaki, et al., Rev. Sci. Instruments 75 (2004) 4085.
  • H.Higaki, et al., (2006)

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