1ps と 300ps のレーザーパルスによる SiO2 のエッチ率


1ps と 300ps のレーザーパルスによる SiO2 のエッチ率と反射されたレーザー光の波長のずれ

ここでは厚さ0.16mmのSiO2標的を真空中でs偏光したレーザーを用いて入射角15度で照射しました。レーザー光の fluence はレーザー増幅器の増幅度と集光面積を変えることにより約4桁のオーダーで変化させて測定をしました。プロファイラーを用いて測定したエッチ率を fluence の関数として図(a),(c)に示します。レーザーのパルス幅はそれぞれ(a)1ps,(c)300psです。また、図(b),(d)には同時に測定された、反射レーザー光の波長のずれを同じく fluence の関数として示します。レーザーのパルス幅はそれぞれ(b)1ps,(d)300psです。
1ps : 1ps パルスの場合、 fluence が F~1500 J/cm^2 以下ではエッチ率は通常の電子熱伝導によって支配されており、(F-2)^0.55 に比例しています。fluence がその閾値をこえるとエッチ率は急激に上昇します。この領域でのエッチ率は放射熱伝導によって説明することが可能で、fluence に対する依存性は (F-I_{th})^0.71 となっています。図(b)にあるように、反射されたレーザー光の波長のずれを同時に測定することにより、レーザーの電場による力(ポンデロモテイブ力)がエッチ率の急激な上昇に関係していることが示唆されます。レーザーの強度が 10^{15} W/cm^2 以下のときはプラズマの膨張圧力がポンデロモテイブ力を上回っているため、反射レーザー光の波長は短波長側にシフトしています。そのシフト量はレーザー強度が強くなる程大きくなります。これは臨界密度面が標的から入射側に向かって動いており、その速さはレーザー強度が大きくなるにつれ増加していることを意味しています。しかしながら、レーザー強度が 10^{15} W/cm^2 よりも大きくなると,ポンデロモテイブ力がプラズマの圧力に打ち勝つようになり、波長のシフト量はレーザー強度が強くなるほど小さくなります。つまり、ポンデロモテイブ力によって臨界密度面の動く速さが抑えられていることになります。同様な、エッチ率の急増は 3ps, 9ps, 30ps でも確認することができました。
300ps : 一方、300ps レーザーパルスの場合、図(c),(d) にあるように本質的に異なる結果が得られます。エッチ率はレーザー強度が 5 x 10^{13} W/cm^2 付近で反射レーザー光の赤方偏移とともに少し増加しますが、基本的にはすべての測定したレーザー強度の範囲内で電子熱伝導によって支配されていると考えられます。

FFT



参考文献
  • P.R.Herman, H.Higaki, E.Rouillon and R.S.Marjoribanks
    Technical Digest Summaries of papers presented at the Conference on Lasers and Electro-Optics Conference Edition
    1998 Technical Digest Series, Vol.6,(1998) 524
    San Francisco, CA, USA, 3-8 May 1998.

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