非中性電子プラズマ柱での非線形静電波振動
線形静電波に対する分散関係 (Trivelpiece-Gould mode)
円筒境界をもった非中性電子プラズマ柱の線形ラングミュア波の分散関係の測定結果が下図に示されています。ここでは全電子数 N ~ 4 x 10^8、軸上での電子プラズマ密度 ne~ 6.9 x 10^6 cm^{-3}、電子プラズマ温度 Te ~ 0.2 eV からデバイ長 ~ 0.13cm、電子プラズマ周波数 23.5MHzが基本的なプラズマパラメーターとなります。各測定点についている数字は軸方向のモード数を表していて、モード数の小さいところでは周波数と波数kがだいたい比例していることがわかります。このプラズマでは Trivelpiece-Gould の分散関係を使ってプラズマを評価することが可能であり、実効的なプラズマ密度 n_{eff} ~ 5.0 x 10^6 cm^{-3} を使って計算した結果が図中の実線で表されています。
減衰不安定性(decay instability)のFFTスペクトラム
プラズマ温度で決まるある閾値を超えた大振幅の静電波が励起された場合に電極E4で測定される静電波振動のFFTスペクトラムの典型的な例を下図に示します。ここではモード数iのラングミュア波をLiと表すことにします。この例(上述のプラズマパラメーターの場合)ではまず中心の電極(E7)に9.5MHzのRF振動を4マイクロ秒加えることにより大振幅のL4を選択的に励起します。L4が励起されてから75マイクロ秒後からL1,L3といったモードが励起され、逆にL4は減衰していくのがわかります。
励起された静電波のパワーの時間変化
下図に主要な3つのモード(L1,L3,L4)についてそのパワーを時間に対してプロットしています。70マイクロ秒までは励起されたL4だけが観測され、時間とともに減衰しているのがわかります。それから90マイクロ秒までの間にL1とL3がノイズレベル(< -50 dBm)から急激に成長してきます。一方、L4のパワーは90~100マイクロ秒のあいだに -30 dBm から -47 dBm に減少し、減衰率が急激に増加していることがわかります。結局、この過程でL4が減衰してL1とL3が励起されていることになり、これはラングミュア波の間での3波相互作用による減衰不安定性であると考えられます。すでに述べたように、この減衰過程には閾値が存在し、プラズマ温度が上がるにつれて閾値が低くなることも本実験で明らかになりました。
参考文献
Hiroyuki Higaki, Plasma Phys. Control. Fusion 39 (1997) 1793-1803
Back to the top