[平野敏彦HP:2003/09/26]
■法令用語の解説「準用」
法令文を読んでいると,「○○法第○条の規定は,×××について準用する。」(パターンは何種類かあります)という文言をよく目にします。
「準用」という法令用語は,ある事項に関する規定を,他の類似の事項について,必要な修正を加えてあてはめると法令作成技術で,これを利用することで条数が増えるのを防ぐことができます。
すなわち,「Aの場合には(法律要件),Bせよ(法律効果)」という条文を,A’の場合に準用すれば,「A’の場合には,Bせよ」という条文があるものと扱ってよいということになります。
商法,特に第2編会社の部分は,準用が多いことで有名です。
たとえば,株式会社の監査役に関する規定は,商法「第2編 会社 第4章 株式会社 第3節 会社の機関 第3款 監査役」(第273条−第280条)に規定されています。第3節第1款は「株主総会」(第230条ノ10−第253条),第2款は「取締役及取締役会」(第254条−第272条)です。
しかし,「第3款 監査役」の款には監査役の選任の規定はありません。監査役の選任の規定は,第280条第1項(第254条…ノ規定ハ監査役ニ之ヲ準用ス)で,取締役の規定を,監査役に準用するという手法がとられています。
そこで第254条を見ますと,第1項に「取締役ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任ス」とあります。ここの「取締役」を「監査役」に置き換えて,「監査役ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任ス」という条文があるものとするということになります。
会社の機関として,取締役と監査役は類似度が高いところがあり,たとえば選任規定などについては,準用というテクニックを使用することにより,ほぼ同じ文言の条文を作って法律全体の条数が増えてしまうことを,避けているのです。
だから,法律の全体像をつかむためには準用されている条文を併せて読まなければならず,法律に慣れていない人には評判の悪い法令作成技術です。置き換える語句がわかりにくい場合は,読替え規定(「規定中,「P」とあるのは「Q」と読み替えるものとする」と表現される。)が定められることもあります。
「国立大学法人法」(以下,「法人法」と略す。)と「独立行政法人通則法」(以下,通則法と略す。)は,「準用」の使われ方を見るのに最適の例です。法人法は,全体が41条から成る比較的小さな法律ですが,実際には,全部で40条にわたって,通則法を準用しています(第35条)。
準用条文の読み方として,国立大学法人法で独立行政法人通則法の「独立行政法人は,〜」という条文を準用した場合,「国立大学法人は,〜」という条文があることになり,「〜」の部分は共通になるので,両者の取り扱い方が同じになるという具合です。
私が『広大フォーラム』2003年10月号の「国立大学法人法の基礎知識」を執筆した際,,通則法の準用規定を法人法に組み込んだ条文表を手元資料として作成してみました。
準用の実例をじっくり味わって覧ください。
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*参考資料として,衆議院文部科学委員会と参議院文教科学委員会の附帯決議をあげています。