分子細胞情報学セミナー

◎平成25年6月3日(月) 17:00~18:00

 「オートファジーを標的とした難治疾患克服への戦略

  清水 重臣 先生   (東京医科歯科大学 難治疾患研究所 病態細胞生物学 教授)

【要旨】

オートファジーは、リソソームを利用し、自己構成成分を大規模に分解する細胞機能である。この細胞機能は新陳代謝、細胞のリモデリング、細胞浄化などに貢献しており、細胞の営みの基盤となっている。また、その破綻は神経変性疾患等の温床となることから、オートファジーは生理学的のみならず、病理学的にも重要な細胞機能である。哺乳類におけるオートファジーの実行機構は、酵母を用いた遺伝学を敷衍する形で進められ、これまでに30余のオートファジー関連遺伝子が同定されてきた。特に、Atg5,Atg7,LC3などの分子は、オートファジーの実行に決定的な役割を果たしていると考えられてきた。しかしながら、最近我々は、Atg5やAtg7に依存しない新たなオートファジー機構の存在を発見し(Nature 2009)、その生命における役割を明らかにしつつある。また、オートファジーは、これまで生存に寄与するのみと考えられてきたが、細胞死の誘導にも重要な役割を果たしている事を見出してきた(Nature Cell Biol. 2004)。本講演では、これらの新たなオートファジー研究の展開を概説するとともに、オートファジー細胞死を応用したがん治療法開発への取り組みを紹介したい。


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