分子細胞情報学セミナー
◎平成27年10月5日(月) 17:30~18:30 基礎・社会医学棟2F セミナー室2
「Wntシグナル研究;
“More Biochemistry”, ”More Biology”, “More Diseases”」
菊池 章 先生
(大阪大学大学院医学系研究科 分子病態生化学 教授)
【要旨】
ショウジョウバエの遺伝学に端を発したWnt(ウイント)の研究は、発生生物学や腫瘍医学的アプローチによっても解析が進み、多様な研究領域を包括してきた。Wntは分泌蛋白質で、線虫やショウジョウバエからヒトに至るまで生物種を越えて保存されており、動物の発生に必須である。また、Wntシグナルは幹細胞や組織特異的前駆細胞の維持や分化にも関与して、その異常は発癌や骨疾患と密接な関係にあり、創薬の標的にもなっている。私共は、Wntシグナルを生化学的視点で、生物学的な洞察をもって、病的側面からも理解を深めようとしている。本セミナーでは、Wntシグナルが他の液性因子と協調し巧妙に組織を構築する(Fine tuning)メカニズムを唾液腺をモデルとして示したい。また、Wnt関連因子の発癌への関与ならびに創薬標的の可能性についても最新のデータを紹介したい。